17.親友との出会い
並木愛合と近田和子の出会いは高校1年のとき、同じクラスになったからだ。間もなく、和子は姉の知美に似ていると、愛合は思った。真面目で成績も良くてしっかり者。天才肌というのではなく、努力家って感じ。
面倒見のいい委員長の和子は、すぐにクラスの人気者になった。やはり人気者だった隣のクラスの知美と比較されるほどだ。だから最初の頃、愛合は和子があまり好きではなかった。
(だって、トモちゃんとライバルみたいなものでしょ。)
2人ともそんなこと全然気にしてなかったが、愛合には大事なことだったのだ。知美は愛合の自慢の姉だったから。
事件が起きたのは、その年の12月だった。場所は結婚式の披露宴会場で、偶然にも愛合は新郎側の招待客で、和子は新婦の親戚だった。ちなみに、知美は風邪で欠席していた。
ところが、結婚式場に新郎が到着しないから、さあ大変。新婦は心配で泣き出し、新郎の両親や親戚たちは探し回って上へ下への大騒ぎ。時として、運命というものは平気で三流のドラマみたいなことをするもので、間もなく新郎が交通事故で病院に運ばれたと連絡が入ったらしい。新婦と新郎の両親は慌てて病院に駆けつけ、その噂を聞いた招待客たちはどうしていいかわからず右往左往。見ていられなくなった和子が愛合に話しかけてきた。何でも新婦は和子がお姉さんと慕っている従姉妹だという。
「ね、並木さん、ちょっと手伝ってくれない?」
「え……? 手伝うって何を……?」
「もうすぐクリスマスでしょ。だから、ここをクリスマスパーティーにするのよ」
最初、愛合には意味がわからなかったが、和子の続きの説明を聞いて納得した。
「この場を盛り上げれば、お客さんたちも少しは気が晴れるんじゃないかな。そうなればお嫁さんや親戚の申し訳なさも少しは軽減できるでしょ」
そこで、2人は、というより、和子は言った方が正確だろう。従業員に話し、披露宴会場をクリスマスパーティーにしてしまった。
司会は和子で、カラオケやゲーム、その上出し物に変装大会など。元々、結婚式の予定だったから、道具も心の準備も万端だ。特に前半は子供たちをだしに使ったからとても和んだ雰囲気になった。後半は飲んで食べて歌って喋ってで、まるで忘年会のようで大盛況で、残された客たちは終了時間まで楽しんだ。
ちなみに、その新郎新婦は数ヶ月後、無事に結婚式をあげたというはなし。派手な披露宴はしなかったらしいが。
このときばかりは、愛合も頭が下がった。もし和子が何もしなかったら、全員気まずい時間を過ごさなければならなかったに違いない。1人の女子高生にこんなことができるなんて、和子はすごいと、愛合は素直に認めた。愛合の人生の中でそう思ったのは、姉の知美と和子だけだった。
それから、和子も愛合の大事な人になったのだ。
不器用な愛合はよく失敗する。そんなとき、姉の知美とは大丈夫よと味方になってくれて、親友の和子は叱ってくれた。だから、よく喧嘩もしたけど、すぐ仲直りして、その度に絆が強くなった気がした。今になってしみじみ思う。叱ってくれるのも情熱が必要だってこと。本当に感謝しかない。その上、仕切り屋の和子は、(と言っても、決して仕切りたがりじゃない。)みんなから頼まれると嫌と言えない、損な性格なのだ。高校のクラスメイトからは、ザ・委員長とか、ザ・お母さんと呼ばれていたっけ。それは嫌味ではなく、頼りがいがある意味の愛称だった。
あ、あれは……と、愛合は思い出した。
去年のクリスマスだ。姉の知美の死を認めきれないまま苦しんでいる愛合を気遣って、カズが強引に誘ってくれたっけ。
悲しみは消えないけど、和子や子どもたちと一緒にいると、楽しさは感じた。人は辛いことがあっても生きていられるって、こんなことなのかなぁと、やっと理解できた気がする。
そんなしっかり者のカズだからこそ、愛合や妹弟に心配かけないようにと、我慢していたのだろう。今回も一人で苦しんでいるに違いない。それはカズのいいところだけど、すごいと思うけど、とても心配だ。いつも心配かけているあたしが言えるかって話だけどね。だから、少しでもカズの力になりたい。どこまでできるか自信はないけど、諦めることだけはしたくない。
「こんな弱虫のあたしでごめんね。でも、もう泣き言なんか言わない」
愛合はやっと腹をくくったのだった。




