模擬戦
「その銃で、あたしを撃ってみて」
コルトパイソンを持ったジョニーの前で両手を広げる真弓……と、いきなりの展開についていけない皆様のためにも時間を戻し……改めて話を始めよう
初詣を終えた僕達はそのまま、ジョニー家の裏手にある浜辺に着き、向こうに見える天神島を見るたび
(プライベートビーチなんて、この贅沢者め)と心中、つい庶民のひがみが出てしまう
「じゃあ早速始めたいだけど、さすがにこのまま大暴れしたら不味いから……驚かないでね」
真弓が大きく手を叩いた音に、なぜかふらついたと思えば突然、波音と浜風しか聞こえなくなった
「なんや?」
「この前パワーアップした時に得た能力で……あたし達五人を、位相世界へ転移させたの」
「ここなら何を壊しても元の世界には、全く影響ありません」
「真弓お姉ちゃん凄い」
「なんつうご都合主義やねん」
「まったく」
「便利でしょ、早速始めるね……とりあえずジョニー、家から銃持ってきて」
「おう」
まだ唖然とした様子のジョニーは、言われるがまま自宅からハンドガンを持って来る
「ありがとう、早速だけどその銃で、あたしを撃ってみて」
コルトパイソンを持ったジョニーの前で両手を広げる真弓……と我に返ったのか、ジョニーが声を上げる
「そんな事出来るか!」
目を吊り上げている彼とは対照的に、真弓はにこりと笑いながら、それをなだめるような口調で
「大丈夫そんな銃程度なら、あたしには傷一つ付けられないから」
「皆の居る前で出来るか!」
「大丈夫だから……二人きりの時なら出来るの」
「そうやない、もしもの事が起きたら、どないすねん」
「ああもう、貸して!」
声を上げ反対し続けるジョニーに、いいかげん腹を立てた真弓は、彼の手からはたき落とす様に銃を奪い取るなり
「こうするのよ」と言わんばかり、ちゅうちょなく銃口を自分の頭に当てる
「わぁー!」
ジョーニーは真弓に突進し、そのまま彼女の銃を持った手を両手でつかみ、雷管へとふり下ろされる撃鉄に指を挟み……そのまま彼女を押し倒す
これには流石の真弓も、一瞬驚いた表情をするが……すぐに挑発的に笑みを浮かべ、自分を睨みつけるジョニーに視線を返す
「ふふ、強引ね、いきなり押し倒して何するつもり?」
「お前こそ、なにするつもりやったんや!」
「あ、引き金をひ」
「あほか!」
「はぁ⁈」
突然バカ呼ばわりされ不機嫌になる真弓に、ジョニーは花子を指さし声を上げ続ける
「花子ちゃん見て、よう考え! ショックのあまり立ったまま気絶しとるやないか、どうしてくれんねん!」
目を見開き、何度も息を激しく吸ったり吐いたりして……過呼吸症状を起こし気絶、いや、慟哭してる
真弓は、今更ながら、己の軽率な行動が前いた事態を猛省、泣きそうな表情で、花子の肩を掴み揺さぶる
「花子ちゃん! 花子ちゃん!」
意識が戻ったのか、瞬きし真弓を見るが、まだ声が出ない、真弓をひっぱたくなり、飛びつき思いきり抱き締める
そう、行動でどれだけ心配してたか、怒っているかを伝えているのだ
「花子ちゃんごめん……皆、ごめん」
そして……気を取り直し
「ジョニー、テッシュ一枚ちょうだい」
「ほい」
「ありがと、銃返すわ」
ポケットティッシュと交換する様に、ジョニーへ銃を返し……一枚引き出している真弓を、ジョニーが茶化す
「おいおい、鼻水でも出たんか」
「そんな訳ないでしょ、怒るわよ……かるく皮脂をとるの」と、軽く頬を拭いたティッシュをジョニーに向けて広げ、自慢気に
「その銃で、これに穴を開けられるかしら?」
「きたな、穴開けれるてか、引きちぎれるにきまっとるやろ」
「どうかしらね」
「見とれよ」
挑発されるがまま、ぴんと張られたティッシュに銃口を向け引き金を引いたが……発射された銃弾は、分厚い鉄板に当たったようにつぶれた弾丸が地面に落ちる
「おかんもびっくり……なんつう厚化粧しとるんや」
「ただの皮脂よ、殴るわよ」
殴るという言葉に身構えるジョニー、しかし真弓も拳を構えるだけで、恒例のげんこつが来ない
「え、殴らへんのか?」
