第百四話 月下の人生(死活)その二
世界の裏側でしか知られていない『解放者』は能力者の関係のことで密かに行動する。
今回、死鬼に対して送られたのは比較的に新人であった織部信正と暗知陰秀である。
二人は少し遡れば、表舞台にて戦乱を戦ってきた。
後に信正は陰秀の裏切りの後、陰秀はその数日後に表舞台から消えている。
その二人が今では同じ作戦を行う仲間として月下のところに来ていた。
ーー信正・陰秀視点ーーーー
「あそこが亡者のいる街ですかね」
「そのようだな」
二人は小高い山の上で亡者が歩き回っている廃れた街を見ていた。
その亡者達は広く展開し歩き回ることなく、その街に居座っていた。
「情報では能力者は子どものようです」
「子どもかぁ。相当辛い思いをしたのだろう」
「出生や家族は知りませんが、奴隷として一時期傍系の貴族の下にいたと聞いています」
「貴族は権力を振るうからな。特に子孫が貴族のまま受け継げるのが難しい者ほどそれに縋る。その者自身が既に飾りでしかないのにな」
情報自体は聞いていた二人。
情報収集能力で高い『母の元に』と比べれば低いものの、誰にも気付かずに情報収集する能力は『解放者』の方が高い。
因みに信正は権力自体が好きなのだが、権力や地位に縋るだけの奴を気に入らない。
貴族においても、太政大臣や左右大臣、その他の役職でもそこに何かしら不正があるとしても役職自体の仕事をしていたら気に入らないということはない。
だけど、役職を持たない者やその役職に地位だけを表すだけのものを持つ者は気に入っていない。
それこそ、武将や大名は自分の実力だけで地位を獲得しているため、どちらというと気に入っている。
「それでだ。勧誘目的だったな」
「はい。今いる組織は救済するのが目的なようでして、少しは戦力上げも組み込まれると思われます」
今回ここに来たのは討伐ではなく、救済と勧誘。
二人のいる『解放者』は手助けをする組織。
能力者は表舞台にて目立ちやすく膨大な力を持つ。
でも、能力者が沢山いる裏側では一般人か足軽程度で、差が大きい。
討伐なんてできようと思えばできてしまう。
さらに『解放者』は敵である『母の元に』に渡したくないというのも一理ある。
「それでも苦労しないだろう」
「えぇ、相性は悪くないと思います」
今回二人が選ばれたのは新人だったからだけではない。
能力が有効であったこと、また陰秀は元『呪化』持ちで『半呪化』になった後、『呪化』と『怨化』の研究を行っていた。
それと元主従関係であったのもある。
「行くぞ」
「はい、お供いたします」
二人は山から降りる。
「間近で見ますと、数が多いですね」
「まずは周りから処理するぞ」
「了解致しました」
街に入り、山から見えなかったところもよく見える。
先に街を歩いている亡者から二人は手分けして倒していく。
「本当に厄介だなぁ」
信正は一応亡者について聞いていたが、実際に敵対すると厄介な相手だと思った。
一度刀を出して斬りつけようとしたが、バリアに当たったかのように亡者に当たることができなかった。
「つまり精神攻撃すればいいんだろ」
亡者は傷をつけられない、毒や麻痺などの状態異常が効かない、病気が効かないと肉体的ダメージが効かない。
だけど、亡者にしている月下が暴走状態になっているように精神がやられている。
なら、精神攻撃をすれば効くということになる。
信正の右腕から突然薄い信正の腕が出てきた。
これは信正の精神体。
右腕だけを精神体を出し、肉体の右腕がだらんとなる。
亡者達が襲ってくるのを精神体の右腕で胸を貫く。
先程の物理攻撃の時とは違い、亡者の体を取り抜け、亡者の中にあっただろう精神体を抜き取った。
攻撃は精神体が肉体に攻撃できず、逆も然り。
それを何人も何十人と行い、精神体にさせる。
片付けば、無害な亡者となる。
