クリスマスダンスパーティー前夜・女性陣編
ここは、湯気と花石鹸の匂い漂う上田家自慢の大浴場……二人の女性が、明晩行われるクリスマスダンスパーティーにむけ、その球の肌に磨きをかけている
優子は、真弓に背を洗ってもらいながら、ふと、背中越しに話し出した
「真弓……私、このクリスマスパーティーで、太郎さんに、告白、しようと思うの」
優子の言葉に真弓は笑顔で彼女の正面に立つなり、つよくだきしめ、ほほを重ね
「ようやくだね、おめでとう……お姉ちゃんなら大丈夫」
「ありがとう……好きであることを告白する前に、天使であることも告白しようと思うの」
今度は一変、真弓は苛立ちすら漂わせる真顔で「はぁ?」と、力いっぱい突き飛ばし……優子を湯舟へと突き落とした
泡の浮かぶ湯舟に立った優子
「抱きしめて賛成してくれたと思ったら、突き落として」
「それはこっちの台詞、お姉ちゃんこそ何考えてんの……失敗したら、太郎が天使を認めなかったら、お姉ちゃんは消えちゃうんだよ……そんなの絶対にい嫌!」
「運命だと覚悟してる」
「はっ、運命、覚悟……出たよ、神族の、お姉ちゃんおとくいの、自虐的運命論」
「はぐらかかさないで!」
「だって、バカげてるもん……私実は天使ですって言われて、ハイ分かりましたって、普通の人間がなると思う⁈」
「ええ真弓の言うとおり、確率は低いと思うわ……だから何度も考えて……一度は、正体をばらすのはやめようとも、思ったわ」
「だったら!」
「でも無理だった……後ろめたい気持ちで告白なんてしたくないの……だからもし私が消えても、みんなとは友達でいてね」
「そんなの絶対出来ない、だからお願い、天使であることは隠して」
「それこそ出来ないわ、隠していたって、こんな事いつかはばれるわ……もう決めた事なの……わかってお願い」
魔を閉じて考える真弓、おもむろにだが、うっすらと微笑みながら口を開く
「うん……お姉ちゃん、こうなるとすごく強情だもんね……分かった」
真弓は剣を実体化させて、安心して湯船から出ようとする優子に、先端を向け、言葉をつづける
「だから、あたしと決闘をして」
「えっ⁈」
「あたしも、お姉ちゃんに負けず強情だから……魔族の流儀……力で納得させて」
そして、浴場を出て、一本道の階段の先にある扉を開け、つづら折りの階段を降り……練習場中央に立ち、スウェット姿で向き合う二人
「お姉ちゃん、力であたしにかなうと思ってるの、考え直すなら今のうちだよ」
「しつこいわよ真弓」
「うん……で、ルールは……指輪、外す?」
右手の指輪に手をかける真弓
「いいえ、ここで全力でする限り、指輪は着けたままで……あなたが私に向けた、剣で勝負よ」
真弓は、刃長八十センチの太刀……優子は、刃長五十センチ以下の脇差と、互いに日本刀を実体化させる
「へえ考えたね、それだったら振り回し続けても疲れないからね」
「ありがとう、それじゃ……はじめ!」
そう脇差を抜刀、構えた優子が、一歩踏み出した瞬間、即座に真弓は抜刀し、さやを投げ捨て、姿勢低く懐に飛び込むなり、振り下ろされる脇差を柄頭で
弾返すなり、バランスを崩した優子を壁の方へと、平手で突き飛ばし、よろめく優子を鼻で笑う
「はっ、先手必勝なんて、不意打ちすれば一撃当てれるなんて思ってた」
「ええ」
再び優子が切りかかり、縦横斜めと不規則に攻撃を繰り出すが、そのことごとくが防がれてしまい
……いつのまにやら、攻守交代とばかり真弓の連撃に、優子は防戦一方のまま壁へと追いやられ、何度も振り下ろされる太刀を防ぎながら片手で壁面を伝うようにして
、なんとか後退できている状態でありながらもまだ諦めず反撃のすきをうかがう優子に、真弓が笑いながら挑発する
「早く攻撃してこなきゃ、その脇差、叩き壊しちゃうよ」
「……」
「何とか言いなよ」
気が付けば二人は、つづら折りの階段を上っている
優子を正面に下段の真弓は、彼女のすねを狙える位置にありながらも、武器破壊に執着しているのか、脇差に攻撃を当て続けている
その変わらぬ攻防のまま……階段を何層か登っていった踊り場……優子はユーターン出来ず、踊り場の手すりの追いやられ、足を滑らせ落下してしまう
「しまっ」
「うそ!」
いくら戦っているとはいえ姉妹、大好きな姉を自分の攻撃で追い落としてしまった!