「死にたいの」
「へ?」
「天神エンジン使用中なら、遠慮なく殴ってたんだけど……まだパワーの制御が出来なくて……殴ると意識して拳を振っただけでも、こう」
と、海に向けてパンチした、とたん衝撃波と砂浜がまっすぐにえぐれ、そのまま海も数十メートルにわたり、一瞬われる
「「おお」」
感嘆の声に真弓は、少し後ずさる花子に、何度も視線を向け……表情を曇らせ気まずそうに
「ジョニー、ごめん……模擬戦なんだけど、お姉ちゃんと空中で追いかけっこに変えていいかな」
「なんや、いきなり大人しゅうなったな……ここやったらいくら大暴れしても大丈夫なんやろ?」
「そうなんだけど、さっきの事もあるから……戦闘行為とか、暴力的なシーン、今はこれ以上、花子ちゃんに見せたくないの」見て
「せやな、分かったわ」
「そういう事だから、お姉ちゃん先攻後攻、十分交代で空中追いかけっこに変更で、あたしが最初逃げる方するね」
「ええ……でも、さすがに高く飛んだら見づらいというより、見えないと思うので、ビデオカメラは有りませんか?」
「お姉ちゃん、そんなの携帯電話についてるよ」
「え⁈ カメラだけかと思ってた」
「相変わらずのアナログ人間……携帯貸して……いい、ここをこうして」
「ああ、なるほど」
ひととおり教えた真弓は、ジョニーに
「後でデータ渡すからDVDにやいてね」
「おう」
「そうと決まれば早速、位置について用意、ドン」
僕達から少し離れた所までダッシュした彼女は、せき込むほどの大量の砂煙るを上げ、一瞬にして上空へと舞い上がる
「それでは、私も失礼します」
と、優子は頭を下げ……真弓同様、少し離れた所までダッシュし、砂煙るを上げ、見る間に上空へと舞い上がっていった
数秒後……優子の宣言通り、彼女達の姿は見えなくなったが、よほど激しい追いかけっこをしているのだろう……数度にわたり、花火の様な衝撃波が来たと思えば、
雲が割れ、それを引き伸ばす様に、二本の飛行機雲が、自由線のごとく不規則にうねうねとのびる
呆気にとらわれていると、もう十分立ったのか彼女達が戻って来る
「どっちが勝ったんや」
「あたし」
「神魔、ダブル使用なんて……全く追いつけない」
「今度はお姉ちゃんが逃げる方だけど……ハンデ、あげようか」
「いいえけっこうよ、その代わり私は低空を飛びます……私と同じ低空でついてこられるかしら……上手に曲がれず、色々壊しても知らないからね」
その言葉に皆、心で(おい天使)とツッコミを入れたのか、僕の隣でジョニーが思わず苦笑いする
そうして、彼女たちは再び大空へ消えていき……一分も経たないうち、優子の予想通り……どちらが起こしているかは知らないが、
激しく何かがぶつかる音、崩れる音に、何本も煙が立ち昇っている
そして彼女達が戻ってきた……よく見ると、真弓の服装は乱れ汚れている、やはり音を立てていたのは彼女の様だ
「あんな入り組んだ所飛ぶなんて……あたしが苦手なの知ってるくせに、ひきょうだよ」
「だって、そうでもしないと直線ばかりだと、一瞬で追いつかれてしまう……それに勉強と同じで苦手を克服すればその分強くなれるでしょ」
「うん……でも最後のトンネルを抜けてすぐの急上昇、と見せかけたユーターン……あれには騙された、上を見てるときに背中叩くんだもん、びっくりした……で、
お姉ちゃんの勝ち」
「一勝一敗、良いんじゃないですか」
「うん」
「そや、この結果なら喧嘩世えへんですむし、またやろうってなるやろ」
「そうね……はい、あたしとお姉ちゃんの動画メモリーチップ」
「おう、早速今晩DVDにやいて、学校で返すわ」
「じゃ、元の世界に」
と、再び真弓の手を叩く音で、僕達は年始の騒がしい音と雰囲気のもとの世界へと戻ってきた
読んでいただき、ありがとうございます。
『山田太郎たちの恋物語・Boys Meets Girls?』
第四十五部『模擬戦』
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by.メガネ君(作者)




