↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
73/76

修学旅行(東大寺)(前編)

東大寺から少し離れた駐車場からむか徒歩で向かうと、徐々に見えてくる屋根が、その大きさを物語っている

零体化を解いたサティアが笑みを浮かべ、太郎達の前に立ち後ろ歩きしながら提案する

「真弓姐さん、優子姐さん、東大寺に居る間だけ彼らに羽を渡してはどうだ」

「良い提案とは思いますが、その」

「ははは、ジョニーがいつも以上に馬鹿な子になっちゃう(羽を持っていない人から見て)」

「なんやと」

「そこは大丈夫、ぼくが『ご都合主義フィールド』をはっておくから、周りからは普通に歩いている若者にみえるようにしておくから」


そして、鹿との接し方や、鹿飛び出し注意の標識や看板が見えてきた

例の如く道端の土産屋には学生たちが


「太郎、今のうちに鹿せんべい買っとこう」

「うん」

と二人が、女性陣を置き去りに速足で、売店へと向かい、両手いっぱいに鹿せんべいを買って戻ってきて、彼女達にも手渡す

「これが鹿せんべいですか、むき出しで売ってるんですね」

「聞いた事は有るけど、慌てて買いに行くなんてここの名物菓子……食べて良い」

紙の帯をとる真弓と、サティア


(注意‼ 完全無添加食品ですが、鹿が食べることを前提と作られているので、人間が食べると腹を壊す可能性があると思います)


