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第百五話 月下の人生(死活)三

 

 場所が変わり、月下は石壁の部屋の中で、手足を縛れ、拘束具に繋がれていた。

 こうするのは未だに正常ではないから。


 その目の前に信正、陰秀、そして一人の男性がいた。


「そのまま連れてきたのだな」

「少し特殊な様でして…」

「うん、聞こうか」


 陰秀はその男性に説明する。

 信正は陰秀の後に自分の意見を付け足して話した。


「つまり、意思の問題か」

「賊達の意思を媒介に『怨化』が発動している。さらに厄介なのは意思の集合体だけにその対象は人間全体」

「確かに厄介だな。元の意思を戻すことができればいいのだが…」


 できれば、『怨化』を消して、『呪化』に戻させたいが、今までの事例と異なるだけに難しい。


「一応、もう一つ提案があるが、聞くか?」

「何かあるのか?」

「こいつは『不死』を持っているからこそ、『怨化』を負担や崩壊が起きないってことだ。つまりは正常な状態に戻せばいいってことだろ」


 信正の案は良い案ではあったが、正常ではないからこそ『怨化』が発動する。

 だから、これは難しい案である。


「相変わらず突発的なこと。陰秀はどう考える?」


 男性は予想外な案を出す信正に呆れつつ、陰秀に意見を問う。


「事例に用いても意味がないのは分かっていますので私の憶測ですが、この子自身の意思を今の意思よりも表に出せないでしょうか?」

「どうなんだ?信正」

「可能性はある…が、多分、一時的なものでしかない。何故ならそれは意思の強さがものを言うからだ」

「そうか。つまり、意思が制御できればいいんじゃないか?」

「?」


 男性は二人の意見を聞き、そう応えた。


「変えろって言いたいのか?」

「そういうことだ」


 信正は何となく理解できている様だ。

 でも、陰秀は理解できてない様子。


「陰秀、『呪化』や『怨化』って言うのは感情の不安定も関係あるのか?」

「はい。主に精神力の低下により、暴走状態になります。その精神力には感情による点もございます」


 暴走状態というのは正確に言うと、『怨化』の発動とは少し違う。

 それは精神力の低下、主に感情の起伏が大きい。

 例えば突然のブチギレや泥酔などの普段行わない行動を起こしてしまう状態と似たようなもの。


 それが『呪化』や『怨化』では起きやすくなっている。


 逆に『呪化』や『怨化』の発動には憎みや怨みの大きさが関係し、暴走状態との因果関係はあっても、全く同じではない。


 また、『呪化』が『半呪化』になる過程で慣れがある。

 それは『呪化』を発動しながら精神力を上げて、慣れさせる。

 それにより、暴走状態になりにくくする。


 今まで『呪化』は『半呪化』にできても、『怨化』は『半怨化』にはならなかった。

 その理由はそれ以前に死んでしまうから。


 しかし、男の子は死ななかった。


 今までになかっただけに色々と抜けていた。


 男性は特に『呪化』や『怨化』に詳しい訳ではないのだが、ある程度の知識だけでそれを気づき、信正も言われて気づいた。


 陰秀は固定概念に囚われていたのだろう。


 そして、二人の気づいた男の子の厄介なところは…。


「多分、上手く機能していない」


 現在暴走状態である男の子は自身の意思(人格)よりも複数の意思に負けている。


 だが、その複数の意思は複数の意思によって行動が確立させる。


 しかし、今は上手く機能していない=感情の不安定となっている。

 それぞれの意思がそれぞれの行動をしようとしている結果だった。

 戦闘時は上手いこといっていただけで、単なる意思の集合体が一つの人格を作り出していただけのこと。


 そこで信正の言う「変えろ」というのはその意思の集合体を変えようとしていた。


「だから、完全に一つの人格として確立させればいいんだろ」

「そういうことだな」


 陰秀は少しずつ頭の中にメモ(記憶)する。


 信正は右腕を精神体にし、男の子の肉体を通り、精神体のさらにその中に入る。


 ーー信正視点ーーーー


「白い空間が広がっているな」


 信正は男の子の心の中に入った。


 そこには真っ白な空間が広がっていた。


「ただ、何が黒いものが飛んでいる」


 小さいが、所々に真っ黒いものが飛んでいた。


 信正はその真っ黒いものが飛んでくる方向に向かう。


「少し濃くなっている」


 周りは真っ白い空間なのに、目の前に少しずつ真っ黒いものが広がってくる。


「気味が悪いな。ここは」


 そしてその中心に人型の真っ黒いものがうじゃうじゃいて、怨を叫んでいる。


「よくこんなんで戦闘なんてできたな」


 戦闘ができたのは単なる偶然でしかない。

 しかし今は迷っている。

 次の行動を。


「ちっ、分かっていたが、怨みは変えられないか。性格と少し何か変えるか」


 このもの達の怨みの対象は人間。

 元々、それぞれが特定していた対象が自動的に人間を対象にしてしまっていた。


 仕方なく信正は性格と別に少し変えることにする。


 変える時、複数ある性格から組み変えたり、合わせたりして、一つにしていく。


「よし、これでいいだろう。うん?」


 信正が色々としている時に真っ黒いものの中から真っ白いものが一つだけあった。

 周りのものがそれを守る様にいたのだ。


「安心しろ。そいつに手を加えることはない。お前達がそいつを守りたいと言うのなら、守れる様に最適な状態にしてやる」


 そう言うと、真っ黒いもの達から少し落ち着きが見えた。



 そして、信正は完成させた。

 複数の意思から一つの人格を生み出した。


 その真っ黒い人格は真っ白いものを中に埋め込み、それが芯(心)の様で、最適に守れる状態になった。



