アメリカ軍演習への誘い
「やっぱ、真弓の空中戦は、何回見ても興奮するな」
自室で一人、先週撮影した姉妹の空中戦の映像を見ては、興奮のあまり声を出し立ち上がるジョニー。
数分後
「そこや、惜しい」
絶賛興奮中のジョニー、その肩に大きな男の手が
「ジョニー、これはなんてタイトルのムービーなんだい?」
「おう、こいつは映画みたいな作りもんやあらへん、聞いて驚けこれはな……っておお!」
部屋の鍵をかけたつもり(...)で全力で自分の世界に入っている者が、背後から、しかも家族に声をかけられ、
驚き立ち上がり転んでしまうのは当然の反応だろう
「相変わらず面白いリアクションするな」
「大きなお世話や、痛って、おとんいつ沖縄から帰ってきたんや」
「ああ一時間ほど前で、明日から三日の休暇だ……そんな事よりムービーじゃないなら何だ」
「こ、これはやな、うんと……そう、太郎らと作った『自主製作ビデオ』ま昔で言う『ホームビデオ』っちゅうやつや。その証拠に……ほら、ほらこの街並み、天神町やろ。あ今自宅見えた」
「たしかに。しかし、空軍パイロットだから言える……雲や空気抵抗表現、かなりリアルまるで本物、ラジコンやドローンじゃ絶対無理な高度、いったいどうやって……本当にお前達学生が作ったのか?」
「そんなん合成映像に決まっとるやろ」
「本当にそうか?」
「しつこいな」
(思い付きで言ってもたけど、我ながらええ言い訳が出来んちゃうか。もしかしてわいって天才?)
心をよまれまいと、思わずにやける口を歪ませ、不満そうな表情をつくるジョニー
(よしあと一押し)
しかし、世の中そんなに甘くない
「なあ。だったらあれも、ホームビデオか?」
「えっ」
親父が指さす天窓に目を向けた瞬間固まるジョニー
「へへ来ちゃった、窓開けて」
そう、そこには笑顔でノックする真弓が居たのだ
「『来ちゃった』やないやろ真弓、あれほど来る時は電話かメールせえって、この前も約束したよな」
「え何、(閉まってるから)聞こえない」
「ああ」
頭をかき文句を言いながらも、壁に立てかけている脚立を慣れた手つきでセットするなり上り天窓を開け『ほら開けたで』と招きする
「ごめん、て怒てるけど、窓開けてくれるジョニー、優しい、好き」
「あほぬかせ」
微笑む真弓に照れるジョニー。
しかし彼は脚立から降りるなり、真弓に脚立を使わせる気がないのか、そそくさと折りたたみかたずける
「おいおいレディーに対して、いや他人に対してそれはあまりに失礼だろう……飛び降りたらいいだろうけど、その後どうやって閉めるんだ」
「そうそう、そのおじさんの言うとおり」
「なに言っとるんや真弓、いつも使いないやろ。それに天窓に現れた時点で、おとんも『もしかしたら』て半分以上予想し出来とるやろから、心配せんと入ってこい、あ、窓はちゃんと閉めてや」
「うん……よっと」
まるで風呂につかるよう足から入ってくる真弓を、呆然とした表情で見上げるジョニーの親父
「おじさん、スカートなんだけど。こっち見ないでくれる」
「お、これはすまない」
回れ右したのを確認するなり、するりと部屋に入り、浮遊しながら天窓を閉めて着地
「おじさん、もういいよ」
あんどの息をつく彼をしり目に、テレビ映像を見ながら自慢げに笑みを浮かべ
「我ながらよく撮れてるわ……で、ジョニー、さっきから居る、この人誰よ」
「今頃かい……見てってか、さっきから話聞いて分からんか、わいのおとんや」
「布団?」
「おとん……親父や、わざとつまらんボケかますな」
「はは、ばれたか」
一件落着したところで、我に返ったジョニーの親父が、握手を求め声をかける
「はじめましてお嬢さん。自分はジョニーの父、マイクだ」
「間違ってたらごめんなさい。もしかして軍人さんですか」
「ああ、よく分かったね。そんな勘の良いお嬢さんの名前は?」
「初めまして、お父様上田真弓です」
伸ばされた手を握る
「わ!」
声をあげ、真弓の手をはらいのけるマイク
「どうかされました」
「失敬。それで二人はどんな関係なんだ」
一瞬戸惑い『にこり』と笑い口を開く真弓の肩を「ええから」と掴んでは後ろに移動させるだジョニー
「見てわからんか、真弓はわいの彼女や……ま『わいのエンジェルや』て、かっこつけて言いたいんやけど。さっき手え握ったとき分かったと思うけど、ほんまもんの半神半魔やねん」
「半神半魔ね、てかお前の彼女だと⁈」
「驚くん、そっちかい」