「こんなものだな」
信正は精神体を肉体に戻した。
場所が変わり、陰秀も退治ではなく、無害な状態にしようとしていた。
陰秀の能力『糸』と『半呪化』の『人形操者(マリオネット・コンダクター』を使っている。
まず先に目の前の数十人といる亡者と対等に戦うために『人形操者』で傀儡を生成し、その傀儡に糸を付け、さらに傀儡から糸を出す。
『縛糸』
糸を上手いこと使い、亡者達を飛ばして壁にぶつけ、そのまま糸で壁にくっ付けて固定…拘束する。
倒せない以上、動けないようにするしかない。
信正場合は例外ではあるが…。
二人はそれぞれで亡者達を対処し、一番ドス黒いところで合流する。
「ここのようですね」
「あぁ、そのようだな」
比較的に大きな建物へ入る。
中は畳の部屋がいくつかあるのようで、それなりの地位にあったの人の屋敷と思われる。
「部隊ごとに分かれているな」
「真剣に戦う暇はなさそうです」
「移動しないとはいえ、この任務自体も時間かかる訳にはいかない。急ぎで行くぞ」
「了解致しました」
各部屋ごとに五、六人の武士がいて、一部屋で戦っていようが、部屋は戦えるほどの広さはないようで、さらに別の部屋にいる部隊の攻撃がないとも限らない。
そこで二人は移動しながら、亡者達を足止めにする。
亡者達が元武士で不死を持っていようが、二人は能力者。
身体能力は格段に上。
俊敏性にしても亡者達に勝てる訳がない。
それでも、亡者達は自分から腕を引きちぎって投げたり、わざと体をバラバラにしてそれぞれで動いたりと厄介なことをしてくる。
「陰秀、全て集まろ」
「了解致しました」
『網糸』
陰秀は畳に手をつき、畳の上に糸で作った網で、地面に転がっている亡者達の体を捕まえる。
「念のためだ。これもしておく」
街にいた亡者達はほとんど農民や商人などの一般人。
多少、亡者になって体のリミッターが外れ、普段よりも強い力が出せるとしても、日々鍛えていた武士よりも弱い。
対して、武士の亡者達は日々鍛えていた身体能力と今は思考ができないとはいえ、学んできた武術は体に染みついている。
陰秀の『糸』を信正が信用していない訳じゃないけど、もし何かしらでその網から脱出されたら困るため、一度精神体になり、武士の亡者達を精神体にする。
それを繰り返し、一番奥の部屋に着く。
一番奥の部屋は先程の武士達とは少し違った鎧を着ている部隊とさらに奥に少し高い段の上段にいる男の子がいた。
「奥にいるのが目的の子か」
「そのようです」
奥にいる男の子が二人の目的である月下だ。
月下は『怨化』の暴走状態にいるのにも関わらず、そこに居座っていた。
「『怨化』については知らんから、陰秀に任せるぞ」
「任せて下さい」
「前にいる部隊は任せろ」
「了解致しました」
陰秀は目の前の部隊を信正に任せ、部隊を通り抜ける。
向かってきた陰秀に対し、部隊の武士達は応戦しようとするが…
「お前らの相手は我だ」
陰秀と部隊の間に信正が割り込む。
「だけど、時間はかけない」
信正は駆け出し、対処にかかる。
目的の男の子を陰秀に任せるとは言っても、何かあればサポートするつもりだ。
同じように精神体にして、武士達を精神体にしようとしたが、何かに阻まれる。
「こいつら、よく見てなかったが、着ているのは具足だぞ。それに何かが纏っている感じだ。あの子どもの能力がより濃く、この部隊に注がれている」
武士達はよく見ると、この屋敷にいた他の武士達と変わらない具足(鎧)を着ていた。
それにドス黒いモノが纏われている。
そのドス黒いモノが信正の精神体を阻んだようだ。
「舐められるのも困るなぁ。我は第六天魔王だぞ!」
『六魔天刀』
信正は畳に勢いよく手を突っ込むと、突然畳に亜空間ができ、そこに手を入れる。
何かを掴むと、それを引き抜く。
