執事食堂
鉄板焼きがメインであるためか、教室中に漂うソースの焼ける匂いに……僕は、客に交じり焼きそばを注文している自分の姿を想像して、苦笑いする
午前のメイド喫茶による話題性もてつだってってか、客の入りは上場……だが人間、もう少し来ないかと欲が出てしまう
クラスメイトが「ちょっと皆、来てくれ」と手招きする
「良い事思いついたんだが……外へ向けてる換気用の扇風機を廊下に向けるっていうのはどうだろう」
「この匂いだ、客が寄ってこないわけがない」
厄介事が嫌いな僕はすぐさま反対する
「良いアイデアだけど反対! 煙は外に出す決まりのはず」
「規約違反はヤバいよな」
「そんなの……怒られたら、謝れば済む話だ」
「確かに、そうだろうけど」
「違反だけど、やればもうかるぞ」
「だからといって」
押しては引いての平行線をいく話し合いだ
「おいおい、客無視して何しとるんや……そんなもん、晴れとるんやから扇風機なんか止めて、全部の窓開けたら済む話やろ」
一人調理をしているジョニーが、業を煮やして声を上げ、かつその言葉は全て的を射ており、正に鶴の一声
「「おお」」と声と共に僕達は扇風機を止め、教室中の窓を全開にし、それぞれの作業に戻った
再び客がながれだしてから一時間後……二人の女子生徒がやって来たがやって来た
「女子二名です」
入り口受付係の声が聞こえ、ウエイター役の僕は入口へと向かい「いらっしゃいませ」と頭を下げる
「約束どおり来たわよ」
その声に反応したジョニーが「ちとすまん」と、一時的に調理を相方に任せ、真弓の前に立ち、口を開こうとするより先に彼女が声を上げ笑いだす
「ははは、あんただけ、はっぴって……子供みたい、ははは」
「うるさいわい、気合入れるためや……それより、中で食うんか、外で食うんか?」
「もちろん中で食べるに決まってるでしょ……でも外でって……あ、笑われた腹いせに追い出すつもり⁈」
「笑われたからて、そないな事するか……他の出し物見たいのに、行列に並ぶのは嫌な、人用に……テイクアウトもしてるんや……ま、
パックに詰めとるから少し冷めとるけどな」
「で、これってもしかして、あんたのアイデア?」
「いんや」
「僕のアイデアです」
ようやく出番が来たと手を上げて二人の間に立つ僕に、優子さんが笑顔で言葉を返す
「冷めてしまうのは少し残念ですが、お客さん思いの良いアイデアだと思います」
「とりあえず、二人のテーブルは、いつもの席と同じ後方窓際や」
ジョニーが手の平で指し示し誘導していると、優子が教室の隅で放置されてる、止まっている扇風機を見て
「太郎さん、あれ換気用の扇風機ですよね、どうしたんですか?」
「そお、あれは」
「あんなん使わんと、全部の窓、全開にした方が、匂い外にも広がるやろ……電気代も節約できて、一石二鳥や」
「へえ~、良いアイデアじゃない、ずる賢いあんたの事だから、あたしはてっきり、ルール無視して、扇風機を廊下に向けて、強引に客を集めてると思ってた」
「ああ、それは気付かなかったわ……て、思いつくお前の方がずる賢いんとちゃうんか」
「何ですって!」
「まあまあ、二人とも」
そしてようやく、彼女達をテーブルに着かせる事が出来た
「ほなわいは戻るから、後は太郎、ウエイター任せた」
ジョニーが僕の肩を叩き調理場へと戻るのを見て、深呼吸した僕は、あくまでマニュアルどおりの台詞で注文をとる
「ご注文は、何になさいますか」
「あたしは、たこ焼き」
「私は、焼そばをお願いします」
「注文を確認させていただきます……たこ焼き、焼きそば、それぞれ一つづつでよろしいですね」
それぞれに視線を送るように確認する
「うん」「はい、お願いします」
「かしこまりました……少々お待ち下さい」
そして、ジョニーから料理を受け取った僕はそれを盆に乗せ二人のもとへ
「お待たせしました……熱いので、ゆっくりお召し上がりください」
「「はい……いただきます」」
と、僕が回れ右をするより早く、真弓がたこ焼きにようじを突き刺すが「えっ」声を出し顔を曇らせると……皿の上に有る全てのたこ焼きを突き刺し、更に顔を曇らせ
「ちょっとウエイターさん、これを作った調理担当……ううん、村上ジョニー君を呼んできて」
声を上げることなく軽くひきつった笑顔の真弓の前に、神妙な面持ちのジョニーが立つ
「どの様な……」
「あたし『たこ焼き』って注文したわよね……なんで『ラヂヲ焼き』(たこ焼きの、たこ無しバージョン)が出てくるの⁈」
「何で知っとるんや、てうっ」
「あんたより、物知りだからよ、バカにしてるの……て何で身構えてるの?」
「そりゃ、いつもやったら……なにタコ抜いてるの、これじゃただの焼じゃない、焼入れてほしいの……ってのがお決まりのパターンが来るやろと思て」
「しないわよそんな事、というか午前中のあたしへの仕返しだと思って、許してあげる」
「ひんまか」安堵のため息をもらすジョニーを見ながら、真弓は笑みを浮かべ言葉を付け足す
「でも……注文と違うもの出したんだから……たこ焼きの半額、あんたが出しなさいよ」
「しゃぁない……ま、全額はらえちゅうよりましか」
「分かればよろしい……でも、やっぱりお腹がすいてるから、注文良いかな」
「勿論ええで」
その言葉に「言ったわね」と言わんばかりに不敵な笑みを浮かべ
「スパゲティーのパスタ、有ったわよね……それで、焼きそば作ってくれない?」
「そないなもんどう作れば」
「簡単よ……スパゲッティ麺は、いつもどおり茹で、ザルにあけてる間に具材を塩コショウで炒めて……最後に麺と具材を炒めながらソースをかける」
「確かに麺がスパゲティー用になるだけか」
「そう……値段は焼きそばに、プラス百円で出すから……作ってくれない?」
「ええで作ったる、けど、わいにも一口くれよ」
ジョニーの言葉に、一瞬目を丸くする真弓
「ええ」
数分後『スパ焼きそば?』が完成し、真弓の前に……早速はしで一口食べる
「いただきます……うん美味しい、けどソースが濃いかな」
味は、ジョニー作のためか、とんかつソースの味が強く麺の表面は焦げているが、普通の焼きそばと違い少しもっちりとした歯ごたえが印象的だ
「そうか?」
「うん、ほら」と麺を挟み、顔を近付けてきたジョニーの口に
「うむ……て、何突っ込んでんねん」
「麺だけど、だってさっき、わいにも一口くれよ、て言ってたから」
「う、でも、これ、間接キスやぞ」
顔を真っ赤にし照れ隠し代わりに声を上げるジョニーに、つられた様に、真弓の顔も赤くなる
「だから何……間接キス程度で騒ぐなんてまだ子供ね」
「女のくせに、恥ずかしくないんかい」
「あんたのだから平気」
「え?」
「うるさい、何でもない!」
吸い込むように一気にかきこむなり
「ごちそうさま……お姉ちゃん行こう!」
と、会話もなく、強引に優子の手を引っ張り教室出入り口の会計係に代金を払い出ていってしまった
そうして『執事食堂』と、初めての『メリヤス祭』は無事終わった
読んでいただき、ありがとうございます。
『山田太郎たちの恋物語・Boys Meets Girls?』
第三十八部『執事食堂』
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by.メガネ君(作者)