「付き合ってるなら証拠として、彼女にキスてみろ」
「『キスせえ』てなに言っとるんや。わいらキリスト教徒にとってキスってのは神聖なもんとちゃうんか!」
「だったらフレンチ・キスだ、とにかく証拠をみせろ、出来ない、嘘ついてたのなら。来月の小遣い、減らすぞ」
「いや、嘘なんかついてへん、けど……キスて」
頭をかき戸惑うジョニー
「あたしを彼女だって紹介してくれた、力強さはどこ行ったの?この意気地なし」
「ははは、言われてるぞ」
「でもな」
「もう」
業を煮やした真弓は、向かい合う親子の間に割り込んだかとおもえば、そのままジョニーの後頭部に手を回し強引にキスする
「な、いきなり何すんねん!それに今の、舌入れようとしてたろ。それでも女か」
「ええ女よ、ジョニーあなたのね、お父様、これで分かってくれた⁈」
「ああ、情熱的なお嬢さんだ、で約束もせず、窓から入ってくる程急ぎの用とは?」
「急ぎって程じゃないんだけど、この前撮ったお姉ちゃんと空中戦ごっこしてるビデオ返してもらおうと思って」
「お姉ちゃん?」
「うん……ほら、今テレビに映ってるこの」
「ああ、何度も映ってたけど、てっきり君の妹さんかと……平均的いや、優しそうなお姉さんだね」
「おじさん。どこ見て言って言ってるのかな……まったく、似た者親子ですね」
『お父様』から一気に『おじさん』へ格下げし、軽くため息をつき呆れてる真弓に、ビデオ(DVD)を返すジョニー
すると、申し訳なさそうな苦笑いで頭を搔きながらジョニーの親父が、真弓に質問する
「真弓ちゃん、と呼ばせてもらって良いかな」
「はい」
「天窓から入ってきたり。ビデオを見ても信じられないんだ……その、君は本当にビデオに映ってるとおり、自由に飛とべるのかい……事実なら申し訳ない」
半信半疑『冗談だろう』と苦笑いしながら質問する彼に、むっとした真弓はきっぱりと
「はいもちろん。手を握ったとき色々見えなかった」
「見えた……しかしあれは(女子高生の手に触れ)何かの幻覚」
「あはは……ま、証拠を見せればいいのね」
「ああ頼むよ」
それを聞くなり(海側)窓を開け、バルコニーのてすり立ち
「危ない、おりなさい」
焦るマイクに、笑顔を返し、そのまま背中から落ち……下をのぞき込む彼の前で浮遊して見せた
「驚かせてごめんなさい……でも面白いのはここからだから。て、せっかくだから」
翼を実体化させる真弓に、間髪入れずジョニーが声をあげる
「あほか! 他人に見つかって騒ぎになったらどうすんねんあほ!」
「あほあほって、あんたにだけは言われたくないわ。ちゃんと回り見て」
三人以外、歩く人や動く車はおろか、鳥など動物もいない
「これって」
「ご都合主義空間くらい、窓開けたと同時にはってるわよ」
「ご都合主義空間とは?」
「うんと……現実世界彼隔絶された。その……そう、なに壊したって大丈夫な場所のこと……とにかく『百聞は一見に如かず』面白いのはここからだから、ちゃんと見ててね」
『なに壊しても大丈夫』など意味不明な発言に、言葉を返せずにいるマイクの肩をたたいた真弓は、二人から少し離れ、回れ右……
「よし」
一気に加速し、水しぶきが上がるほど海面すれすれの低空飛行からの、水柱を上げ急上昇、宙返にばれるロール、急制動、二人の目に見えない亜音速歩行など……数分間、思いつく限りのアクロバットを見せつけ……
『ああ、スッキリした』と満足げな顔で二人の待つ部屋に戻ってくるなりジョニーに言い寄る
「ねえジョニー、面白いもの見せてあげるから協力してくれない」
面白いものという言葉に反応するジョニー
「おもろいもんてなんや」
「『アストラルワークス』うう『魔法』て言えば分かりやすいかな」
「魔法やて」
「うん。だから、この前のクレー射撃で使った的、何枚でもいいからいっぺんに飛ばしてくれないかな」
「なんたおもろそうやな……でもそんな自信満々で言うて一枚でも外してもたら」
「そうね……あんたの言うこと何でも一つ聞いてあげる」
「なんでも」
「ええ。何でも」
彼女お胸元を凝視して生唾を飲むジョニー
「興味深いがジョニー、エッチな要求はやめてあげろ」
「大丈夫よお父様。絶対外さないし、ジョニーはあたしの彼氏だから。エッチなお願いだってきいてあげる」
そうして、バルコニーへ出てクレー発射装置を用意するジョニーに
「『ご都合主義空間』はそのままにしてるから、遠慮なくランダムに発射してね」
「おう」
