復活と向上
「よし、誰もおらんな……前進、来てええで」
と僕達は、時折点滅する街灯に照らされながら、昼間でも人通りの少ない路地裏を、少し前を中腰のまま歩くジョニーの手招きに先導されながら……
意識の戻る気配のない優子を、お姫様抱っこをして……一路、僕の自宅へと歩いている
「それにしても、ゴミ捨て場近くなんて特殊な所で、お姉ちゃんに告白させたわね……センス疑うわ」
湧き上がういら立ちを抑え込み、ほほをひきつら出ながら苦笑いしながら睨む真弓に、僕は『ごもっとも』と申し訳なく
「ごめん、怒らないで……でも彼女が、とにかく人目につかない所と言うから」
「怒ってないわよ……だってまあ、そのセンスのなさに助けられたのは確かだからね」
「ありがとう……うわあ!」
「太郎、なにさっきから怖がってるんや……ま、わいも真弓に抱き着かれた時に見たもんで、予想はつくけどな」
ちゃかす様に笑うジョニー
「これあたしの羽……あげるから、あんたも見てみる」
ため息を漏らす真弓から渡された、一本の羽を手に取ったジョニーは、眼前の光景に、腰を抜かさんばかりに後ずさりした!
「何やこれ!」
周囲には、どう見て、考えてもこの世の生き物ではない、異形のものが、こちらをというより優子を見てる
「これって」
「低級悪魔よ、今は無視していいわ」
「なぜ」
「あいつらにとって天使はご馳走で、その中でもお姉ちゃんは極上の部類に入るの……そんなご馳走が無抵抗状態なんだから、言わなくても分かるでしょ」
「でも、極上って?」
「お姉ちゃんのママ……女神アフロディーテなの……ちなみにあたしのママは淫魔の女王クインサキュバスよ」
「はぁ、女神の子やて」
「……確かにすごいけど……だからって特別視したら、きっと彼女は悲しむだろうな……だから今のは忘れることにするよ……そうさ、彼女はどこにでもいる天使さ」
「天使ってだけで凄いやろ」
「はは、動揺が隠しきれてないわ」
「でも何や、ビビッとるみたいやな」
「このドレスのおかげ、かな?」
「確かに、羽持ってから見たら、まるで別もんに感じるわ……なんやそれ」
「この印……サティアから、入学祝にもらったの」
「ドレスをプレゼントなんてしゃれた奴やな……で、サティアって誰やねん」
「魔王の一人娘」
「ふうん魔王様の……って、わいも聞かなかったことに、でも、わい、娘様の事、呼び捨てしてもた」
「それくらい気にしなくても大丈夫よ、心が広いし、妹みたいなもんだから、なんならあたしが謝っといてあげるわよ」
「頼むわ」
そう言っている間に自宅前に到着した
どうやら、家族は眠っているのか、窓に光はなく、玄関前のポーチライトだけが点灯していた
「ごめんジョニー、今何時?」
「午後十時半や……って、すまん太郎んちに、泊まるって家に電話かけてええか?」
「あたしは……後からにするわ、なんせお姉やんがこの状態だから」
そして、両手がふさがっている僕は……ジョニーに、ズボンのポケットに有る鍵で、玄関を開けてもらった
これで一安心と胸をなでおろしたのもつかの間、玄関を入ってすぐの光景に、思わず声を出し後ずさりしてしまった
「わ!」
少し予想していたとはいえ……小学五年の頃に亡くなった祖父母が出迎えてくれているのだから
僕の部屋……いつも見慣れてるベッドだが、女性が横たわっているだけでなぜか別物に見えて、なぜだろう、落ち着かない
それに気づいたのか、けげんそうな表情で真弓が忠告してきた
「ちょっと、好かれてるからって、いかがわしい事考えてないわよね」
「まさか」
と、そこに前足で器用にドアを開け、ポチが入って来るなり僕を見て
『主よ』
「え……ポチがしゃべった!」(優子に触れているから、天使の羽がてについてるから、聞こえる)
「太郎お前、いつの間にこんな芸覚えさせたんや」
「そんなの出来るわけないだっろ」
驚き、顔を見合わせている僕とジョニーをよそに、真弓はポチに歩み寄り頭を撫でる
「良い子ね……起こしに行く手間がはぶけたわ」
「真弓さん、驚かないんですね」
「え……ああ、太郎たちは知らなかったわね、この子雑種犬なの」
「そんなもん見れば分かるわ……柴犬と秋田とかやろ」
「ううん、まあ半分正解ね……この子、ケルベロスの雑種なの」
「あぁケルベロスとのだったんか、そういやこの頃ペットショップで流行っとるよな……って、そんなわけあるかい!」
「ポチを、どうするんっですか?」
「この子を中経して魔界と天界へ同時に電話するの……ほんと、スマホって便利よね」
