正月・初詣
正月の午前十時……おせち料理を食べ、お年玉を受け取り、玄関での集合写真を撮り終えるなり
「真弓お姉ちゃん達と一緒に初詣に行きたい」
と言い出しておきながら、なぜか不機嫌そうな花子を連れて
僕とジョニーは、混雑を避けるためにも神社の駐車場の隅で、彼女達を待っている
「お待たせ!」
元気に手を振る真弓の声に、顔を向けた僕達は、意外な服装の彼女達に、一瞬戸惑った
僕とジョニーはともかく、花子や優子さん真弓さんまで私服姿には驚いた
「あけおめ」
「ハピーニューイヤー!」
「あけましておめでとうございます」
「「あけましておめでとうございます」」(僕と花子)
「二人とも、私服なんて意外です」
「そやな、優子ちゃんはともかく、真弓ちゃんは、これでもかて気合入れて派手な服着てくると思っとったんやけどな」
小馬鹿にするように話すジョニーに、真弓も思い出し笑いして返す
「あんたこそ、この前の七五三スタイルじゃないのね」
「うるさいわい!」
「花子ちゃん、ご機嫌斜めそうだけどどうかしたの? 遅れてきてごめんね」
「花子のこれはそうじゃなくて」
花子の場合……ジョニーと違って、僕の家計は安月給のサラリーマン家庭だからか、両親、とくに親父が無理して買った和服が混雑の中で汚れたり、
ましてや破れたりしたら嫌だと、はっきり言われ
毎年恒例の玄関で家族の集合写真を、撮るや否や、和服独特の感触を楽しむ間もなくすぐさま、私服へと着替えさせられ
さらにご覧の通り、周囲を見ればもっと高そうな和服を着た人だらけ……こうなるのも無理ないだろ
「そうなんだ、写真出来たらあたし達にも見せてね」
「うん」
真弓の声に、少し機嫌が良くなったのかにこりと笑う
「真弓お姉ちゃん達こそ、なんで普通の服なの?」
「ごめんねホントは、あたしも和服を着てこようと思ったんだけどね……ジョニーの奴が」
「ええ……私は真弓に頼まれてなんですが」
「初詣の後、こいつんちの裏の浜辺で……あたしとお姉ちゃんの模擬戦を見たいってお願いされたから……しかたなくよ!」
「でもさ、真弓お姉ちゃん達が飛んでるところを、ジョニーのおばちゃん、おじちゃんに見られてら大変な事になるよ」
「それなら大丈夫や、二人とも、おかんの実家がある大阪に行っとるからな」
「あんたは付いて行かなくてよかったの……心の古里なんでしょ?」
「まあな、でも夫婦水入らずにしてやりたいし、それより今はお前と、皆と一緒に居たいんや」
「ばか」
キラキラしたピンク色の効果背景が流れそうな、二人だけの空間
やきもちをやいた花子は、ジョニーをまるで親の仇の様ににらみながら、嫌味を言う
「あれ? ……そういえばジョニーお兄ちゃんてキリスト教徒だよね……お正月、教会にもいかずこんなところに来てもいいのかな……イエス様に怒られちゃうよ」
すると真弓も面白がって後に続いた
「そうね、キリスト教徒のあんたが、こんなことしてていいの、ミサとか行かなくていいのかな」
「相変わらず、いたいとこ突いてくるな……まあなんや、ご当人見てしまったら、なんとなく、な……でも生前されたことや、教えは、立派やと思うし尊敬しとるんやで」
そして、鳥居へと向かいながら、ふと思い、気になりだした……それはこの神社、彼女達にはどう見えてるのか
不信人にも、天使が隣に居ると言うのに、神様は本当に地元の神社におられるのか等と、さかしい事を考えていた
人混みで離ればなれにならない様に、ジョニーは真弓の手、太郎は優子の手、花子は真弓と優子に挟まれ二人の手をつないで歩いている
「優子さん失礼を承知で聞きます……優子さん達には、この神社はどう見えてるんですか……神様は今ここにおられるのですか?」
「おられますよ、でも見ないほうが」
「お、ここの神様見れるんか⁈」
「花子も見る」
「それでは、私たちの背中に触れてください」
「「え?」」
僕達は変化した視界に、現れた人物の行動に、一瞬戸惑った
本堂の隅っこで、白いかみしもを着た、見た目二十歳程の男性が、怯えたように体をちじこませ、真弓に視線を向けてはそらしを繰り返し
……とても、人の願い事などを、悠長に聞くどころではない程……とにかく怯えている
「もしかして、あの隅で震えてる人が」
「はい、この町専属の天神様です」
「真弓お姉ちゃん、あの人怖がってるみたい……怖い夢でも見たのかな?」
花子の質問に真弓は、天神様を睨みながら、口に笑みを浮かべる
「ふふ……今もその、怖い夢、見てるのかもね」
「真弓ちゃん、なんか不機嫌やけど、天神様となんかあったんか?」
「あいつ、ここの土地神だからって、その権限を利用して……神力(攻撃力)で遥かに勝ってるお姉ちゃんに、しつこくちょっかい出してくるの」
「やめて下さいと言っても、聞いてもっらえないんです」
「でこの前、太郎君と付き合いだしたと報告したら……許さんなんてほざいて抱き着こうとしたから……あたしが、かるくお仕置きしてあげたの」
そう真弓の言ったとおり、正にからは今悪夢を見ている最中なのだ
「後ろの人に迷惑にならないうちに早くお祈り済ませよう」と賽銭を投げる
「もっと点数が良くなるように、真弓お姉ちゃんみたいに格好良くなります様に」
「花子ちゃんももうそんな年か……でもそのお願いは、ちょっと自分勝手だね」
「一つだけしか、しちゃいけないの?」
「ううん、そうじゃないの……お願いの仕方がちょっとわがままかな」
「少しきつく言ってごめんね……神様も、ご先祖様も、人間と同じで、努力して頑張る子が好きで、応援したくなるの」
「だから、こうお願いして……点数が良くなるように勉強頑張るから、格好良くなるように、頑張るから……見守って、応援して下さいって」
「はい」
「あ……そう言えば、あたしもこの神様にお祈り、お願い、が出来たわ……どうかこれ以上お姉ちゃんにちょっかいを出さないで下さい……でないと、ふふふふ」
ああ、嫌な予感しかしないのはなぜだろう
寒さを吹き飛ばすためと、無料で振る舞われている……米と麹からできた『ノンアルコールの甘酒』
を飲んでから、ジョニーの家へと向かった
少し熱かったのか……小学生の妹とはいえ、寒さで白い顔に頬を少し赤くする女の子って……どうしてこう可愛く色っぽいんだろう
お酒は二十歳になってから
酒粕から作られる甘酒は、市販の物でも、一パーセント未満、と微量ですが、アルコールが含まれています。
ご注意ください
読んでいただき、ありがとうございます。
『山田太郎たちの恋物語・Boys Meets Girls?』
第四十四部『正月・初詣』
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by.メガネ君(作者)




