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第九十四話 伸戯の修行(一)

 

 湖の真ん中にある島に転移した伸戯。


「なんで私だけが一人なんだ?」


 他の人達が二人一組の中、唯一一人だけで転移することになった伸戯。


「それは私が説明しましょう」


 元々そこにいただろう男性が話しかけてきた。

 その男性は銀色の鎧を纏っていた。


「ロンスラットさん?」

「お久しぶりですね」


 男性はロンスラット・ベックだった。


「なんで貴方が?」

「態々頼みましたから」

「私のためにですか?」

「えぇ」


 普通なら日本だから日本の方が来ると思っていた伸戯。

 実際に伸戯以外は日本の方が行っている。


「王に仕返ししたいと思いませんか?」

「仕返しですか……」


 伸戯は普段のあまり話さない状態で、憤怒モードだったらこれを簡単に応じていただろう。


「まぁ…できればですが……」

「あぁ、できますよ。だから、私が来たんですから」

「どうして、そう思うんですか?」


 できると言われても、伸戯は能力のことをよく知っている。


 あの時は悔しくて憤怒モードも早く発動してしまったが、勝てないことくらい始めから分かっていた。


「君は私達と似ている気配を感じましたね」

「気配?」

「えぇ、能力者の中には特殊な武器を持つ者もいます。例えば私はこれ」


 ロンスラットは後ろの腰辺りに刺していた剣を触る。


「名を聖剣アロンダイト。このような武器は普通の武器に自分の潜在能力が干渉し、聖・邪・魔と何かの属性を持つ武器へと進化する。君はそのタイプという訳さ」

「つまりは能力を持つ武器ということですか?」

「そうだね。まぁ、私を含めた円卓の騎士達はみんな聖剣を持っていたんだけど、私の裏切りによって変わった人もいるんだよね。王も邪剣になってしまいましたし」

「武器が自分の潜在能力と干渉するから、その時の状態によって変わる」

「ご明察」


 これは武器の能力化。

 その時の状態によって、体内にある潜在能力の属性が武器に能力と属性を与える。

 属性は大きく分けて三つ。


 聖:聖なる力を持つ

 邪:邪悪な力を持つ

 魔:魔力の力を持つ


 その他にも属性は存在するが、主にこの三つ。


「この属性はみな持っている訳はなく、能力者の中でも一割いるかいないか」


 属性はまず能力者ではなければ、その資格すらない。

 その中から限られた人にしか持つこともできない。


「それでも邪の属性はなりやすい。その理由は能力者には『呪化』という状態がある」


 ロンスラットは伸戯に『呪化』の説明する。


「その状態になると邪の下位互換である呪の属性を持つことになる」


 呪の属性は何かを失う代わりに何かを得る。

 これは『呪化』と一緒で、それが武器に宿る。


「しかし、だからと言って呪の武器になるとは限らない。それは他の属性でもあり得ること。その証拠に君は聖の属性を持っているが、聖剣を生み出していない」


 元々属性を持っていても、後に持つことになっても、自分自身の力量がなければ生み出すことはできない。


 ただ伸戯が気になるのは


「何故、私が聖だと……?」


 そもそもどうやって伸戯に属性を持っていて、さらには聖だと気づいたのか。


「君はあの時作り物であろうと聖を持つ剣を操っていた。属性を持たない者は能力の持つ武器を使えないし、別の属性を持つ者は自分の属性以外は使えない。だから、私はそう判断した」


 あの時の聖を持つ者とは太助が『武器生成』により生成された名剣エクスカリブスのことだ。

 これには少し聖の力を持っていた。


 それは断じて聖の属性ではないのだが、聖という力である限りはその力を持つ者しか使えないからだろう。


「ではそれを試練に?」

「いや、少し違う」

「違うとは?」

「君の能力のことだ。君の能力『神速』はあまりにも能力戦では不利になるだろう。まぁ、有効な能力が現れる可能性はあるかもしれないが」

「それはあの時に分かりました」


 伸戯の能力である『神速』の弱点はただ速くなるだけの能力だからだ。

 能力の違いは細かく見れば変わらないが、結局はそれである。


 速くなるだけなら、熟練度の壁や相手の単純な速さで簡単に負ける可能性は大いにある。


 伸戯はアーサー王と戦った時に理解していた。


「だから、君には固有能力も持って貰いたい」

「固有能力?」


 ロンスラットは固有能力について説明する。


 現時点で伸戯がアーサー王やそれ以外の上位者に対して対抗する可能性があるのは聖剣と固有能力。


 どちらかを持つだけでも飛躍的に上がるだろうが、ロンスラットは二つとも持つことを目標としていた。


「君には出来る限りの能力を持って欲しい」

「何故…そこまで……?」


 こんなにも伸戯に能力を持たせようとしているか、伸戯は理解できない。


「簡単に言えば、私では王に勝てないからですよ」

「何故…勝てないと?」

「彼は特殊なんですよ。彼の剣、邪剣エクスカリバーもとい、聖剣エクスカリバーというのは彼の潜在能力とその元々の剣自体があった場所である湖の力の二つの含まれた特殊な剣となってしまった剣なのです」

「そんな剣が…あるんですか?」

「普通はないだろう」


 実際にアーサー王が聖剣エクスカリバーの所有権になる前、その剣は力が満ちた湖にあった剣。

 その剣には湖の力が備わっていた。


 その効果とは他の属性を持っていながら、聖の属性も持つことができる。


「だから、君には同じことをして貰う」

「同じこと…ですか?」

「えぇ、ここはその湖、アヴァロン。君にはここで特殊な聖剣と固有能力を生み出して貰う」


 アーサー王が聖剣エクスカリバーを抜いた場所とされる湖、アヴァロンにて伸戯の修行が始まる。


一人で修行されることになった伸戯ですが、完全なロンスラットによる要望によってこのようになりました。

本編中の武器の能力化は後日命名されるかは現時点では分かりました。

でも、大体は神話とか伝説に出てくる武器だと思えばいいと思います。


そして修行場所であるアヴァロン。

アヴァロン自体はよく知らないのですが、アーサー王が眠っている場所らしいですね。

なんか島だったり、精霊の国だったりよく分かんないところがあるので、今回は聖剣エクスカリバーがあった場所ということにしました(この物語は忠実にやっておりませんのでご注意を)。


次話は伸戯の修行開始。

突然不思議な場所アヴァロンに転移された伸戯。

伸戯は自分のレベルアップのためにロンスラットの試練に挑む。

その目標は武器の能力化と固有能力。

そして伸戯が行き着く先とは。

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