「ほんまにな……ってそんなの出来るのお前らくらいや」
「ポチ……そういう事だからお願いできる?」
『たやすき事よ……言わずとも理解して参上してる』
「ありがとう……それじゃあポチ、借りるね」
と真弓はバルコニーに出て、ポチを左腕で抱きかかえ、器用に右手だけでスマホを操作し……
そして電話を終え、部屋に戻って来て……一分も経たないうちに『コンコン』と部屋入り口の柱をノックする音が視線を向けると……
胸が大きく、何とも露出度の服を着た女性が、腕組をして立っていた
(この感じ、どう見たって)
「ママ」
「ヤッホー真弓、約束どおり新しいエンジン持って来たわよ」
エンジンという、どう聞いても的外れな言葉と、それを持って来た真弓の母親に、僕とジョニーは、呆れて言葉が出ない
「あれ? パパは?」
「ああパパね………そりゃあ、怒り心頭だったわ」
無理もない……最愛の娘がいきなり、どこの馬の骨とも知らないただの男に、命がけで愛の告白をしたうえ、答えも聞けぬまま意識を失ったのだ
「ヤッパリ」
「アフロディーテが、とめてくれてるけど……そのひきつった笑み……本心は……想像しただけでも怖いわ……と、それよりも!」
と真弓母はちゅうちょなく、ジョニーの股間に手を押し当て、笑みを浮かべる
「流石は、娘が選んだ男……良いもん持ってんじゃない……じゃ、ついでに」
とまたもやちゅうちょなく、太郎の股間に手を押し当てるが、微妙な表情
「ううん、及第点かな」
「「一体何を」」
「何をって……なに、のサイズを測ってたに決まってるじゃない、二人とも私の娘と、腹違いの娘の旦那候補になるんだから」
どうやら少なくとも、真弓母は、交際を認めてくれるらしい……それよりも
「それはどうも……それよりも、エンジンとは」
「そうや優子ちゃんは、機会やないんや」
「ああ、エンジンて、あなた達の体でいう心臓の事よ」
「そう、だから魔族であるママは、天使のエンジンなんて持って来れないはず」
「それなら大丈夫……入ってきて……ふふふ、ジョニー君、腰ぬかさないでね」
「ヘイエブリワン、隣人を愛してるか~い!」
「何やこのおっさん……この大変な時に、いきなり他人んちに現れて、テンション高いな」
「「えっ⁈」」」
この世の終わりとばかり、顔のほり深く、あごが外れた、髭面の老人
「えっ、てなんやねん」
「あんたこの人、誰だか知って、言ってんの?」
「そんなの知るわけないやろ」
「いや、分かるでしょ、お姉ちゃんが天使で、隣人を愛せよって、教え」
「いやいや、ちょい待てや」
「おじさん、スペシャルヒント」
その言葉に髭面の老人は、両手を広げて見せた
「イエス様」
「正解」と頷く彼女達に、顔面蒼白のジョニーを尻目に
「で、凄いの持っていくって……どんなエンジン持って来たの」
「ミカエル・アンド・ロキがチューンアップした……ヴァルキリーエンジン、二つよ」
「うそ……でもそんなおっきなのお姉ちゃんの胸には……サイズ的にちょっと」
「喧嘩しない様に、一つは真弓のよ」
「え……だったら、あたしの魔族側のエンジンが、パワーバランス的にもたない」
「大丈夫……この魔王様印の、オーガ・アンド・デーモンの、ツインエンジンなら」
「凄い」
「でも、力の制御が難しいだろうから、普段はこの天人エンジンをつかうこと」
「流石はママ、抜かりないわ」
(なんだろう、この一風ストリートレース漫画の様な台詞のやり取りは)
とようやく我に返ることが出来た僕に、真弓母が詰め寄って来るなり、質問してきた
「太郎君だっけ、優子ちゃんの彼氏って事で良いんだよね」
「……はい」
「よかった、だったら彼女のエンジン入れ替えしてくれないかな……あたいの場合、魔族だから触っただけで、神族のエンジンけがしちゃうんだよね」
「え?」
要約するとこうだ『彼氏なんだから彼女の心臓移植くらいできるよね』と何とも無茶ぶりさに、戸惑う僕を、ジョニーが笑う
「笑うなんて頼もしいわ、じゃあ、ジョニー君には真弓のエンジン入れ替え、神魔、両方ともお願いね……ふふ出来ないなんて……言わないわよね」
「はは、出来ないなんて、まさか……言えるわけないですよ」
緊張のあまりか口調が標準語ぽくなっている
「早速始めるわよ、イエスさん」
「イエッサー! ……少年たちよ、今より神族エンジン受け渡しの儀式を行う……わしの前で横一列に並び、両手を出すがよい」
「「はい」」
