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七夕

『気付くと早いもので……』という言葉が似合うかの様に、今期末テストが無事終わり、安息に包まれる空間……そのわずかな休憩時間の後。


 学校中、全ての教室でホームルームが行われ、来週の月曜に迫った球技大会で、誰がどの競技に出るかを決めている。


 それは僕たちの教室も同様……担任が大きな文字で黒板に『バレー』『バスケットボール』『卓球』『野球』『サッカー』『ドッジボール』と種目名を書き、こちらを向いて黒板をノックする


「では皆、参加したい種目のわくに名前を書きに来なさい……ただし、人数がオーバーした種目については、ジャンケンをし、負けた者は空いてる種目に移動してもらう」


 と軽く説明し、教壇を降り窓際の椅子に座ると……それを合図に生徒達が一斉に立ち上がり、黒板へと向かう……予想通り、人気種目である『野球』『サッカー』『バスケットボール』に殺到して……黒板の前はちょっとした、ジャンケン大会の会場となっている。


 僕達四人は苦労することなく『ドッジボール』のわくに名前を書いて席に戻り

(人数がオーバーしない様に)と願いながら黒板を見ていると……運良く参加わく丁度で確定して一安心。


 その後順調に、他全ての種目が埋まり、揉め事にならなかった事に僕達以上に、担任が胸をなでおろしため息をついていた。


僕自身、運動は得意じゃないけど『イベント、大会』と言う言葉に無性に心が躍ってしまう。


 そして放課後……僕達はいつものように一路図書室へ、廊下を歩いていると、ジョニーが


「今晩、河川敷で七夕祭りあるやろ……どうするんや?」

「そういえば今日は、七月七日か……テスト勉強に集中して忘れてたよ」

「おいおい祭りの日、忘れるなんてアホやな……わいなんか気になって勉強どころやなかったで」


その言葉に真弓は笑みを浮かべ

「おめでとう、赤点補修決定ね」と彼をこばかにする

「アホ抜かせ……わいかて補修はいややさか、山はって一夜漬けぐらいはしたわ!」

その言葉に、僕は少し安心した

(さて、その山……吉と出る凶とでるか)


 そのような会話をしているうちに、僕達は図書室に到着し、先に来て座って読書をいるメガネ君先輩に

「こんにちは、メガネ君先輩」

と言い彼と対面するように座ると、メガネ君先輩は本を閉じ一呼吸おき


「こんにちは……とりあえず皆も、期末テストお疲れ!」

「あんたもね……」

「ありがとう真弓ちゃん……それでだ、今晩の七夕祭りは、どうすんだい?」

(やはり、その質問がきたか)


「まあ……少なくとも僕とジョニーは行く予定です……多分、花子もついて来ると思います」

僕達男性陣の視線が、女性陣に向けられたと同時に

「行くに決まってるでしょ、ね、お姉ちゃん」

「はい、浴衣を着て行こうと思ってます」


「優子さんの浴衣姿……楽しみにしてます」

「しかしや、真弓ちゃんの場合……馬子にも衣装になるかもな、ははは」

「ぬぁにお~~!」

相変わらずの二人のやり取りに、メガネ君先輩は笑いながら話をつづける……


「ははは……では集合時間と場所だけど……午後七時に、河川敷野球場のスコアボードの下で待ち合わせ、という事で良いかな?」

その提案に僕達は「異議無し」と頷き賛成し、あっさりと決定した。


 するとメガネ君先輩は腕時計を見て

「四時二十分か……まあし少し早いが皆、集合時間に遅れないように……これにて本日の活動を終了とする……解散!」

と言いすぐに本を棚に戻すなり、ダッシュで図書室を出て行き……僕達も、少し遅れるように図書室を出た


………そして集合場所である河川敷野球場


 僕は花子と二人、バッターボックスのバックネット裏にある、駐輪スペースに自転車を置き、スコアボードの方へと向かうと……すでにジョニーとメガネ君先輩が、楽し気に談笑している姿が見えたので、僕は少し離れた場所から声をかける

