遠足・天道寺動物園編(その一)
動物園サルコーナー、性的描写が含まれます、気にされる方は飛ばして下さい
後半ライオンイベントの後、ジョニーの決め台詞にも、少し含まれます
飾りっ気がなく、シンプルでいて重厚感の在るレンガ造りの出入り口ゲートは、僕達が産まれるよりずっと前からここに在る、といった歴史を感じさせる。
(この感動を共有したい)
思いにひたる僕の横でジョニーが声を上げる。
「真弓ちゃん、さっき買うたポップコーンどないしたんや⁈」
「え」
目をやると確かに彼女の手からポップコーンは消えていた。
「容器はどうしたんや、もしかして食べたんか⁈」
「そ、そんなわけないでしょ。ちゃんと途中のゴミ箱に捨てたわよ」
「ポイ捨てせんええ子や……て、あんだけあったんやぞ」
「あれくらい、簡単に食べきれるわよ……育ち盛りなんだから」
その言葉に、ジョニーは真弓の胸を見る。
「育ち盛りね……て言うより真弓ちゃんの場合『あほの大食い』」
「喧嘩売ってんの⁈ まあいいわ。それよりここでしょ。早く行こ」
われ先に行く真弓についていき……出入り口ゲート近くのチケット売り場。
と立ち止まった真弓が、なにやら困った顔で料金表をみている……妙に心配になり声をかける。
「もしかして入園料、高いの? ……一人、五千円とか?」
「ううん五百円」
「安! ……じゃあ他に何悩んでんの?」
「バカの入園料が書かれてないなって」
するとそこに、案の定
「バカってそれ自分の事か?」
「あれ?あんたいつから、大阪風軍人口調になったの?」
「は『大阪風軍人』? 何言っとるんや、大丈夫か?」
少し考え『あ』と手をたたく僕の思考を代弁する真弓。
「だって軍人さんって、自分自身を『自分』って言うでしょ。つまりジョニー、あんたが自分ていったんだから」
「おお、なるほどな」
ジョニーの声が低くなる。
(やばい喧嘩になる! 仲裁に入るか、チケット買って強引に解決)
悩み始めると同時に、優子が二人の間に割って入り、チッケトをちらつかせる。
「はい学生四枚、チケット買って来ました」
「おおきに」
「さすがお姉ちゃん」
「ありがとうございます」
(あれ。でもいつの間に……詮索はやめておこう。とりあえず喧嘩にならなくて良かった)
「ほな行こか!」
「(あたしが行きたいって行った場所なのに)あんたが仕切るな」
ジョニーを先頭にスネル真弓。ゲートヘ近づくにつれ微かに聞こえて来る様々な動物の鳴き声に、年がいもなく無性に高まる期待を胸に、ゲートをくぐり抜けると……目の前には中央広場が
(とにかく広い……)
『どこから回ろう』など発言に困り見回していると、優子が無料配布されてる園内マップを人数分持ってきてくれた。
「どうぞ」
「ありがとうございます」「おうきに」「お姉ちゃん、ありがとう」
「……で、ここが今私達の居る中央広場で……ゲートを背に右側が、草食動物エリア……左側が、肉食動物エリア……そして、それを分けるように正面の、食堂や土産等が並ぶ販売エリアとなっています」
身振り手振りで説明する優子に一同うなずく。
「分かりやすい説明ありがとう」
「ほな、最初はどこ行こか?」
ジョニーの一言で再び、本題に戻るなり真弓が手を上げた。
「はいはい! あたしはライオンや虎の肉食動物エリアだけ見れたら満足だけど……それじゃあ可愛いもの好きのお姉ちゃんがかわいそう……だからまずは草食動物エリアから」
姉を想う真弓の言葉に優子の顔に笑みがこぼれ、場が和んだ……けど、さらに笑わせようと僕は真弓の言葉から、ふと思い浮かんだジョークを口にしてみた。
「その順番、まるでコース料理みたいだね……まずは前菜、サラダ代わりに草食動物……そしてお楽しみの……メインディッシュである肉食動物とか」
その言葉に表情を暗くし下を向く優子……場の空気がおもくなり……
「山田くん!」
諭す様な強い口調で僕の名を呼ぶジョニーに、瞬間理解した。
(まずい事を言ってしまった)
事実『動物とは他の命を糧として生きている』とはいえ……僕たちが生きていく為失われた命を軽々しくジョークにしてしまった。
「ごめん……」
急いで謝ったけど『排水盆に帰らず』言葉はから回るだけで、場の空気はいっこうに変わらない。