「二人ともさっきから言ってる、ご都合主義空間とは何だい」
「ジョニー、今からおじさんに説明するから、ゆっくる準部してて……それじゃ」
とバルコニーの手すりを飛び越えビーチに立ち振り返り、手を振りながら大きな声で
「今からパンチで、小さなクレーターを作ります」
何の冗談だと不思議そうな顔をする親父をよそに、真弓は片膝をつき、地面を殴りつけると、視界を塞ぐまでの砂煙が……視界が戻った時そこには、クレータどころではなく
潮だまりが出来ていた……クレーターのサイズが予想以上に大きくなり、海水をひきこんでしまったのだ
言葉を失い固まる親父の肩をゆする真弓
「びっくりさせてごめんなさい」
「いや、ああ、凄い力だね……ジョニー付き合う以上彼女を怒らせたら、浮気なんて考えたら死ぬぞ」
「おとん、真弓、すまん……これからも怒らせたり、色々するやろうけど、わいにとってお前以上の女絶対おらへん」
「ほう」
ごく自然に返事する息子の言葉に感心する親父のそばで、顔を赤らめる真弓だが
「ジョニー……あたしのママが相手でも言い切れる?」
「サキュバス相手、なんて卑怯やぞ……う、そりゃムラムラしてまう、やろけど……彼女のおかんやからノーカンやろ⁈」
「うん、サキュバスなら仕方ないな」
「……この親子は」
拳を震わせる真弓だが、深呼吸をして言葉を続ける
「おじさん、あの潮だまり見ててくださいね、今から通常空間に戻します……三、二、一、零」
まるでスイッチのオンオフの様に、潮だまりは消え、いつものきれいな砂浜に戻っていた
「凄いイリュージョン、じゃない……いや言葉が出ないよ」
そう一段落したと同時に
「準備出来たで……始めよか」
とクレー射出スイッチを持って立ち上がるジョニーに笑みを返す真弓
「あたしこそ、いつでもどうぞ」
「ほな!」
ジョニーは、クレー射出口を振り回す様に適当な方向へばらまき続け
「早くせな、クレー海に落ちて失格になるで」
そして、十枚ほど出た時
「そろそろいいか」
真弓は右手の平を正面にかざし、そのまま右にスライドさせると、その軌道を追うように光るピンポン玉が複数現れ
「行け玉ちゃんズ!」
真弓の号令と共にそれらは一直線にクレーへと飛んで行き、全て破壊する
「どう?」
「凄いな……てか玉ちゃんズて」
「何も言わず壊すより、あたしらしくて可愛いじゃない」
「あのなあ」
ヒートアップしていく二人
言い返そうと詰め寄る真弓、その眼前に突き出した手を大きくたたくマイク
相撲でいう『猫だまし』だ。見事成功し二人とも口が止まる。
「いやあ真弓ちゃん。いろいろ疑って悪かった……君みたいな可愛いうえに強い女の子に愛されてるなんて、こいつ(ジョニー)は幸せ者だ」
「もっといって」
機嫌よく胸を張る真弓に
「で、ものは相談だけど真弓ちゃん。そのビデオみたいに、今度は戦闘機と『空中戦ごっこ』したくないかい?」
「『空中戦ごっこ』ゲームのこと? なら、前にジョニーと遊んで連勝」
「いやいや、ゲームなんかじゃじゃなく、本物のアメリカ空軍の戦闘機と模擬戦闘をしないか……無論残った時間は沖縄基地のビーチだけど、遠慮なくバカンスを楽しんででくれ……というのでどうだろう」
「本物の戦闘機となんて、面白そう」
聞くなり目を輝かせる真弓だが……「待って」と手をかざし、少し首を傾げ考えること10秒
「もし壊したりなんかしたら、お姉ちゃん、より、パパに怒られそう……お姉ちゃんに電話させて」
(なるほど、親に叱られる時共犯を作っておこうというはらか)
と言うなり、ポケットからスマホを取り出しダイヤルしながら言葉をつづける
「で、いつ行くの?」
「来週の日曜はどうだ」
「あたしはあいてるから大丈夫……てあ、お姉ちゃん………」
(電話の内容考え中)
「おじさんの引率で、あたしと、お姉ちゃん、それに太郎さんと、ジョニー、四人一緒なら良いって」
「なら太郎は、わいが誘っとくわ……優子ちゃんが来ると聞いたら断らんやろけど……花子ちゃんも来るかもな」
「絶対来るわ、あたしも出来る限り相手して見守ろうと思う」
「二人とも、ありがとう……基地には後日連絡しておく」
読んでいただき、ありがとうございます。
『山田太郎たちの恋物語・Boys Meets Girls?』
第四十六部『アメリカ軍演習への誘い』
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by.メガネ君(作者)