僕とジョニーが並び両手を出したことを確認した老人は……口の聖水をふくむなり、武士が刀の手入れをするかのごとく、それを吹きかけた、と同時に真弓が声を上げる
「わあ、こんな手に直接あたしの新しいエンジンを」
「そんな訳ないでしょ……この衣を持たせるための下準備よ、その上でエンジンを持ってもらうの」
「きれいな布やな」
「うん」
「これってもしかして」
「ビーナスの衣よ」
そして僕とジョニーは、ビーナスの衣ごしに、水晶細工の様に光るヴァルキリーエンジンを持つ
「まずは太郎君、それを優子ちゃんの胸の中央に、そっと押し当てて」
言われるがまま胸の中央で押し当てると、それは吸い込まれるように彼女の体内へと消えていき……入れ替わるようにひび割れた水晶玉ができた
「これは?」
「エンジェルエンジンよ……こんなにひび割れて」
「やっぱり、お姉ちゃんほんとはすごく怖かったんだね」
「太郎君……つづけて、そこに有る拳だいの天神エンジンを、君達の心臓と同じ位置に、押し当てて、十数えたら……アストラル・ワークス……魔法を使って魔力を送って、
と言いたいんだけど、無理だろうから……心臓マッサージをお願い……そうすれば必ず意識を取り戻すから」
「はい」
僕は必死に、思い出しながら(心臓マッサージとは、命を助けるための行為、恥ずかしがってはいけない)心臓マッサージを始める
「よし」と真弓母は、頷くなり、不敵な笑みを浮かべ「さてジョニー君、楽しま、勇気を見せてもらうわよ」
「はい」
「真弓ちゃんのエンジェルエンジンは稼働中だから、無理やり押し出す感じに……ヴァルキリーエンジンを右胸に、オッパイがつぶれるくらい、思い切り押し当てなさい!」
「ママ」
「そんな事したら」
「たっちゃう? ははは普通の親なら『へし折ってやる』なんて言うだろうけど、淫魔のあたいにとっては『よくやった』と褒めてやるから遠慮なくいってみよう」
色っぽい声と、吐息と共に、真弓の背中から、エンジェルエンジンが出てくきた
「間髪入れず魔族のエンジン、といきたいけど、さすがに聖水まみれに手じゃね……キッチンの水道水で、かるく手を洗ってきて」
「聖水って、え、聖水ってそんなに簡単にとれるん」
「人間のか学力って、凄いわよね」
驚きと疑問に、しゃくぜんとしない表情を浮かべるものの、素直に従い……手を洗っても毒気着たジョニーに
「ジョニー君、まずは右手を出して……真弓ちゃん、恥ずかしがらずママの言ったとおり、ママの真似をしなさい……ジョニー君は、とにかく動かない」
と……真弓、真弓母が、ジョニーの右手を挟むように向かい合い、それを舐め合い始めた
何かいけないことをしているようにも見えるが、あえてもう一度、彼女達が舐めているのは、ジョニーの手であると
「女に舐められ、いや、魔族に舐められとるからか、手がピリピリする」
数分後……彼女たちの唾液でしっとりした手で、オーガ・アンド・デーモンの、ツインエンジンを持つ
「もう分かるわね……今度は左胸に、オッパイがつぶれるくらい、思い切り押し当てなさい……彼氏の手舐め回して欲情したのか顔、真っ赤でしょ……きっとさっきより
色っぽい声出してくれるわよ」
正にそのとおり、色っぽい声と、吐息と共に、エンジンが左胸に吸い込まれる
「太郎君と同じように、天神エンジンを、君達の心臓と同じ位置に、押し当てて……十数えたら、ジョニー君」
「心臓マッサージや、ですね」
「何を言ってるの……真弓ちゃんは意識あるじゃない……ヒント……マタイ福音書、五-三十八……右の頬をぶたれたら」
「左も差し出しなさい……やったかな……しかし魔族の人が聖書を引用するなんて……てことは真弓ちゃんの左右のほっぺを、ビンタしたらええんやな」
「ちょっと違うわね……十数えたら、エンジンのバランスをとるため……右の乳をもんだなら左の乳ももみなさい、三往復、ということ」
救命行為をする友を尻目に、彼女の母親の目の前で、彼女に睨まれながら乳を
「これ、なんて罰ゲームですか?」
「能書きはやめて……やれ!」
そしてジョニーは、その罰ゲームを完遂し
太郎は、優子ぞ意識を取り戻させ
見えない強い衝撃波と共に新たに強力な力を身に着けた
読んでいただき、ありがとうございます。
『山田太郎たちの恋物語・Boys Meets Girls?』
第四十二部『復活と向上』
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by.メガネ君(作者)




