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彼女達の事情(その一)(優子)

 夕焼け色に染まる静かな川原の堤防で『はじめて会った』太郎さん達と、別れてからしばらく歩いた、私と真弓は今……。

 一足遅い夕食の買い物客や、帰宅中の学生・サラリーマン達で賑わう、駅前商店街の中を二人で散策するように歩いています。


……ふと精肉店の横を通りがかった時、ただよう香辛料の匂いに真弓のお腹が鳴る。

「お姉ちゃん」

「また? 相変わらず食いしん坊ね……夕食前だから一本だけよ」

「ありがとう」

 と言うなり真弓は精肉店へ駆け込み……数分後……ラム肉の串焼き(紙袋に入ってる)を買って戻ってくるなり

「食べて良い?」と、生唾を飲み込みながら質問してくる。

(良いと言ってあげたい、けど)

「ここじゃダメ……人通りの少ない路地裏なら」


「じゃあ行こう」

 真弓はぐいぐいと私の手を引っ張り……街灯の無い路地裏へと入っていき……待ってましたとばかり、串焼きにかぶるりついた彼女は……ふと、横に目をやるなり指さし『もごもご』とうったえかける。

(まったく、元気というか少し強引というか)


「食べ物をくわえたまま、しゃべらない」

「ごめん……」

一気に食べきった真弓は、串を紙袋に入れ鞄に詰める。

「お姉ちゃん、今日もこのビルの屋上にしようよ」

「ええ」


 それは、ひっそりとたたずむように建っている、せの高い雑居ビル……入り口の柱に取り付けられている案内板を見ると……どうやらこのビルは六階建てで、その殆んどが空き店舗のようで……中は薄暗く、不気味ささえ感じてしまいます。


 しかし、この様に人気が無いという条件が、今から私達がしようとする事にとっては、むしろ好都合なのです。


 と解説している間に、スキップしながら建物の中へ入る真弓。

慌てて追いかけ……屋上まで続く薄暗い階段の前。

まだ四月なのに、どこかかび臭く湿ったた空気……そんなのお構いなしに、楽しげな声で真弓が天井を指さいながら、私を誘ってきます

「お姉ちゃん、競争しよ、どっちが先に屋上にゴールするか!」


(真弓、あなたって、つくずく元気な子ね……)

私は微笑み、快く頷き


「いいわよ……でもね、まゆ」「よーいドン!」

 と、真弓は私の言葉を最期まで聞かずに、コンクリートの床を蹴り猛ダッシュ!


 階段を三段抜かしで駆け上って行き……十数段先の踊り場を、手すりの丸い柱を片手で掴むと、遠心力を利用して、一気に曲がって行く、その時!

スカートが激しくひるがえり……その隙間からちらりと黒いレースが(下着が)……。

(つくづく真弓には、もう少し? 女の子として、恥じらいというものを持ってほしいものです)

 先の真弓のこともあってか、私はスカートがひるがえりすぎないよう手でおさえ、早足で屋上へと上がることにしました。


 所変わって、ここは人気のない雑居ビルの屋上。

苔むしたコンクリートの上に立つ錆びた物干し台、乾いた土にひびの入った植木鉢……それら『言葉を持たぬ役者達』がその場の空気、物悲しさを一層強く感じさせている。

その(屋上)中央には、腕組をし、イライラと片足でリズムをとり、非常口のドアを見つめ……私が階段を上がりきるのを「未だ遅し」と待っている真弓の姿が。


 数十秒後……ドアを開け

「ごめんなさい」

と屋上に出た私に、少しすね声と表情で真弓が、駆け寄ってきた。

「お姉ちゃん。やる気あるの? 階段上るの遅すぎ」


「ごめんなさい、でも真弓、何度言えば分かるの? あなたも女の子なんだから、階段をあんな大股開きで三段抜かしして駆け上がっちゃダメでしょ?」

と謝りながらも、刺激しないよう彼女を優しくたしなめます……。

(はぁ、いったい、いつになれば分かってくれるのか心配です)


「耳にタコ!」

 案の定、いつものように私の言葉を一言でかるく受け流した真弓は、愛想笑いを浮かべ、半ば強引に話題を終わらせると、軽やかな足取りで屋上中央の少しひらけた場所に移動するなり、私の方に振り返り

「……て、お姉ちゃん早くこっちに来て、帰ろうよ」と手招きします。


 私が近付いてきたのを確認した真弓は、胸のペンダントを外し、それを困った顔で見つめると、息混じりに愚痴をもらす。

「毎度、厄介だよね~。あたしの場合、お姉ちゃん達と違って、いちいち道具を使わなきゃゲート開けないんだもん」


私は真弓と向かい合うように立ち、彼女の肩を撫で

「たしかに、気持ちは分かるけど、昔からの決まりなんだから仕方ないでしょ……それと、ゲート展開いつでもいいわよ」

「うん」


 ため息交じりに頷いた真弓は、右手でペンダントを握りしめ、左手を私の胸にあて、目を閉じて呪文の詠唱を始めた。


「我、光と闇の間に生まれし者……開けヘブンズゲート、我ら二人を望みし地へといざなえ」


 唱え終え目を開けると、足元に空間転移の魔方陣が浮かび上がり、光の幕が私達を包んでいきます…………。


あっ……言い忘れてましたが、私達は、人間じゃありません!


 突然のカミングアウトに驚かれた方の為。

天上界の我が家に転移するまでの僅かな間ですが、簡単な自己紹介をしたいと思います。



 私の名前は、上田優子

リリジョン高校、宗教科の一年生……平凡で奥手な天人の父と、美神アフロデーィーテの母との間に。天使として生まれました。

(こんな父のどこに母は魅力を感じ、結ばれたのか未だに謎です)


 続けて妹の名前は、上田真弓

同じ高校の同級生で、とても明るく活発な子……私達は腹違いの姉妹で、実は……彼女のお母さんは……魔族のサキュバスです。

母が私を妊娠したとき父が「祝酒だ」と、酒神バッカスの店で泥酔して……どうやって行けたのか?

魔界にある大人のお店で淫魔サキュバスと……その……ちぎりを交わし……真弓が産まれ……。

あの時は『二世界の関係性』などニュースになったり。両親が神王様、王様に呼び出されたりと、とても大変な、まさしく天地がひっくり返るような、事になったらしく…………。

 と……まあ、彼女は天魔のハーフで肌の色は魔族の特性をひいてる証で、彼女の自慢の一つです。



 などと言っている間に、天上界と地上界(人間界)を繋ぐ『ヘブンズゲート神殿』広い石床の中央に刻まれた、大きな転送魔方陣の上に転移(到着)しました。

今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

『山田太郎たちの恋物語・Boys Meets Girls?』

第三部『彼女達の事情(優子)』

楽しんでいただけましたか? もし気に入っていたたけたら是非

ブックマーク ・ ☆一つでも良いので、評価をいただけると……

とてもうれしく、日々の励みとなります。

どうぞこれからも(第四部も)、よろしくお願いします。


by.上田優子(ヒロイン)

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