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遠足・天道寺動物園編(その二)

 目的地が決まった僕達の足取りは自然と速くなり……すぐに『鳥の楽園』二重のドアを開け中に入ると……『楽園』と名を打っているだけあり、南国風で、しっかりと空調がされて……少し熱いくらいだった。


 たくさんの鳥の鳴き声が響き……一瞬暗くなる視界に顔を上げると、頭上を、大きくカラフルな南国の鳥(サンショクキムネオオハシ)が飛んでいた………迫力に驚いていると。


「おったおった!」


 嬉しそうに声を上げ、フラミンゴのエリアへ駆けて行くジョニーに『仕方ないやつだな』と顔を見合わせた僕達は、彼の後について行く。


「きれい」真弓の口からもれる言葉にうなずく。


 フラミンゴエリアの前……看板に幾つかストップウォッチ掛けられていて……看板には

「なになに『フラミンゴみたいに、君も片足立ちに挑戦だ』て下の表、人の年齢と平均タイムだけで、一番大事なフラミンゴの平均タイム書いてないやんけ」


 悔しがるジョニーへ、僕はストップウォッチを片手に、わざと質問してみた

「なら辞める?」

「辞めるやて、誰が言うてん。やるに決まっとるやろ……太郎、そのストップウォッチで計測頼むで。ほな用意……スタート!」


 ジョニーのついで、僕も片足立ち計測開始…………一分経過。


(まだ余裕……優子さん達は何してるんだろう)

周りを見回したが……彼女達の姿はない……

(僕達の勇姿、見てほしかった)

などと少し残念がっている間にも十五秒が経過した。


(て、ヤバ!)

気を抜いたせいで足首に力、バランスが!

「くそ」

両足をついてしまった……タイムは?

まだ側で頑張っているジョニーの為、ストップボタンを押さずに画面を見る……

一分三十秒……二十歳前後の平均が九十三だから……くそ平均以下か!


あとは、ジョニーだ……しかし結構粘るな……でも少しふらついている……そろそろか、とほくそ笑んでいると……



「うっ」

短い声とともに、彼はバランスを崩し前のめりになり、両足を地につけてしまった!、と、すかさず僕もしトップウォッチのボタンを押す!


気になる彼のタイムは……そう視線を画面に傾けようとした時!

「タイムはどないや⁈」

よほど気になっていたのか、起き上がるより先に質問してきたジョニー。


「あっ……一分四十五秒……充分平均以上だ」

計測タイムを聞くなり彼は『ふん』と満足そうに笑みを浮かべ上体を起こし……どや顔と、してやったりと言わん口調で








「聞いたか真弓ちゃん。百五秒や! このわいに勝てるか⁈ ……て、おらんやんけ、どこいったんや!」

渋い顔で悔しがり周囲を見回すジョニーに……僕も(どこへ行ったんだ)と首をひねったとき。


「美味しいね、お姉ちゃん」

 楽しげな真弓の声に後ろ向くと、ヤシの木の向こう。

屋台の前で、南国風パラソルがついた丸いテーブルに向かい合って座る彼女たちは……小さな傘のついた、なんともトロピカルなグラスに、ストローを挿して飲んでいる


「あっ」

「おった……って、なにうまそうなジュースなんて飲みやんねん!」


駆け寄るなり声を上げるジョニーに……真弓は軽くせきこむが、すぐ

「えっなに。これ? ヤシの実ジュース……あんたも飲みたい?」

と、なにくわぬ顔で返事をし、ストローを向ける。


(これで飲んだら、間接キスだ)理解したのか、慌てるジョニー。


「いらんわ! ワイが言いたいのはな『勝手な行動すんな』ってことや」


「それ……フラミンゴコーナーへ勝手に走っていたあんたに、だけは、言われたくないわ」

思い出しうなづく僕を見て、反論できないジョニーに得意げな真弓。


 するとそんな彼女の向かい側に座っている優子が、立ちあがり軽く頭を下げ

「すいません。お誘いしようとはしたのですが。とても真剣な表情で片足立ちされてたので」








 あまりに申し訳なさそうにうつむく優子さんに『やりすぎた』と僕は少しい伊豆らさを感じ

「いやそんな謝らなくても。僕は別に気にしてません。けど。ただ」


 そんなやり取りをしているそばでは……例のごとくジョニーが真弓さんに絡んでいる。

「どや! 片足立ち百五秒や、凄いやろ!」


自慢げに片足立ちするジョニーに、一瞬驚いた彼女だが。

「それだけ……あたしなら五分くらい余裕だけど」


 鼻で笑いかえすなり、僕達の眼前で見事なワイ字バランスを披露する。

「嘘ぬかせ! そんな綺麗なフォーム。五分以上ももつわけないやろ……なあ⁈」


「真弓なら出来ますよ……ほぼ毎日下の広間で一緒にトレーニングしているので」


あっさり答える優子の証言に、ジョニーが黙る。

(信じがたいけど……真弓さんが五分間片足立ち出来るのは本当のようだ)









「う~ん、そうか『ならやってもらおうやんか』て、文句言いたいのは山々やけど……昼ちかいし、オタロードも行きたいから、大目に見たるわ」

「ありがと」

鼻で笑うように感謝する真弓。


「その代わり、昼までに草食動物エリア回りきるから、気合入れてついて来いよ」

「はいはい」


(ジョニー、やけに『オタロド行き』にこだわるな。ネットで画像見たけどあの街って、真弓さん嫌がりそう……そんなに行き、いや、逝き急ぎたいのか? まあ、僕自身は興味があるから、協力するけど……時間は)