(どうしよう)
「ん……分かったんなら、もうそんな笑えん言葉ほざくなよ」
頷く僕。
さらに重くなる空気に耐えられなくなった真弓は『パチン』を大きく手をたたき、場をリセットし、笑顔で優子の肩をゆすり
「ねえ、そんなさむいギャグに辛気臭い顔してないで………早く行こうよ」
と強引に彼女の手を引っ張り……僕達は一路『草食動物エリア』へ向かった……。
ここは『ウサギさん触れ合いコーナー』……公園の砂場より広い策の中、幾種類ものウサギが自由に跳び回り、餌をほうばっている。
「よしよし」
優子が一匹のウサギを胸に優しく抱きかかえ……耳に触れぬよう、頭を優しくなでながら……側にいる僕に話しかけてきた。
「ウサギって本当に可愛いですね」
気付けば、彼女の表情はいつもの優しい顔に戻っている。
(恐るべし『小動物の癒しパワー』ウサギさんグッショブ『たしかに可愛い』……だからといって女子の胸に顔を埋めやがって……ちょっと羨ましいぞ! ……いや落ち着け、仮にも恩がある(小動物)相手……ここは大人の対応で)
僕は一呼吸おいて、優子が抱いてるウサギに手を伸ばし
「優子さん、僕も撫でていいですか?」
「もちろん、でも、おなか、しっぽ、はさけてあげて下さい」
「はい」
感謝の気持ちをこめ、撫でようと伸ばす手の陰に警戒したのか、不意にウサギが僕の方を向いては、しきりに鼻と口を動かしている……すると。
『邪魔するな』
(え、声⁈)……そう、なぜかそのウサギから声が聞こえ。一瞬金縛りになる僕に声はつづけて
『へへへ、羨ましいだろチェリーボーイ』
と……あきらかに僕を馬鹿にしている。そんな気がした。
(いやいや、気のせいだろう)
『感謝と恨み』複雑な感情に震える手で、ウサギ(そいつ)の背をやさしく撫でてやった。
(柔らかくて暖かい)
あらためて周りを見回すと……僕から少し離れた場所でジョニーと真弓が、なにやら楽しげに話しているので寄ってみると……。
「ウサギ、ちゅえば……小学校の頃、歌ったやろ『う~さ~ぎ~お~いし』て」
「古里……歌った歌った。懐かしいな」
(ああ、もう既にベタな会話が出そうな予感が……と案の定ジョニーが)
「『う~さ~ぎ~お~いし』て部分……ベタやけどわいもアレ『ウサギ美味しい』て思っとってん」
「ははは、あたしもお姉ちゃんに言われるまで思ってた……でもさ改めて本物見てると。確かにウサギって、美味しそうよね。こう、柔らかくて、まるまるしてて……ねえウサギさん君達って美味しいの?」
(おいおい真弓ちゃん。その話題で被害者になるウサギに質問しちゃダメだろ)
「プルプル震えて可愛い……ねえ答えて美味しいの」
(あれ気のせいか? 真弓さんの目、ウサギみたいに赤くないか……って、そのウサギ……たぶん今、本気でびびってるよ)
『ゴクリ』とつばを飲む真弓に僕は、いてもたってもいられず助け船を求める
(また厄介な事になりそう。こんな時こそ優子さんの出番……て駄目だ、彼女もウサギに夢中だ(癒されタイム))
『こうなったら』と悟った僕は、思い切って声をかける。
「真弓さん。楽しんでるところ悪いんだけど、そろそろ次の場所『肉食動物エリア』とかに行かない?」
と真弓とジョニーの会話を終わらせた。
「そやな……他にも動物おるよて」
「そうね……って、お姉ちゃ~ん、次行くよ」
真弓に呼ばれた彼女は、抱いていたウサギをゆっくりと放し……離れたのを確認し、少し大きな声で
「は~い」
返事をするなり、ウサギを放し『またね』と手を振って別れを告げると、立ちあがり駆け足で来てくれた。
……そして、ジョニーに先導され。僕達が向かった場所は……。
「ほな、あそこにある『鳥の楽園』行くで~あそこにはな、フラミンゴがおるんや」
とジョニーは片足立ちで、前方、木々の間から見えるドーム状の施設を指差した。
読んでいただき、ありがとうございます。
『山田太郎たちの恋物語・Boys Meets Girls?』
第十六部『遠足・天道寺動物園編』
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by.メガネ君(作者)