「こんばんは」

「こ、こんばんは」

「おう!」

「太郎君こんばんは……花子ちゃんもこんばんは」

と二人が僕と花子に気付き近づいてきて、それからしばらく四人で談笑をしていると


「遅れちゃってごめ~~ん、着付けに時間かかっちゃって」と下駄を鳴らしながら浴衣姿の優子と真弓が歩いてきた……「こんばんは」と口を開こうとしたその時だ、花子が僕達の間をすり抜け、二人の前に立ち

「優子お姉ちゃん綺麗、真弓お姉ちゃんも可愛い!」と彼女達の浴衣姿を褒める

(くそ……定番とはいえ言いたかった台詞を、妹にとられるとは!)

「二人とも、とても綺麗です」

「ありがとうございます」

「ありがと……花子ちゃんこそ金魚柄の浴衣、可愛いよ」と真弓がしゃがんで花子の頭を撫で、それを優子も微笑みながら見ている

(なかなか微笑ましい光景だ)

等とメガネ君先輩と見とれていると……申し訳なさそうに、ジョニーが口を開く

「馬子にも衣装なんちゅうて、すまんかった」

「分かればいいのよ」

「いや、それ以前の問題や……なんやその衣装は、ミニスカートみたいなんは!」

「はぁ? あんたこそ何時の時代の人よ、よさこいスタイルよ、動きやすくていいじゃない」

「知っとるわ、ならなぜ帯を正面で結んどるんや」

「ママが、女たるもの有事の際はすぐに脱げるようにって」

「ゆっ、有事の際ってなぁ……」


「もう、喧嘩しちゃダメ! 早くお祭り行こうよ」

花子が間に立ち、二人の手を会場の方へ、強く引っ張る

「すまん、そやな……ほな行こか!」

「花子ちゃん、ごめんね、ただあのお兄ちゃん、派手なトラの浴衣を褒めてもらえなくてすねてるだけなの」

「聞こえとるで」


そして、出店の立ち並ぶ祭り会場に入いり『どれどれ』と周りを見渡してみると……会場の中央ピッチャーマウンドに挿された杭に竹が括り付けられ、正しく『シンボルツリー』のように飾られ……その近くには短冊に願い事を書くコーナーが設けられ、子供やカップル達が楽しげに、それぞれ思い思いの願いを書いている。