そこから亡者達と似たドス黒さのある刀が出てきた。
信正は刀を持ち、正眼の構えで武士達の方に駆け出す。
場所を変え、陰秀は男の子(月下)の前に行く。
そうすると、男の子は立ち上がり、大鎌を出した。
「くっ」
男の子が大鎌を振り、陰秀がその間合いよりも外にいたにも関わらず、大鎌の刃が伸びたので、陰秀は下がる。
「自由自在なんでしょうか?」
男の子はそこから一歩も動かず、陰秀が動き回る展開となってしまった。
『鋼糸』
陰秀は鋼の糸を出して壁に刺し、男の子の大鎌に引っかけ、奪い取ろうとする。
「うん?軽いのに奪い取れない?」
力の差は圧倒的に陰秀の方が上なのに、男の子から大鎌を奪い取ることができなかった。
「やはり、止めるのが先でしょうか」
『蜘蛛の巣』
陰秀だけでなく傀儡達も使い、陰秀と男の子のいる上段を糸で蜘蛛の巣のようにする。
しかも、糸は鋼で粘着性のある、蜘蛛の糸のようでありながらも強度のある糸が広がる。
(ちょっと待って下さい。何かおかしい気がします)
陰秀は男の子の行動に少し違和感を感じた。
陰秀と傀儡が『蜘蛛の巣』を張っている時、男の子は少しの行動で糸を躱していた。
勿論、『蜘蛛の巣』は男の子の周りに張る技だが、それでも男の子に当たるように張っているので、暴走状態であれば当たらないということはない。
(最初からおかしい点は幾つもありました。移動性がない、屋敷の中にいる武士達の連携、そこにいる武士達もより強化されている、そして自我のあるような行動をするこの子。もしかして…)
陰秀はある可能性を考えた。
それが暴走していないということ。
でも、それを否定する点もある。
発動している『怨化』の力が暴発していること。
男の子から発せられるドス黒いモノは街全体に広がり、街の外に漏れることもある。
それが不安定で、暴発していることになる。
陰秀自身が『呪化』で暴走状態になった時、意識はなく暴れ回った。
それでも、『怨化』にならず、元に戻れたのは『呪化』が浅かったのではと陰秀は思っている。
今、『半呪化』になったのも、『怨化』というのも研究しているのも、『解放者』で知ったからである。
事例自体は聞いたことはあるが、実際に目撃するのは今回が初めてだった。
体験する側としてはあっても、それを見る側になるのは初めてで、おかしな点があってもあり得るのではと思ってしまい、気にしなかった。
でも、流石に意思的な行動をしていれば、おかしいと結論できる。
何故なら『怨化』とは暴走すること。
そして、肉体が限界を超え、死亡する。
死亡しないことについては男の子が使っている能力で、死に関係する能力だと分かっているので、肉体に影響しない能力を持っていると陰秀は確信していた。
しかし、暴走というのは避けられない。
それは『怨化』と共に起こるからである。
それが起こらないのは異常事態となる。
それでも、陰秀が交渉しないのは相手が子どもだからである。
(あまり攻撃的ではない)
今も男の子は陰秀が張った『蜘蛛の巣』の中にいて、そこから出る様子がない。
「こっちは終わったんだが?」
「少し手間を取りましたね」
「あぁ、力を注がれていたらしいからな。まぁ、少しは悔やまれるがな」
そこに信正がやって来た。
その後ろには具足が斬られて倒れる武士達とその上にいるその武士達の精神体が浮いていた。
「それで現状はどうなっている?見たところ、上手くいっていないようだが?」
「そうですね。少し見てみたんですが…」
「ほぉ、それで何か分かったことがあったのか?」
「はい。一度『怨化』をあの子で確かめたところ…、おかしな点がありまして…」
「まぁ、大凡見当がつくが。結局、どうするんだ?」
信正は『怨化』のことを詳しくは知らないが、それでも陰秀が思っているおかしな点は幾つか想像できる。
その上、どうするべきかを聞いている。
