第九十話 タイナとバロンの修行(一)
戦闘はしません。
一戸建ての日本家屋がある場所。
周りは畑や田んぼがあり、田舎のようだ。
そこにタイナとバロンが転移で着いた。
「僕達が来ることは知らないのに修行しているとは思いませんでした」
普通なら二人はアメリカでいるはず。
それを二人の要望で迅澄達について来た。
それにもかかわらず、『解放者』は修行に付き合ってくれるらしい。
「まぁ、気にしなくていいじゃん。受けてくれるならやって貰った方がいいと思うんだよね」
対してタイナはお気楽のようであまり気にしていない。
むしろ修行の方が楽しみのようだ。
「もう来ていたか」
「あれ?昨日の人だ」
現れたのは昨日話をしていた織部信正だった。
「早速始めるぞ」
信正はすぐに開始しようとするが、バロンは何か気になったらしい。
「ん?貴方が来るんですか?」
「あぁ?」
「いえ、貴方は組織の中で上の方だと思ったので」
「はぁ、まぁ言っておくか」
信正は頭をかきながら、話し始めた。
「そもそもお前達の情報はない」
「情報?」
「修行する上で必要だろう?だけどお前達は急遽来た訳だから収集する時間がねぇだよ。あるのは先日のことだけだ」
彼らからしたら二人を含めたモイヒェルメルダー学園の人達は初対面で何も知らない。
その状態で教えることはできない。
だから彼らは事前に調べている。
だが、二人はその情報収集は時間的にできなかった。
できたのが先日の『母の元に』が襲ってきた時だけなのだろう。
「情報というと身体能力とか能力とかの戦闘能力のことですか?」
「いや、それだけじゃなく、学力からその人物の過去とか素性に至るまでだ」
「それってプライバシーがないのでは…」
「今よりもプライバシーが無い時代の奴がいる組織に言っても意味がないだろ」
「ははは…そうですね」
(それでもダメだと思うが…)
情報というのはその人物の(調べられる限りの)全てらしい。
修行のためとはいえ、調べ過ぎな気がする。
「そんな訳で教えるための情報が少ない。だから、お前達には固有能力を使えるようにして貰う」
「固有能力?」
「お前の眼のことだ」
「え?」
信正はバロンの右眼を指して言った。
「そんな能力は『爪』には存在しない」
そもそも『爪』は武器系。
一応、人間の爪を含むとはいえ、目まで影響することはない。
だから信正はバロンの『分析眼』が固有能力だと言った。
「固有能力とは自分の能力とは違うものの、合わせることで強力な能力となる能力のことだ。単なる能力が能力を分析することができると思ったか」
「確かに…」
固有能力は固有能力での発動は可能だが、基本的に合わせることを目的とする能力。
バロンの場合は能力を分析し、構築を変更する。
前者は『分析眼』としての能力で、後者は『爪』との併用での能力。
前者だけでも戦闘は可能とするが、後者も合わせればより強力となるのが固有能力。
「でもなんで分けれるんですか?」
「そうだな〜。普通は自分の能力と違うと考えるのだが、真似するタイプの能力を使う場合は固有能力を真似することはできない」
「どういうことですか?」
「それは存在しないからだ」
「存在しない?」
「この世には能力者はそれなりにいる。その中でも武器系の能力者は同じ能力だったりする。でも、固有能力はその人しか使えない。つまり、同じ能力者が使えない能力は真似することができない」
他に存在するから真似できる。
だけど固有能力は他に存在しないから真似できない。
それだけ固有能力は強力ということになる。
「てか、早く始めない?」
一人退屈していたタイナが口を挟む。
「いいだろう。詳しい話が修行中に教えてやる」
信正もすぐに始めるつもりだったので、早速始めそうとする。
「分かりました」
「よし、やるぞぉ」
バロンも納得し、タイナはやる気に満ちていた。
そして二人の修行が始まった。
タイナとバロンの修行相手は先日『解放者』の日本支部代表として出てきた織部信正でした。
今回は固有能力ということで、元々あったアイデアではありませんが、二人に修行の目的が欲しいなぁと思ったところ、「バロンの『分析眼』って『爪』にないよな」と思いまして、まぁ出た当初から違うとは思っていましたが、「違う能力だけど併用すると強力な能力にもなるその人物しか使えない能力」という固有能力としました。
因みに今のところ固有能力を出した人はいません。
それと今まで出した能力が他の人も使うというのは容易にあります。
その中でも武器系は多いかもしれない。
次話はタイナとバロンの戦闘。
すぐに開始された修行。
元々固有能力があったバロンとまだないタイナ。
どんな能力を持つか分からない織部信正。
二人は信正に合格されるのだろうか。
そしてタイナは固有能力を使えるようになるのだろうか。