 信正はその空間から消える。


 ーーーーーー


「終わったか?」

「あぁ、これで問題ないはずだ」


 男の子は目を閉じ、大人しくそこにいた。


 三人が見守る中、その子が目を開けた。


「あー、あー」


 声を出し、声を確認している様だ。


「問題なく声が出てる」

「調子はどうだ?」

「問題ない。落ち着いた」


 男性は拘束を外す。


「待て」

「どうした?」

「まだこれでも怨みはあるんだ。だから、何かしら約束事で縛って欲しい」


 これは自分への危機感。

 今は落ち着き、『怨化』も解除済みだといえ、怨みが消えた訳ではない。

 その証拠に青筋を浮かべている。


「確かに。被害を出さない様にするのも捕らえた理由だ。なら、誓約を交わそう。二人はもう帰っていい」

「分かった」

「分かりました」

「彼と接触する時、二人を呼ぶと思うから。その時はよろしくな」


 信正と陰秀はその場から去り、一人残った男性は人を呼ぶ。



 数分後、一人この部屋に来る。


「どうかした?」

「誓約をお願いする」

「いいよ」


 その者はフードを被って顔は見えないが、声的に女性の様だ。


「じゃあ、誓約内容を」

「分かった」


 男性は誓約をいくつか伝える。


 誓約

 1-限られた場所に住み、許可ない限りはそこから出てはいけない。

 2-積極的に人間を殺してはいけない。しかし、住んでいる領域に入った者にはそれに含まない。

 3-『解放者フリーダム』の任務への参加は控えて欲しいが、指定の場合は強制参加とする。


 1と2は私生活、3は『解放者フリーダム』の任務についてとなり、誓約には含まないが、私生活内のことは手を出さないや連絡には直接会わない様に人間以外がするなどがある。


 一応誓約としてはこの三つだけだ。


「こんな感じでいいか?」

「大丈夫だ」


 男性と男の子の間に誓約が結ばれた。


「感謝する」

「それじゃあ、何かあったら呼んで」

「注意しろよ」

「大丈夫。問題ないから」


 そう言い、女性はいなくなった。


「では、家ができるまで、ここにいてくれ。ある程度の生活が出来る様に後で渡す」


 元々、勧誘する目的だったとはいえ、その後どうするかは信正と陰秀の結果で変わるため、少しは準備はしていたが、本格的に行動をするのはこれから。


 それまではこの部屋でいて貰い、後で生活できる様に色々と持ってくる。


「了解だ。それで亡者達はどこにいる?」

「そちらは後で会わせる。アイツらも休憩が必要だからな」


 亡者達は今、別の部屋にて休んでいる。


 今、(亡者状態での)正常になったとはいえ、少し落ち着きが必要なためだ。


「それじゃあ、外すぞ」

「外すしたら、すぐに出てってくれ」

「分かっている」


 男性は男の子の拘束を解き、すぐに部屋を出る。


 これは再び暴走状態にさせないための保険。


 今なら大丈夫だと思うが、念のためというやつだ。




 そして、現在。

 男の子は唯一親との関係を示す名前…月下を名乗り、『解放者フリーダム』の一員となっている。


 その月下の下に一体の傀儡がやって来た。


「手紙か?」


 その傀儡から手紙を渡される。


「『今から伝えるのは指定任務。一週間後、その館に三人の子どもを送る。その者達に指導をお願いする』だと!ここに人間を送るってことは殺してもいいってことになるぞ」


 それは『解放者フリーダム』の指定任務だった。

 指定任務ということは月下に拒否権はない。


 しかし、ここに送るということは誓約に含まれない者のため、殺しても大丈夫ということになる。


 さらに今の月下は亡者で楽しもうとしている。

 人間を殺し、亡者にすれば、月下にとって得でしかない。


「あぁ!?『警告、この送った子ども達については誓約の対象内とする』。アホか。そんなこと言ったところで、誓約には含まないんだろうが!」


 幾ら警告したところでそれは無意味。

 効力がない。


「どちらにしても、受けるしかないんだろ」


 もし、月下に殺したくないという気持ちがあったとしても、誓約によって任務は受けるしかない。


「うん?これがその子ども達か」


 同封されていた手紙に三人の(紙の)データが載っていた。


「『再生』と『生命線確保』を持つ子どもか。面白いじゃねーか。待ってやるよ。楽しみしてるぜ」


 その中で、自分と似た性質を持つ子どもに目をつけた。


 どう見ても月下の持つ『不死』の方が上ではあるが、『再生』と『生命線確保』で似たことができる。


 そのため、殺せないんじゃないかと少し思うが、逆にどうやって殺そうかとも思っていた。


 しかし、『解放者フリーダム』もそう簡単に月下には殺させない。


 ちゃんと対策はある。




 それから一週間後、月下の目の前に三人の子どもがやって来た。

今回は名前ではなく、男の子や男性などで人を表していた回でした。

まぁ、男の子は月下だとして、男性と女性を誰にするかは大凡執筆中に決まりましたが、今回は出しません。


信正は今回本来の能力…パルアンゲヌスを使っています。

能力名は出しませんが、一応それだけを書いておきます。


誓約についてですが、ある程度という感じですかね。

抜け道がありますが、そうしないと月下が暴走状態になる可能性が上がるのではという懸念からのものです。

あと、許可がない限りとか指定任務とかは後に必要だったからというのが理由。

指定任務に限っては迅澄達の修行に必要でした。


次話は時代は戻って現在に。

修行二日目となる迅澄達。

月下によって修行内容が決められた。

そこには摩利と美結の前に亡者、迅澄の前には月下がいた。

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