「無理にでも連れて行くべきだと思います」
「そうか。じゃあ、捕まえるのを任せる。我は武装解除を行う」
「了解致しました」
陰秀の提案に信正は否定することなく、すぐに自分の担当を決め、行動に移す。
「我の剣とどっちが強いか試してやる」
信正は先程使った『六魔天刀』を持ち、男の子の方に向かう。
信正が陰秀の張った『蜘蛛の巣』を素通りし、男の子の目の前に現れると、男の子が一歩出る。
『死へと誘え』
それは賊のアジトに襲って来た武士部隊の隊長らしき者に使ったものだった。
その時は偶然にも当たらなかったが、今回は信正が真っ向から勝負してきているので、当たる。
「力勝負というところか」
男の子が大鎌を振るのと同時に信正も刀を振り、ぶつかる。
「弱い…だが、なんだろうかこの感じは」
男の子の力が弱いことはすぐに分かった。
だけど、押し出すことはできなかった。
「『死へと誘え』だったか。つまり、我から受けている力を死なせ、相対となっている。もし、我がこれを使っていなければ、我が死んでしまう可能性もあり得る。しかし、我の刀にはそんなもの効かない」
信正の持つ『六魔天刀』は男の子の持つ『死神(デスサイズ』と似た性質を持つ刀。
だけど、能力自体は別物。
似た性質で能力自体が上だから信正には効かなかった。
そして、大鎌を切断し、真っ二つにする。
「陰秀!」
「了解致しました。離れて下さい」
陰秀に言われた通り、信正はすぐに下がる。
『蜘蛛縛糸』
これは『蜘蛛の巣』を使った後にしか使えない応用技。
男の子の周りに張られた『蜘蛛の巣』は逃げ場をなくし、縛り上げる。
ミイラのようにされながらも暴れる様子のある男の子。
だけど、それから脱出することはできなかった。
「この後どうするかは戻ってからだ」
「はい」
信正が男の子を肩に抱え、振り向くと…。
「あのすみませんが、俺らも連れてってくれませんか?」
そこには先程信正にやられた精神体の武士達がいた。
「お前ら、自我があるのか?」
「多分、力をより多く与えられた結果だと思う」
その者達は男の子の『死霊術』を他の亡者よりもワンランク上の能力が使われていたということになる。
それが自我を生み出した…というより…。
「それも元々の自我を取り出しているということです」
一度亡者となり、自我を保つことができなかった武士達は男の子によりさらにパワーアップした状態で、自我を取り戻した。
「その割には恨みとかないのか?」
「ない…ということはない。しかし、その子に恨んでも意味はないからな」
「意味がないとはどういうことですか?」
「それは実際に行っているのはその子ではないから」
それを聞き、陰秀は分からなくなる。
「つまりは何かしらで違うと分かったのか?」
「そうです。亡者となり、さらに力を分け与えられた時、それと同時に記憶も流れてきました」
「記憶?」
「はい。その子に自身の意思はないに等しい」
「なら、何故『怨化』なんかになったですか?」
「それが何か知らないけど、多分周りの影響が大きい」
「周りの影響?」
そもそも能力者以外『怨化』を知らないのは理解できるが、それでも何となくどうしてそうなったのか、大体分かるらしい。
「その子は数年前まではある賊の下にいました。そこは元奴隷を保護し、自己思案させるための教育を行なっていた。しかし、それは逆に言えば洗脳行為ともなった」
「どのような教育を?」
「ただの語りかけ。その賊達がどのような思いでしたのか知らないが、その子は洗脳に近い状態となり、変えてしまった」
武士は一回間を置き。
「その状態になったことで例えるなら、非武装の銃身だけの銃がその子だとして、今回起きた能力が銃の弾、そしてそれを撃つための引き金を賊達の意思だと思う。元々非武装の銃身だけだったのが、今では完璧な武装化した銃となってしまった」
