73:帰宅→喧嘩。
「あぁ。わしらは構わんよ」
「職人ばかりのところに職人がおってもなぁ。確かに他の種族との共存の方が、オレらとしても腕の振るいようがあるってもんだ」
「そう言ってもらえて助かったよ。じゃ、アリューケに戻って、獣人族にも協力を仰いできます」
獣人族の数はドワーフほどではない。土地神様のいる里から、こっちに移住してきてくれる人たちがいればいいのだけれど。
そういう点では、人間の里からでも……と思わなくもないが。
アソールの町を出発してアリューケへと向かう。
途中の魔導装置まで到着した時、移動の際ゆっくり休めるようにと小屋を増設。
「いっそここにも小さな町を作るのもいいかもな」
「そうね。五つの町の装置を起動すれば、浄化範囲も拡張されるっていうし。そうなれば他所から土地神様を招いて、町を作れると思うわ」
「だよね」
そのためにも人手が必要だ。
「レイア。人間の移住者を募るとして……獣人族やドワーフと、上手くやっていけると思うかい?」
「種族差別のことを気にしているんでしょ? たぶん大丈夫よ」
「ほんとに?」
「えぇ。どちらかというと、ゼザーレやシュットランといった、国で暮らす人たちが差別傾向にあるみたい。土地神様の恩恵で暮らす里の人たちは、たぶん種族の違いとか気にしてないともうわ。ううん、気にする余裕もないのよ」
そうレイアは話す。
お互い、土地神様の神力でなんとか生き永らえている立場だ。だから気持ちはよくわかるって。
異種族の里を襲っているのは、闇商人や盗賊どもばかり。
普通の人間たちがそんなことをしているという話は聞いたことがないと。
何にしても、獣人族に意見を聞いてからだな。
「全ての人間が悪いのではない。それは十分理解している」
「実際にね、うちの里では人間の里と、物々交換なんてやっていたんだよ」
「え、そうなんですか?」
アリューケの町を出発して一ヵ月半。予定よりだいぶ早く帰って来た。
が、実はこっちでも。
「それより、他の町にも土地神様に祈る者が必要なんだろう?」
「だから戻ってきたんだよね、志導兄ちゃんたち」
「そ、そうなんだ。え、どうしてわかったんだい?」
「みなさんが出発してから、ニーナ様やニルス様ともお話していたんです。土地神様が蘇ったとしても、人がいないと土地神様の力が回復しないと」
みんな考えることは同じだったわけだ。
そこで。
「アルトさんとバサラたちが、獣人族の里を探しに行きました。いやね、ニルス様は他の土地神様のいる場所がわかると仰って」
バサラたちの故郷を守っていたニルスは、その里から比較的近い位置にいた土地神様を二人ほど、その位置を感じ取っていたそうだ。
その里に行って、アリューケの町のことを話して移住の打診をするためにアルトたちが向かったらしい。
「そうだ、エリサはどこかな」
「おかえり、志導! エリサならガラスハウスだと思うよ。ドワーフのおじさんたちに棚を作ってもらって、薬草を栽培しているんだ」
「そっか。行ってみるよ。ありがとう、パティ」
「あたいも行く! んべぇー」
「ふにゃ!?」
何故かパティはレイアを毛嫌いしている気がする。レイアも気にしているようだし。
何かあったんだろうか。
俺の肩の上で縮こまったレイアを撫で、ガラスハウスのある畑の方へと向かう。
すると向こうから、アッパーおじ、さ、ん……ん?
「ど、どうしたんだアッパーおじさん!? そ、そんな、小さくなって」
「ぷぅー?」
「ぷ、ぷぅ? ど、どうしたんだよ!?」
「し、志導くん。落ち着いて。ぷふっ」
「ぷぃーっ」
お、おじさんが……おじさんが!?
「おぅ、志導。どうしたんでぃ、思ったより早かったじゃねえか」
「あぁ、それが……アッパーおじさんが二頭!?」
見慣れたアッパーおじさんと、体高がレイアよりも低いアッパーおじさんがいる!?
「志導くん、志導くん。その子、アッパーおじさんの子供よ」
「え、こど……ああぁぁ!?」
「んっぷぃーっ」
「おいおい。デケぇ声出すんじゃねえよ。娘がビックリするだろうが」
む、娘!?
女の子なのか。あぁ、生まれたんだな。
そういえば、どことなくおじさんより黒さが薄いような。
「あはは。おめでとう、おじさん。いつ生まれたんだよ」
「十日前だ。どうでぇい、かわいいだろう」
「あぁ、かわいいなぁ。やっぱり生まれて間もないと、人間の言葉は話せないんだな」
「まぁ教えなきゃ、喋れねえさ。その辺は追々だ、追々。どうせなら、ミッションやらせてくれよ。そうすりゃ、ユタ坊みてぇに早ぇだろうしさ」
「わかったよ。あ、エリサを探しに来たんだけど」
そう言うと、おじさんは「こっちだ」と言ってガラスハウスの方へと案内してくれた。
やっぱりここか。
「それで、いくつの町で土地神を蘇らせたんだ?」
「北東のアソールだけだよ」
「やっぱりか。祈る奴がいねえからだろ」
「まさにその通りで。でも北のアトランの魔導装置は修理して、起動させてきたよ」
「じゃ、あとは祈る連中か。おーい、エリサ。志導とレイアが戻って来たぜ」
おじさんが大きな声でそう言うと、畑の中にあるガラスハウスからエリサが出てきた。
一緒に、クリーム色のアルパディカと白いアルパディカ、白に黒のブチ模様のアルパディカ、そして茶色いアルパディカが出てきた。
もちろん、小さいアルパディカだ。
「エリサが山から、上手い草を見つけてきてくれてよぉ。ガキどもにそれを食わしてるもんだから、あいつらエリサに懐きやがってなぁ」
「おかえり~、二人ともぉ。えへへ、アルトが言った通りだったぁ。でもそうだよね。人がいないんじゃ、土地神様の力が弱ったまんまだもんね」
「はは、そうなんだよ。浄化のことばっかり考えてたからさ、すっかり神力のこと忘れててね」
土地神様の召喚に入る前に気付いてよかったよ。
「アルトくんたちがきっと人手を連れて帰って来てくれるだろうから、待ってればいいよぉ。疲れたでしょ? 暫くゆっくりしてるといいよぉ」
「あぁ。再出発はアルトたちが戻って来てから考えよう」
「そうね。あぁ、久々にお風呂入りたぁ~い」
「志導もお風呂入る!? ね、あたいが一緒に入ってあげようか?」
「な、何言ってるのよパティ!」
「べーだ」
俺を挟んで喧嘩するのは、止めていただけませんか?