真弓は剣を捨て身をのりだし、必死に下を見るが姉の姿が見えない
「え?」
と背後から階段を駆け上がる音が
そう、優子はわざと足が滑ったふりをして、一層下の踊り場に着地し、無防備な真弓の背後をとったのだ
不意を突かれたとはいえ、真弓は横跳びをし、優子の第一撃を間一髪で避けるなり、剣を拾い、二撃目を防いだ
「動揺させるなんて、なかなか卑怯な事するんだね」
「こうでもしないと、あなたには勝てない」
「そう!」
真弓は優子をけ飛ばしたが、彼女も間一髪、転倒する寸前に手すりを掴みバランスを崩すだけにとどめた
そして、再び防戦一方で階段を上がる
「あたしの足を狙える位置に居たのに、上下入れ替えてまた階段上って……知ってる、バカと煙は高い所が好きってことわざ……お姉ちゃんバカなの」
「これも作戦よ」
「作戦、どこが、このまま行くと、リビングだよ……ちらかっやうよ、あたしは掃除しないよ」
「相変わらずね」
と言い合っている間に二人は、幅の狭い一本道の階段に
真弓は刀を自由に振り回せず、攻撃回数が激減し……そこに隙が生まれた
優子は姿勢を低くし一気に真弓の懐深く入った
真弓は、塚頭で優子の頭を狙おうとするが、一瞬戸惑い、肩に狙いを変更、振り下ろすが……そこに再び隙が生まれた
優子は脇差を後ろに投げ捨て、真弓の柄頭を両手で跳ね上げ、太刀を落させ、そのまま彼女の手首を握って押し倒し、顔の横に、落ちていた太刀を突き立てる
「これで納得してくれたかしら」
優子の表情と言葉に、真弓は深呼吸し、押し倒されて敗北した事に納得したのか、その顔から険しさが無くなり、笑みがこぼれる
「うん、良いとこまでいってたんだけどな」
「ええ確かに……でも、すぐ熱くなって冷静さをなくすのは、あなたの悪い癖よ……でも、おかげで勝てたんだけど」
「分かっちゃいるんだけどね……そうだ……正体を告白する件…………良いよ……確かにあたしも、皆にばれてしまわないか、いつもドキドキしてるもん」
「ありがとう」
「でも、やっぱり、告白が失敗してお姉ちゃんが消えた後の事考えると」
「思いつめるなんて、真弓らしくない、私まで自信無くしそう……お願い、成功するって応援して」
「うんそうだね……そうだ、お姉ちゃんだけ彼氏持ちになるなんて悔しいから、成功したら、あたしも告白する」
「ジョニーさんにでしょ」
「……えっ何で、何で分かったの!」
「そんなの見ればわかるわ」
「かなわないな、そうと決まれば気合入れておしゃれしないとね」
そうして二人は互いに何着か、候補をリビングの床に並べる
「やっぱり、お姉ちゃんも、候補に制服を入れてるんだ」
「ええ、着慣れている服が一番と思って……て、真弓その服!」
「普通の愛の告白とは違う……失敗したら自分の存在が消えちゃう……一世一代の大勝負だもん」
「でもそのドレス」
「そう、サティアから入学祝いにもらった、漆黒紅のドレス」
「真弓何度も言ってるように、サティア様と呼びなさい、あの方は」
「うん、分かってるけどサティアは、あたしにとっては妹みたいな存在で……呼び捨てでもいいっていってくれたもん」
「だからって、ちょっとは考えなさい」
「ああ、それはあたしの台詞……お姉ちゃんこそその服何考えてんの?」
「だって翼を実体化するから……あなたのドレス同様に、背中が露出してた方がいいでしょ」
「だからって、メリヤス祭で使ったメイド服はないわ」
「そうかしら?」
「うん……でもまあ考えようで、天使だって衝撃の事実も、やわらいで成功するかもね……でも、会場に着くまでは、ロングコートを着ておくこと」
「はい」
そうして……男女四人のクリスマスダンスパーティー前夜はくれていった
さあ次回は、告白……彼らの答えはいかに……それ以前に優子のメイド服姿、周囲の反応はいかに
読んでいただき、ありがとうございます。
『山田太郎たちの恋物語・Boys Meets Girls?』
第四十部『クリスマスダンスパーティー前夜・女性陣編』
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by.メガネ君(作者)