元々、男の子は『不死』という能力しかない。
それは攻撃力のない、どっちかというと防御型の能力。
武士がそれを銃身としたのはそのままの状態なら鈍器にはなるけど、銃としての役割は弾も引き金もなく、かろうじて敵の攻撃を受けることできるくらいだ。
そこに賊達の語りかけが弾を作り出し、あの日賊のアジトに武士部隊が来た日に賊達は殺された。
その賊達は恨み、怨みと念いを作り出して、男の子に引き金を与えた。
そして、引き金が引かれ、『怨化』の『死霊術』が発動した。
男の子は単なる器でしかない。
「そうですか。その話、後で聞いてもいいですか?」
「いいですよ」
陰秀は興味深く聞いていたが、あまり時間をかけられないと思い、後で聞くことにした。
「あんまり時間をかけられないぞ」
「そうですね。では、ついてきて下さい」
「待って下さい」
信正は男の子を担ぎながら外に出ようと、陰秀もそれについて行くようにしていたが、武士が止めた。
「何ですか?」
「実は俺達以外にも連れて行って欲しい人がいるんだが…」
「あんまり増えるのは困るが?」
「何人ですか?」
「五人です。その子の身の回りのことをしていた人達です」
男の子が『怨化』を持っていたとはいえ、人間であることは間違いないし、もし自我を持っていたのなら、どうしたらいいのか分からなくとも、本能的にどのようにしたら生活できるかは任せる方がいいと判断したのだろう。
まぁ、死ぬことはないんですが。
「確かに必要ではありますね」
「現状、こいつと接することができるのは亡者だけとは言えるな。なら、仕方ないだろう」
二人は許可を与え、寄り道をして五人を回収。
再び、外に向かう。
道中、精神体になっていた武士達を自我を持っている武士達は何も言わなかった。
むしろ、信正が殺してもいいかと聞くと、いいという始末。
その理由は連れて行けないからというのが真実。
できれば自我を戻させて、連れてってもいいが、男の子自身がどこまでそれができるか分からないし、やらない可能性もある。
どちらにしても、ほとんどの亡者は自我もなしに放浪されてしまう。
それにより、移動してしまったら被害が増える。
ならばと許可をした。
屋敷の中の武士達を信正が殺し、外に出ると。
「もう終わってしまいましたか」
そこに一人の男性がいた。
「趙政殿!?」
そこにいたのは深井趙政。
少し前に遡れば、信正の妹と政略結婚した男だ。
しかしその後、趙政の父親の盟友であった夜倉義形と信正が敵対し、趙政はどちらかに選ばなければならなくなり、最終的に夜倉側についたことで、信正への裏切り行為となって、信正が深井氏を滅ぼした。
趙政は信正と同様に表舞台では死ぬところを見られていない。
その結果として今ここにいる。
「うむ。義兄上と陰秀殿でしたか。しかし、二人がご一緒とは驚きました」
内容は違えど、陰秀と趙政は元信正の配下で裏切り者。
内容で言えば、陰秀は恨み、趙政は葛藤の上で仕方なくで違いはある。
どちらかというと、信正を嫌いに思っていなかった趙政の方が仲直りしやすい。
まぁ、信正が許さない可能性はあるけど。
「そういうお前は『母の元に』で来たんだろ?」
「え?どういうことなんですか?」
信正は趙政の今のいる場所は『母の元に』と言った。
それを聞き、陰秀は分からなかった。
陰秀は分析型というか、昔の事例を用いて政策や作戦を考える。
対して信正は直感型で、世間的によく分からない物でも使えるか使えないかを判断したり、人の行動からその先を判断することができる。
裏切りついては可能性として考えていたが、気にしなかった。
それは裏切った二人には知られていないこと。
「よく分かりましたね」
「大凡予想がつく。お前が我をどう思っているかは知らないが、流石にもう一緒にいたいとは思っていないんだろ?」