「賛成……正午まであと半時間くらいしかないので……次に行く所で、草食動物エリア終わります。優子さん、どの動物がいいですか?」


「はい。時間が相手ではいた仕方ありませんね……ではこう、ゾウ、キリン、ラクダ等の前を通過しながら大回りに……サル山まで」と、マップを指でなぞる


「なるほど、分かりました。早速行きましょう」

(意外だな最後はキリンやゾウみたいな大型動物で、と思ってたけど……サルで締めくくるとは)

心の中で異をとなえるが、笑顔で彼女の意見に賛成する。



「お姉ちゃん、おサルさんならここにも居るよ……ほら、金髪の喋るキンシコウ」

「ウッキー! て、なに言わすんや、わいは人間や」

「え、そうなの⁈」


 ポーズまできめてつっこむジョニーに、わざと驚く真弓に一同大笑い。

すると……心なしか、周りの通行人からも少し笑い声が聞こえた。


 そして彼女達がジュースを飲み終えるまで、僕達もアイスコーヒーを飲むなど一息つき『鳥の楽園』を後にして…………。






雑談『いずれ詳しく書く予定』

をしながら、ゾウや、キリンや、ラクダ等を横目で楽しみながら………一路サル山へ。



 そして……サル山の前に到着。

『キーキー』と予想以上にうるさく甲高い鳴き声。

(むしろそこが『サル山らしくて』いい)


『サル山』

 コンクリートでつくられた山を中心とし、さくで囲まれた、直径三十メートルはあろうかという広いすりばち状の穴で……

 その名のにふさわしく、幾十幾匹ものサル達が……甲高い鳴き声を上げながら自由ほんぽうな姿で戯れている。


「おサルさん達……楽しそうですね」

「そうだね……あそこ。湯気立ってるところ温泉なのかな。気持ち良さそうに浸かってる」


「ジョニー『大阪は心のふる里』なんでしょ……ほらあそこ。お友達の、おサル達がおいでおいでってしてる。……あたし達にかまわず、里帰りしたらどう?」

「せやな~て、まだサルネタ引っ張る気かい! ……それにサルはおいでおいでってやっとらへん……『エサ売店で買った』その右手に持っとるバナナはなんや?」

「はは、ばれたか」


 苦笑いする真弓……その間にも、サル達のエサを催促する拍手は早くなっていく。

(うむ)

 なんともやるせない気持ちにな、り僕はため息混じりに

「ほら看板に『石を投げ込まないで』とは書いてる下に『餌は遠慮なく与えてください(園の餌代の為にも)』ってちょっとせこい事書かれてるんだから……そのバナナ早く投げてあげなよ」










「そうね……だったら」

と真弓はすぐに、側に設置しているサルの餌販売機でバナナを数本買い………それをサル達が争わぬよう、適当にちぎって広範囲にばら撒いた。


真弓さん……意外と優しいところあるんだ

感心しその事を優子に伝えようと彼女の方に顔を向けた。


……?


「優子さん、固まってそんな驚いた顔して、どうしたんですか?」

「あの……岩場の影でしゃがんでるおサルさん……先程からこちらを見て、ナニをしているのでしょう?」

「ナニって……下腹部に手をあて……その手を激しく動かし、って!!」

やばい!早くサル山から離れないと


と、口を開きかけた時!


「やっだ、あのおサルさん盛ってる~いやらしい~」

「ほんまや……こっち見とるって事は……優子ちゃん、真弓ちゃん、どっちに盛ったんや?」

ジョニーが笑いながら言ったその言葉に『はっ』と目を丸くした真弓は


「だめ!お姉ちゃんが汚される……お姉ちゃんこっち来て!」

と姉の手を強引に引っ張った……事態を飲み込めない優子は妹にされるがまま、サル山から離れていく


これで一件落着……残念だったね、エッチなおサルさん……ともう一度、視線をおサルに向けて驚いた!


まだおサルは手を止めてはいなかった……いや、むしろ先程より激しくなっている…………そして視線も変わず、こちらをじっと見ている……そう、こちらを……って……こちら?

ジョニー、優子さん、真弓さんの三人はここから離れ売店コーナーに向かって、サルからは見えない……ということは……。


僕は恐る恐る、震える指先で自分を指してみた。

『ウキーー!』




ウキーーって………う~~ん、僕はどうしたら……と、幸いこのおサルと僕意外、誰もこの真実を知らない……だからこの事は……………ノーカウント!見なかった!存在しなかった!…………悪夢としておこう、そうしよう。

そう、僕は心いつ良き念じながら………精一杯、何もなかったと作り笑いを浮かべて皆のもとヘ駆け出した。

「お待たせ」

「しかしさっきのおサル……なんだったのかしら?」


忘れかけてた悪夢が脳裏に!


「ほんま~~!なんやったんやろ~~な~~!」

「いきなり大声出さないで……それに太郎君、関西弁になってるわよ……何かあったの?」

真弓さんが不思議そうな顔で僕を見ている………やばい!


「何もなかったよ……な、ジョニー」

「何でわいにきく?……そないな事より」

「皆さん、そろそろお昼にしませんか?」

と、ジョニーと優子さんが、口を合わせる様にして話題をそらし、変えてくれた……間一髪、助かった。

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