その様子を見ていた真弓が嬉しそうな声で僕達を誘う。

「ねえ、あたし達も短冊に願い事、書こうよ!」

「賛成!」

手を上げ飛び跳ねる花子の側で

「花子ちゃんはともかく……わいら高校生やで……なにガキっぽい事言うとるんや?」

「ガキじゃありません、夢みる少女って言ってよね……それに、お祭りなんだからべつに良いじゃない!」

「……そやな、皆の願いっちゅうのも、気になるから一緒に書こか」

そう言いって歩いてゆく三人の背中を見てる優子が誘う


「太郎さん、私達も行きましょ」

「そうですね」

「賛成……短冊に願い事、なんて何年振りかな?」

と僕達も二人の後を追うように同じテーブルに座り、短冊を手に取り願い事を書き始める……


すると案の定、ジョニーが

「どれどれ、んと皆、どないな願い事を書いたんや……まずは真弓ちゃんから」

身を乗り出すように僕達の短冊を覗き込むジョニー、すると意外にも真弓は「どうぞ」と短冊を前に出し……そこには

「私願成就……四文字熟語? 意味は?」

「呼んで字のごとくよ……あんたなんかに、あたしの願望を知られてたまるもんですか」


そう真弓にそっぽを向かれ、彼は一瞬いやな顔を見せたが

「まあ……気をとり直して、つづいて優子ちゃんは……えっ……世界平和? ……これ、ギャグ」

「いえ……私の心からの願いです……世界平和……大切ですよね?」

彼女の言葉にジョニーはテーブルに手を着き、かるく頭お抑え「う~~ん……いや、あんさん意外と天然やったんやな」

「……?」


「つづいて花子ちゃん……いってみよか」そう言い再び気を取り直したジョニーが、花子の後ろから短冊を覗き込み

「お嫁さんになれますように……女の子っぽくってええんやないか?」

無難な褒め言葉を言いながら彼女の頭をなで……彼女も嬉しそうに

「ありがとう」と礼を言う


そしてジョニーは息を整え

「まあ……今度こそまともな短冊、頼むで太郎」と彼は、僕の短冊を見るなり両手をテーブルに着き……引きつった笑顔をむけ

「はは……無病息災って……おっさんかい!」

「仕方ないだろ……これしか思いつかなかったんだから……ジョニーこそ何て書いたんだ!」

「そうよ! そうよ!」

「ふふふ……わいの短冊は……最後に発表したる!」


不敵な笑みを浮かべ………心気一転、彼はうれしそうな顔をし

「さあ! メガネ君先輩、期待してますよ~~!」

「いや~~失敗した、願望ではなく欲望を書いてしまったよ」

「いやいや、似たようなもんですって……って……童貞卒業……流石です先輩!」

「はは……照れるな~~………で最後に、君の願い事は?」


その言葉で、仕返しとばかりに僕達の視線がジョニーにそそがれた

「わいの願い事は……これや!」

ジョニーは自信満々に短冊を突き出した……がしかし、それを見た真弓が声を上げ笑い出す

「はははは、彼女募集って……人の事散々けなしといて、自分は……それにそんな願い、叶うと思ってんの?」

「べっ……べつに、夢みさせてもろてもええやろ!」

「はは……確かに願うのは自由だし……叶わないからこそ願いなんだからね」


いつものように二人が睨み合ってるので、僕は二人の間へ仲裁に入る

「まあまあ……それより、早く出店巡りに行こうよ」

「仕方ないか」

と二人は揃ってため息をつき、事態が落ち着いたところで僕達は屋台の立ち並ぶメイン通りへと歩き出した。


散策しながら歩いていると、花子が屋台を指差し僕の腕を引っ張る

「ねえねえお兄ちゃん、リンゴ飴買ってよ!」

「良いけど、帰ったらちゃんと歯を磨けよ」

「は~~い」

と元気に手を上げ、足取り軽くリンゴ飴屋台に向かっている彼女を見ていた真弓が

「あたしも買おうっと!」

と歩き出し、それにつられるように優子も

「じゃあ、私も……」と歩き出した……。


そして女子全員が近くのベンチに仲良く座りリンゴ飴をなめ赤くなった舌を見せ合い笑っている……なんともいえない光景だ

「ほなわいらも、なんか食べよか……そこに在るカキ氷なんてどないや?」

とジョニーは向かい側にあるカキ氷屋台を指差した

「ゆっくり食べたり、かきこんだり、花子達のペースに合わせることが出来て良いね」

と頷き、僕達男性陣はカキ氷屋台に向かい……

僕はセオリーに『イチゴ』、ジョニーはかっこよく『ブルーハワイ』、メガネ君先輩は渋く『宇治金時』を注文し……ほとんど待つことなく受け取り……花子達の側で食べ始めた……


僕がカキ氷をつついていると隣に居るジョニーが少し難しそうな顔で呟いた


「なあイチゴ、レモン、メロンとかは分かるけんやど……ブルーハワイって何の果物? 何味?」

「……ぶっ、ブルーハワイ味、かな?」

「まあ、そうなるわな……ブルーハワイについて知っとる人おらへんか?」

だれも言い出せない中、メガネ君先輩が自慢げな顔で、ずれためがねを直しながら得意げに


「とある『漫画』という書物にこんな記述ある……ブルーハワイ、その名の由来は同名のカクテルで同じ色をしており……そのカクテルも映画のブルーハワイを意識したものらしい……と」

「おお、流石先輩」

「いやいや……」

と、雑談をしているうちに僕達は全員食べ終え、顔を見合わせる……。


「ほな次は、くじ引き屋台へいこか?」

とジョニーの提案を受け、僕達はすぐにくじ引き屋台へと向かった……。

(しかし、語根東西どうしてこの類の屋台には、こう『目付きの鋭いオニイサン』が、つまようじをくわえ股を開き座って居るのだろう?)