「そこまで!?やはり、義兄上は侮れない。私は義兄上を嫌いだと思わない。だけど、今までの繋がりも大事にしなければならないため、結果あのそうになってしまった」
趙政は別に信正を嫌っている訳ではない。
信正が深井氏と深いつながりのある夜倉氏に敵対したのが問題なだけだ。
そもそも、趙政は人のために行動する者で、信正は自分のために行動する者だから、正反対というのも理由の一つと言える。
「我は夜倉が邪魔だっただけだ。東からは武畑家や下杉家がいた。特に武畑氏は上洛を目指していた。その際に我らの領地から避けて、北から回り道をし、加賀国・越前国の大名を倒す可能性があった」
当時、戦国最強と言われたのは武畑氏の武畑山玄。
武畑氏は多くの騎馬隊を持ち、戦場を駆け巡る。
後に銃の登場により、騎馬よりも重要視される銃だが、外国からの購入、そして製造により日本の各国に流れる訳で、信正もその強力性はすぐに気づいていたけど、単体における運用は難しい。
そうすれば、我らの織部の領地と武畑の領地が広く接することになり、いざ戦いとなれば、相手は最強騎馬隊を持つ武畑氏、仮に火縄銃があったとしても、それだけ広ければ火縄銃の数が増える。しかし、外国から来る銃は少なく、こちらの製造も早くはない。
仮に同盟関係にあった徳山氏と協力すれば、勝てる可能性はなくはない。
その理由は戦場こそ伸びてしまうが、兵力で考えた場合、織部氏は畿内とその周辺を治めて、徳山氏は他の大名と比べれば若い大名ではあるものの、三河国・遠江国を信正と協力関係を築きながら、去川氏を倒して獲得。
全力を出せば勝てる可能性もある。
その数年後、三ヶ方原にて徳山氏は遠江国にて武畑氏は進攻され、対抗するために織部氏の方から援護が来たのだが、結果は惨敗。
この時は信正は東を徳山氏に任せ、中国地方や畿内の中にある敵対勢力と戦っていた。
時は戦国だ。
一つに集中することは難しい。
桶狭間の戦いとは違う。
あの時は通常通りの警備や美濃国・伊勢国の警戒も行いながらも、少ない兵力で全力を出すことができた。
しかし、この時は各地で戦っていた。
特に武畑氏は戦国最強騎馬隊を持つ大名だけに、警戒しても、戦うべき相手ではないと判断していたのだろう。
「そんなことを言われたとて、義兄上は私に辛い選択を与えた。そもそも私と義兄上は馬が合わなかった。それが義兄上と違う組織に入った理由です」
趙政は信正を嫌っている訳ではないが、辛い選択を与えられた時にそう感じてしまった。
「本当なら戦って奪うべきだが、二人と…いや、義兄上だけでも無理ですね。私は帰ります」
「ま…」
趙政がそこから去ろうとした時、陰秀は止めようとしたが、信正が手を陰秀の肩に乗せて止めた。
「何故ですか?」
「行っても無駄だ」
「確かに話を聞くとは思いませんが、しかし…」
「そういう問題ではない。こちらにいても意味は無い」
「意味がないとは?」
「そのうちに分かる。いつになるかは分からないが、この世の誰も知らない『母の元に』の影の正体がな」
「誰も知らない…」
「これは内密にしろ。『解放者』の者にもだ」
「何故ですか?」
「その方がいいからだ」
信正は意味深なことを言い、その場を移動した。
陰秀もついて行く。
予想以上に文字数が多くなったので、キリのいいここになりました。
本編中の最後の武士達、そして隊長は後の銀千となります。
戦国大名の家々についてはまぁ分かるかなぁと思って書きませんけど、大体は戦死とか病死だと思うので多分出てくることはない。
信正の能力はまだ隠します。
次話は月下の暴走の沈静化と『解放者』の所属決定。
男の子を回収した二人は『解放者』に戻り、ある部屋で拘束する。
一人の男性と相談の下、どう沈静化するかを考える。
そして、『解放者』に所属させる。