「一枚くらいなら、別に食べてええけど、鹿の分もちゃんと残したれよ」

馬鹿にして笑うジョニーの言葉を真に受けて、かじりついた二人の顔が一気に曇る


「なにこれ、ぬか」

「炭酸せんべいの様な香ばしい香りに誘われてみては、砂漠の様に一気に口の中の水分が吸い取られ、残るはぬかの粒とその後味の悪さだけ」

自分も食べようと思っていたのか、ため息を漏らす優子

「ははは、誰しもとおるみちや」

「ぼくもジョニーも、小学生の時に体験済み」



南大門を前に

「忠告しておきます、鹿は可愛い、それは遠くから見ること前提の言葉……だから、あの石柱から向こうの『触れ合いゾーン』決して油断しない事」

「サティアちゃん、怖あなったら抱っこしたるから、遠慮なく言い」

「うう、確かにお前の方が背は高いからと言って、ぼくを子ども扱い、馬鹿にするな」

「ほほう」

「あのような鳥獣、このエサ『鹿せんべい』で手懐けてくれよう」


石柱の外

木の下や、溝の中、参道の中央、鹿たちが歩いたり、足を折り曲げ休んでいたりと、とてものんびりした風景が、妙にとぎれとぎれに見える


そして石柱を通過した……途端に鹿たちが「さあ餌の時間だ」と伏兵のごとく押し寄せて来た


「ははは、我先にと可愛いな」

サティアが差し出した鹿せんべいは一瞬にして数匹の鹿に食いちぎられ

「次だな待ってろ」

次を取り出そうとする彼女の後頭部を、催促する様に鹿が鼻でこづく

「こら、せかすな」

しっかり、しつけられているのか、目の前にせんべいの束が有ろうと、それを直接狙ったりはしないが、匂いがする限り、催促をやめようとはしない

「ええい、しつこい」

辛抱たまらずサティアは、帯を引きちぎり、扇状に広げ手を上げてしまった……が最後、今度は大きな鹿たちが「ちょうどいい高さに餌がある」と、彼女を取り囲む



群れに襲われる

「わわわ、あの大人しそうな鹿が……てもうエサが無い……てこら、ぼくの指を舐めるな、嚙むな、吸い付くな」

ひとしきり、帯まで食べた鹿……だが、まだ彼女からエサの匂いがするのか、鼻を引くつかせている

「そんな必死に、においをかいだって僕はもうエサを持ってないぞ……におい、しまった」

サティアは、慌てて口を塞ぐ、そう彼女はさっき鹿せんべいを食べているのだ



案の定、鹿たちは、サティアの手をよけようと、鼻をしつこく押し付ける

「ええい、うっとうしい」

力をつかおうとするサティアの目が光る、それを察したのか、真弓が彼女の頭に手をのせ視線を合わせる

「鹿を脅かしたり、叩いたりしちゃダメ」

「だけど真弓姐さん」


困り顔をするサティアの頭上を横切る鹿せんべい……太郎が鹿の目の前に鹿せんべいをちらつかせ、投げ、鹿を一斉に遠ざける

「流石は、優子姐さんが惚れた男、礼をゆう」

「ううん、礼ならこの方法と僕に鹿せんべいを渡してくれた、そこに居る優子さんに」

太郎が指さす視線の先、頭を下げる優子に、サティアは目を閉じ深く頷き返した


そして南大門の前

仁王像を渋い顔で睨むサティアは、ため息をつき、ロングコートのフードをかぶり

「うむ、どうも今回ぼくは、顔を隠しておいた方がよさそうだな」

「どうして」

いくら神聖な所とはいえ、彼女は魔界の次期王女なのだ何を臆することが?



「今回、神たちが見たい、可能ならば話したいのは、ぼくじゃなく、今や大天使ともいえる真弓姐さんたちのハートを射止めた、君達らしい」

その言葉に困った表情を向け合う太郎とジョニー

「だから」とサティアは、太郎達四人の体にタッチして回り

「この東大寺を離れるまで、ぼくたち五人だけに働くご都合主義空間をはった……真弓姐さん優子姐さん、二人に羽を」

「うん」

「はい、ありがとうございます……でも今は」


「優子さん何か都合が悪いのですか」

「いえ、ただ」

「あたしは渡すよ、はい、ジョニー」

と真弓は笑いをこらえるような顔で、ジョニーと彼の前の空間へ交互に視線を送りながら、羽を渡し

のけ者は良くないと、優子も太郎に羽を渡す


先にも説明したが、これにより太郎達人間も、優子達の見てる景色が見れるという事だ

おそるおそる二人は、目を開け正面を見るとそこには


普段、南大門東大寺を守護されている、口を開いたの阿形左(西)側(あぎょう)像と、口を結んだ吽形右(東)(うんぎょう)

大男二人が、額が触れ合うほど近くに立ち、睨むように、だが優し気に彼らをしなさだめしている


「その瞳の色」「魂の色」「「おまけして、ギリギリ合格」」


ほっと胸をなでおろし、南大門をくぐった太郎達の耳に、地を揺らすような低い犬の唸り声が

(そう言えばここ、門の北側には日本最古の巨大な『狛犬(石獅子)』が……けどどこに)


周囲を見渡すと、門の柵まさにケージ内に、年老いた犬が、うなり声ならぬ、寝息を立て、しっぽを波打たせなんとも気持ちよさそうに眠っている

「こんなんで大丈夫か」

「もちろん大丈夫、ほら」

両腕を広げる真弓の前には、鹿子負けの数の犬が(なかには空を飛んでいる犬まで)


歩いていると、ジョニーの回りに犬が群がるが、なぜか太郎の回りには、空間が出来ている

「やぁい太郎、嫌われてやんの」

「いいえ、この子たちは警戒しているのです」

「だって、太郎君の家にはポチが居るじゃん」



たしかに、雑種とはいえケルベロスだ、そんじゃそこらの番犬とは質が違う

そして太郎達は、左側に東大寺ミュージアムを見ながら、周囲に群がる狛犬、精霊たちに見られながら、鏡池のそばに来たとたん、サティアが声を上げる

「何だこの池は」

「鏡池です……あ、人魚が居る(羽をとおして)」

(八百比丘尼(やおびくに)の伝説)

人魚のほかにも、数多くの精霊たちが水浴びをしている


「それくらい知ってる……ぼくが言いたいのは、泥池と小馬鹿にしていた池が、美しくなっていることだ」

水面に映るは、逆さ富士ならぬ、逆さ東大寺といったところだろう


そして中門

「柵だと」

正面からストレートに入れない事に不満を口にするサティア

「入り口は回廊沿いを左に進んだ西楽門にゲートが有るんだ」

「一人、六百円か」


「天上の神に会うだけで金を取られるとは、人間界はなんともせちがらいな」

彼女の立場上、それは神に頭を下げ、下の立場のように思えたのか、はをむき出しに苦笑いと舌打ちをする



読んでいただき、ありがとうございます。

『山田太郎たちの恋物語・Boys Meets Girls?』

第五十部『修学旅行(東大寺)(前編)』

いかがでしたか? 気に入っていたたけたら是非

ブックマーク ・ ☆一つでも、評価をいただけると……

とてもうれしく、励みとなります。よろしくお願いします。


by.メガネ君(作者)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。