そう思いながら僕達はくじを引く……結果、僕と優子は小さな水鉄砲を……メガネ先輩はクソゲー詰め合わせを……ジョニーと真弓は、お馴染みの形抜きチャレンジ!


二人は屋台の側に有る特設テーブルに行き、地元の子供達に混じり形抜きを始め……僕達は彼等の邪魔にならないよう、少し離れた場所で見守ることにした

ちなみに二人の選んだ絵柄は……

「あんた、なんてモノ選んでんのよ! 丸に矢印って……」

「わいは男や、オスの記号(♂)選んで何が悪い! ……真弓ちゃんこそ難しそうな猫の絵柄、選んどるやんか」

「いいじゃない! あたし猫好きなんだもん」

そう言い合いながら二人は端のほうから削っていく持久戦をとっている……


五分後……ジョニーはもう少しのところ、矢印の先端をミスし反射的に股間を押さえ、釣られて僕とメガネ君先輩も股間を押さえてしまう……それを見て真弓は笑い

集中力を切らしてしまったか、同じく彼女もあと一歩のところ、尻尾の部分をミスし……二人とも落ち込んでしまった。


なにか二人を元気付ける良い手はないか……焦り考えている僕にメガネ君先輩が

「いや~~むしょうにたこ焼きが食べたくなってきたな~~……そうだ太郎君、僕が全員の分おごるから買って来てくれないかな? そのうち二つは得盛りでね」

とさりげなく助け舟を出してくれたので……僕はすぐに乗る返事をした

「はい、すぐに行って来ます」

「頼んだよ」


そして全員に一艘ずつたこ焼きを渡し……二人の顔に笑顔が戻った事に安心して、僕も食べ始める

ふたを開けると立ち上る、なんともいえないこの匂い……と余韻に浸っている僕の隣でメガネ君先輩が、花子に

「花子ちゃん、たこ焼き、僕の方がアツアツホクホクだから交換しよう」

「でもわたし半分以上食べちゃったよ……いいの?」

「いいよ、いいよ気にしない」

「わ~~い、ありがとう」


メガネ君先輩って、顔に似合わず良い人かも? お礼言わなくちゃ……

と僕が彼の肩に手を伸ばしたとき


「萌え~~」


その言葉に、はっとして改めてメガネ君先輩を見ると……彼は目を細めなぜか嬉しそうな顔で、熱いたこ焼きを頬張り忙しく口を動かしている花子を見詰めている


(あの~~メガネ君先輩……メガネ……はぁ~~やはり分からない人だ)


ため息をついたその時、腹に響く低音が!

川原の向こう岸で一発の打ち上げ花火が上がった

花火の音に誘われ僕達六人は、祭り会場の河川敷野球場を抜け川沿いに着くと、タイミング良く再び打ち上げ花火が数発撃ち上がる

(なんともしょぼい……まあ、幾つかの町内会融資の、花火大会なんだから仕方ないか)


……とまあ、ぐだぐだの内に祭りは終わり……締めくくりに、会場中央に立ててある竹を燃やし『お笹焼き』をした

僕達はその火の前で目をつぶる……けして煙が目にしみたからではなく……ただ、静かに祈る為に目を閉じる。



僕達は目を閉じ願う………皆の願いが届き、幸せになりますようにと………。

読んでいただき、ありがとうございます。

『山田太郎たちの恋物語・Boys Meets Girls?』

第二十七部『七夕』

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by.メガネ君(作者)

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