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第九十六話 伸戯の修行(三)

 

 六日目。

 伸戯の剣速が上がってきたようだが、ロンスラットは少し納得いっていないようだ。


「どうもそれが限界のようですね」


 ロンスラットは分かっていた。

 これは能力による上昇ではなく、単純な身体能力だと。


(能力の発現は難しいということでしょうか。ただ、剣の方は変化し始めていますからそちらを優先しますか)


 元々一番できやすいと思って剣速の能力を発現することを優先してきたが、剣の方が先にできそうだと思い、優先順位を変える。


 剣が変化し始めていることをどのように理解しているのかは分からない。

 見た目だけじゃ分からないし、何か理解できる方法があるのだろう。


 どちらにしても聖剣になるには伸戯の中にある聖が剣に流れ、馴染むまで打ち合うしかないだろう。



 その数時間後、それは起きた。


 いつものようにロンスラットが伸戯の剣(右手の剣)を防ごうとしたら


「なっ!」


 伸戯の剣がロンスラットの剣をすり抜けた。


 呆気にとられているうちに集中していた伸戯がその場で回転し、片方の剣で斬りつけようとした。


「ふんっ!」


 すぐに対処しようとしたロンスラットだったが、またもすり抜け、さらに回転し、攻撃しようとした。


 回転時に能力を使っているようで、足運びが速くなり、攻撃速度が上がる。


 剣を防いだところで意味がないと思い、ロンスラットは伸戯の体を蹴る。


「はっ!」


 蹴られて尻餅をした伸戯は集中状態から戻る。


「よくやった」

「え?」

「見てみろ。それが貴方の聖剣だ」


 伸戯は剣を見る。

 そこには太助が生成したような剣に似ているが、剣全体から光が照らされていた。

 そして剣どちらとも聖剣になったようだ。


「それに割と強力な能力のようだ」

「どんな能力なんですか?」

「分からないのですか。能力は『残像』な気がします」


 ロンスラットの見立てでは伸戯の聖剣は『残像』。

 その理由は伸戯が剣を振る剣筋が残っていたから。


「剣筋が残っていましたが、すり抜けるのは能力の一つですかね」


 予想ではあるが、ロンスラットは伸戯に能力を教えて、すぐに修行を再開した。


 この時、聖剣から伸戯に力が逆流していた。



 翌日、最終日となる七日目。


 伸戯は聖剣の『残像』を使い、剣速こそ変わっていないが、攻撃速度が上がり、少しずつ善戦するようになってきた。


 でも、ロンスラットもそれに応じて力を増していた。


(何かおかしい。口調が変わってきている)


 ロンスラットが伸戯と打ち合っている時、伸戯の口調が変わりつつあった。


「どうしました?ロンスラット様?」

「だ、大丈夫なのか?」

「何がでしょう?」


 聖職者がしそうな口調をしており、ロンスラットは少し困っていた。


「感謝致します。私のような者に修行をつけてくださって」

「い、いや、私がしたいからそうしただけで…」

「それでもいいのです。だから、その成長をお見せします」

「何を?」


 その時の伸戯の目は黄色く光っていた。


 伸戯は一旦下り、距離をとる。

 そして、走り出しジャンプした。


『光速斬』


 二本の剣を振り上げ、地面に叩きつけた。


 そこから光が放たれ、一直線にロンスラットに向かう。


 ロンスラットは持っていた剣を捨て、腰にあった聖剣アロンダイトを抜く。

 その聖剣アロンダイトに左手を翳す。


『加重付与』


 ロンスラットは自分の能力である『加重』を聖剣アロンダイトに付与する。


「はぁぁぁぁ」


 力を入れた一振りをする。


 それが伸戯の『光速斬』に当たり、重しが乗ったように地面に潰れ、かき消える。


「クソガァァァァ」

「今度はどうした?」


 伸戯は『光速斬』がかき消され、突然叫び出す。


「目と剣の色が変わった」


 伸戯の目が赤くなり、剣の模様の筋も赤くなる。


『光速斬−残像飛ばし(トワイス)


 伸戯は同じ行動するが、剣から放たれた光は弱い代わりにいくつもの光が放たれていた。


「いや、これは威力が上がっている」


 地面が削れているのを見て、ロンスラットは威力が上がったことに気づく。


「もっと必要だろうな」


 ロンスラットはジャンプし、聖剣アロンダイトを叩きつける。


加重波インパクト


 衝撃が発生し、先程よりも強い重しが『光速斬』にかかり、同じようにかき消される。


「舐めていると倒すぞ!」

「速くなった?」


 すぐにロンスラットの背後に回った伸戯。


 ロンスラットもすぐに対応する。


「力も増した?」


 何もかもが先程よりも上がっていた。


「申し訳ありません。まだ制御できないようでして」

「制御?まさか、口調が変わっているのは何か理由があるのか」


 またも口調が変わる伸戯。

 そこからロンスラットは予想をつける。


(これがもし固有能力なら、状態によって変わるということでしょう。先程を見るに優しい口調の時は聖が強く、怒っているような口調の時はステータスが上がっている)


 もしこれがロンスラットが思うように固有能力なら、今までなっていた憤怒モードが能力として使っている可能性があった。


 ロンスラットは伸戯が固有能力を発現したと思い、とりあえず落ち着かせるため、二本の聖剣を吹き飛ばした。


「こんなものでしょう。剣速の能力が発現しなかったが、それを補うための能力は発現しましたので、合格しましょう」


 試練の一つ、剣速を上げるような能力は発現しなかったが、聖剣の能力でそれを補うような攻撃速度を上げ、さらには固有能力を発現させた。


 それを讃え、ロンスラットは伸戯を合格とした。


 その後、伸戯の聖剣は聖双剣スペクトルと名付けられ、固有能力を『モード化』とし、聖を上げる『聖人モード』とステータスを上げる『憤怒モード』と名付けた。


伸戯の修行が終わりました。

今回は伸戯の聖剣と固有能力の発現、そしてロンスラットの能力『加重』を見せました。

聖双剣スペクトルの名はラテン語の残像からとりました。能力については残像から選択し、実体に変えることで時間差攻撃をしたり、本編のように全て残像することも可能とします。

固有能力『モード化』は元々あった憤怒モードの能力化と聖剣からの逆流により発現した『聖人モード』の二つあり、能力ついては本編と同じで、モードが増えるかは分かりません。


ロンスラットの『加重』は名前の通り重力を加える能力。

重力を加えることで、伸戯の能力『神速』を鈍られていました。

聖剣アロンダイトは後日になるかな。


次話は太助と小雨の修行。

先日自分の仇と会った二人。

何とか迅澄によって落ち着かせたが、その二人には『呪化』が残っており、体内には呪の属性の卵があった。

二人の修行は己との修行となるだろう。

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