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第九十三話−その二 夕実と李音の修行(二)

前話と合わせる予定。

最終日となる七日目。


李音は心が折れ、返事が少なくなっていた。


「今日が最終日です。今日成長を見せなかったら戦いには連れて行きません。なので頑張って下さい」

「はい」


(あとは死を見せれば成長するはず)


政親は李音を見て、土台は完成したと思った。

最終段階へと移行する。


「さぁ、来るがいい」

「行きます」


李音は目の前から消える。


(とりあえず、気配まで消せるようになりましたが、必要なのはこの次)


李音は自然な動きで存在を消すことができていた。

しかしそれは熟練度の壁により気配の段階までしかいっていなく、まだその先にはいってなかった。


対して政親は一昨日からただ叩くだけでなく、剣術も使うようになっていた。


政親に尽くナイフを木刀で吹き飛ばされる李音。


「逃げるだけではダメです。能力も使わないと」


恐怖からか、政親の攻撃を無意識に逃げるようになってしまった李音。

その自然な動きもバランスを簡単に崩され、『無音』を上手く使えないでいた。


「あ……」


逃げていた李音は木に当たり、それ以上下がることができなくなる。


「覚悟して下さい」


政親は霞の構えに入る。


青竜ブルドラ−《鉤爪スライシング》』


政親は右足を前に出しながら木刀を高く上げ、右足を強く踏み、本気のつもりで袈裟斬りをした。


相手から見ると、青い竜が自分の鉤爪で引っ掻いてきたように見えるだろう。


「!?」


攻撃をした瞬間、政親の『第三の目(サテライトアイ)』で見えていた李音が消えた。


政親自身もこんなことになるとは思っていなかったのか、一端下がって基本の構えである正眼をする。


政親の『第三の目(サテライトアイ)』から消えたということはそこにいないということになる。


ただ李音は同じ場所で現れた。


「ゲホッ」


しかし李音は吐血し、前に倒れようとするところを政親は抱えた。


(この能力、何か違う。もしかして固有能力?)


政親は李音が見せた能力が『無音』とは違うものだと思った。

それは『第三の目(サテライトアイ)』が効かなかったから。


そもそも『第三の目(サテライトアイ)』はそこにいる限り見ることができる能力。


政親からすれば見えないことがおかしい。


では李音はなにを使ったのか。

それは『消去』という固有能力だ。


この『消去』で自分を一時的に消去することで、そこにいないことした。


しかしこれは逆に自分にダメージを与える能力でもある。

李音が消えている間、何が起きているかは今の段階では本人でも分からない。


ただ一つ入れることは……


「おめでとう。貴女は合格した」


それでも固有能力を手に入れたことは大きく、政親は李音に合格を与えた。



そして夕実。

昨日から大型動物達が単純な攻撃ではなく、人間のような攻撃を受け、殺し合いをしていないから刃のない武器を使っていないとはいえ、結構なダメージを受けていた。


一昨日までは逃げていた夕実であったが、昨日は逃げた場所に別の大型動物が立ち塞がるため、逃げるという行動ができなくなり、強制的に向き合わないといけない事態となっていた。


そんな夕実は何もしていない訳ではなかった。

それは昨日よりも以前から攻撃をしようと考えていた。

さらにその方法もあった。


ーーーーーー


夕実の実家は武闘家の家系。

だけど能力フェアベルゲン者になるものは少なく、夕実は特別だった。


現在の朝霞家当主は夕実の祖父。

夕実自身は門下生や家族とは稽古をつけて貰ったことはあったけど、祖父とは一度しかなかった。


「夕実よ。お前さんはうちの家系では珍しいタイプじゃ。ワシから教えることも少ない。だから、一つだけ言っておくのじゃ」


それはモイヒェルメルダー学園初等部に入学前のこと。

朝霞家は短い期間にできる限りの武術を夕実に叩き込んだ。


当主である祖父も含め、朝霞家は納得していなかったが、祖父はたった一つだけ大切なことを伝えようとしていた。


「なに?おじいさま」

「その前に先に言っておく。厳しく当たって済まなかったな」


夕実は首を振る。


「いやなときもあったけど、いまはなんとなくわかるよ」

「ありがとう」


夕実は駄々を捏ねたり、嫌になって逃げたことも何回もあった。

それを乗り越えて今は理解していた。

これも愛情なんだと。


「それじゃあ、最後になるかもしれないが、稽古を始める」


そこで最初で最後になるかもしれない祖父との稽古をした。

それは武術の達人だからできる武術だった。


ーーーーーー


(祖父の教えは今でも憶えている。何故なら当主からの稽古であり、それが一度しかやって貰えなかったから)


あれから夕実はそれを習得しようとしてきた。

でもできなかった。

それもそのはず、それは武術の達人だからできる武術だから。


それを夕実は自分のフェアベルゲンである『認識』で補おうとしていた。


そして今、『瞬間認識』で習得し、近づこうとしていた。


しかし、夕実は反応速度が遅く、それができなかった。


それを補おうとしているのは処理能力。

処理能力は五感の能力を上げること。


夕実が『瞬間認識』を発動することで、自動的に処理能力を上げてくれる。

今はまだ上限値に達していないようで、現在も上昇中。


処理能力を上げることは見る世界が遅くなり、反応するまでの時間が伸びることができる。


敵からは反応速度が速くなったように見えるが、実際は通常時と変わらない速度となっている。


夕実は処理能力が上昇を待ちながらも、幾度もなく祖父からの教えを試していた。



そして、大型動物の攻撃を認識し、夕実は大型動物よりも速く行動しようとした。


ーーーーーー


「夕実よ。相手の攻撃を止めれば、その隙にカウンターを狙えばいいのじゃ」


ーーーーーー


それが祖父からの教え。


夕実は大型動物の攻撃が終わる前に武器を持っている手を叩き、寄れたところを渾身の拳で殴り飛ばした。


それは簡単に言えばカウンター。


しかし、ただ相手の攻撃よりも先に攻撃したところで反撃される可能性がある。


でも、祖父の教えは相手の攻撃を止めて、態勢が崩れた状態ならば反撃も難しいだろうという判断だ。


それから夕実は時間を掛けながら、全ての大型動物を倒した。


それと共に『瞬間認識』を解除すると、処理能力の負担が一気に疲労として夕実に襲った。


(能力者に対しては難しいだろうが、カウンターという武器を身につけたのはいいことだ。という訳で夕実さん、合格です)


これで夕実と李音は政親から合格を得た。


前回書けなかった分を投稿しました。

夕実は『瞬間認識』と祖父からの教えを習得。

李音は固有能力『消去』を習得。

比べると李音の方が大きいものを習得しているように思えるが、『消去』は発展途上でリスクの高い能力となります。

詳しいことは後の話にしますが、普通に考えて「相手を消す」なんてことができたら強すぎる。

だから、あまり使えない能力となるんじゃないかと思います。


それと『瞬間認識』は能力者戦になると、複数認識してしまうので、少し苦労するんじゃないかと思います。


朝霞家の話は(多分ですが)もうないと思います。


本編中の『青龍−鉤爪』は能力とか技とかではなく、単なる剣術です。

相手があのように見えるのは修行の賜物ということですかね。


次話は伸戯の修行になります。

何故か一人だけで転移することになった伸戯。

転移したところは綺麗な湖と真ん中にある島。

そしてその島に立っている一人の男性。

その男性はいるはずもないあの人だった。

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