第九十七話 太助と小雨の修行(一)
転移された太助と小雨は目の前にある武者屋敷を見る。
「この屋敷、大きいですね」
「明らかに住まいとして使っていそうですね」
そう感想する二人だが、先日の深具に対する怒りは迅澄よって少しは治まったものの、少し残っていた。
その理由は折角の仇を逃すことになったからである。
長年自分を磨いてきた二人は忘れてしまったが、元々の目的はそれだったためか、少し苛立ちを感じていた。
別に試練を受けることに異論ないのだが、早く仇を撃ちたいと思っていた。
そんな武者屋敷のあるここだが、山の上にあるようで、少し歩くと崖があるような場所だった。
「お待ちしておりましたよ。ようこそ、私の屋敷に」
その武者屋敷から一人の男性が現れる。
「貴方が僕達の試練をしてくれる人?」
「はい。私は暗知陰秀と言います。歴史上で織部信正殿に謀反を起こした者でございます」
その男性は織部信正に謀反を起こし、殺そうとした暗知陰秀だった。
「何故貴方が信正さんと?」
それに対して小雨は何故陰秀が信正と一緒に『解放者』にいるのか疑問に思った。
「そう思うのは必然でしょう。当時、私は信正殿から仕打ちを受けていました。それは恨むことが増えていきましたが、我慢して我慢して日々が過ぎ、私は暴走してしまった。そう、貴方方のように『呪化』を持つことになってしまったから」
「「!?」」
太助と小雨は陰秀が言った『呪化』に反応した。
それは自分達と同じだから。
「結果、私は謀反を起こし、信正殿を殺そうとした。あの時、信正殿を殺したと思い、少しずつ落ち着き始め、隠れながらも私は後に信正殿がどうして私に仕打ちをしていたか理解しました」
信正が陰秀に仕打ちをしていたのは気に入らないかったというのもあったらしいのだが、ほとんど陰秀を成長させるためだったと言う。
「信正殿は中国平定時くらいから私を秀義の家臣にしたかったようなんですが、流石の私も気に入らず暴走へと発展してしまったのです」
当時から信正は秀義(後の天下人である富臣秀義)を家臣に収まるような器ではないと見抜いていたが、何とか自分のとこに収めようとするために秀義を送ろうとした。
しかし、結果は秀義に謀反を起こさせてしまった。
「まぁ、そんなこんなで今では仲直りして貰いまして、『解放者』に所属することができました」
元々先に所属していた信正のところに仲直りとこれからは役に立とうと秀義は決意を決め、所属することにした。
「それで私が貴方方の担当になったのは先程言った通り、私が『呪化』を持っていたからでございます」
「持っていたとは?」
「別に『呪化』がなくなったわけではありません。その力を持ちながら別の能力になっただけなのです。それは『半呪化』。身体への負担がなくなることはありませんが、何かの能力を上げる代わりに何かが下がることがなくなる状態でございます」
身体に負担を与える『呪化』。
使うと強力な能力を使える代わりにリスクを負わなければならない。
能力が下がらない『半呪化』なら、身体への負担を耐えれば使えないこともないかもしれない。
身体に負担を与えることが残るのはやはり呪いだからだろうか。
「貴方方には二つのルートがございます。そのまま堕ちてさらに強力な能力を使える代わりにさらに大きなリスクを負う『邪化』か、先程の『半呪化』か。この『呪化』が消えることはありません」
身体に負担を与える呪い(呪の属性)があるから、それを消すことができない。
だから、堕ちるか少しでも上がるかどちらしかなかった。
堕ちれば呪の属性は邪の属性となり、さらなる苦しみとなるだろう。
「しかし、どちらになるかは貴方方次第でございます」
残念ながらこれは精神面での話。
治せる訳ではないため、本人次第である。
「そのために貴方方には厳しい試練を与えなればなりません。ということである方をお呼びしました」
そこに武者屋敷から二人?の者が出てきた。
「人形?」
その姿はどう見てもからくり人形のような姿をしていた。
「これは私が作った傀儡で、仲間の能力を使い、ある方をお呼びいたしました」
「お久しぶりです。太助さん」
「久しぶりだな。小雨」
「「!?」」
傀儡から声が聞こえる。
「忘れちゃったの。私、畑見恵菜」
「忘れたのか。お前の兄ちゃんである城月隆雪だよ」
その声の正体は深具に殺された幼なじみの女の子と同じく深具に殺された小雨の兄だった。
驚く二人に陰秀は言った。
「貴方方には大切な人と闘って貰います」
太助と小雨の相手は暗知陰秀(明智光秀)でした。
実際の歴史では謀反を起こした者と起こされた者。
絶対(と言えるか分かりませんが)に同じ組織にならないところをあえて一緒にしました。
それに富臣秀義(豊臣秀吉)が本編で出るか今のところ未定ですし、出るとしてもどちら側になるかも分かりません。
そして、最後に出てきた深具に殺された二人の大切な人。
今回の修行は精神面が主です。
そのため、単純にやっても意味がないと思いますので、このようにしました。
深具の姿をした敵とかでもいいと思いましたが、それでは『邪化』に加速しちゃうかなと思って却下しました。
それと傀儡ですが、これは陰秀の能力ですね。
恵美と隆雪がこれに入っているのは『解放者』の仲間の能力です。
この能力者はまた後に出る予定です。
次話は恵美と隆雪が応じた理由と決意、そして修行開始です。
二人の目の前に現れたのは殺されてしまった大切な人。
その大切な人がまさかの相手だった。
「何故」と言う太助と小雨。
その理由と決意を述べる恵美と隆雪。
そして始まる修行。




