こんな所に『爆弾』が!
今。僕達は通天閣を背に『新世界本通り』を天道寺動物園に向かって歩いている。
(ああ、動物園なんて何年ぶりだろう……確か最後に行ったのは中学二年の時、家族で行った地元の遊園地におまけ程度についていた『可愛い動物ふれあいコーナー』くらいだ……でもあの時のウサギと戯れる花子。かわいかったな……でも草食の小さな動物しかいなくて、僕は退屈だった……けど今から行く動物園にはもちろん居るんだろうな、ライオンとか象とか……こう、かっこいいのが……今から楽しみだ)
「静かですね」
不意に側で呟く優子の声に、動物園の事ばかり考えぼおうっと歩いていた僕は、とっさに「ごめん」と謝り周囲を見回した。
たしかに……通天閣に登る前に通ってきた人と活気であふれている『通天閣本通り』とは違い、ここ『新世界本通り』は人通りは少なく、確かに静か。だからか、少ししさびしくも感じる………。
「ははは……けどこんな雰囲気も落ち着いた感じでええやろ」
「そうね、良い感じ」
全員足を止め、再び回りを見回すと……『歌舞』『??劇場』と書かれた看板が見える。
推測するに………なるほど、ここは大衆劇場が在り、昭和レトロな雰囲気漂う『渋い大人の町』なのか、そう『オトナの』と進行方向の少し先を見た僕は、目を丸し、声を上げかけた口を押さえ……心で叫んだ!
(ポポポポポポポポ……ポルノ映画館だと!)
レンタルビデオ屋のアダルトコーナーのカーテンすら、恥ずかしくて直視出来ないチェリーな僕には……その映画館のポスターは危険物『爆弾』……加えて今……女の子と居るこの現状はまさに『この先地雷原』といえる!
真弓さんなら、笑いごとに変えてくれそう(大丈夫)だろう。
だけど、保健体育(性教育)の教科書にある挿絵にすら赤面したり『わざとだろ』と言いたくなるほど純情、乙女な、優子さんがこんなポスターなんか見たら……間違い無くパニックになり、さいあく僕は嫌われる。
(そんなの嫌だ! ……て、おい嘘だろ⁈)
『悪いことは重なるもの』で、起爆装置たりうるジョニーがその爆弾に向かって歩き出した……まさに歩数イコール、カウントダウン。
(ひっじょうにマズイ)
意識するあまりポスターを凝視してたのか、それに気づいた起爆装置……否……ジョニーがニヤニヤと話しかけてきた。
「太郎、なに口押さえとんのや?」
「いや……ちょっとあくびを!」
「ワイの勘違いか……なんか驚いとるようにみえてんけどな」
答えにつまり視線をそらした先に……助け船
「ほらそこ大衆演劇場……いや初めて見たよ、こんなの地元に無いから……三色(黒、柿、緑)歌舞伎の幕みたいなデザインが何とも言えないなよ」
「はい、私も大衆演劇場を見るのは初めてです」
彼女の視線をそらす事に成功して安心する僕と、悔しそうなジョニー。
しかし諦めないのか、数秒後、何かひらめいたジョニーは『ニヤリ』と不敵な笑みを浮かべる。
(おい起爆装置ジョニー……お前はそんなにも、地雷を踏みたいのか⁈)
「そやな珍しいな……しかし珍しいと言えば、他にもあるで」
「何ですか?」
「たとえば……あそこのポ」
「ポップコーン屋台とか!!」
ナイスタイミング!
真弓が大きな声を出しジョニーの台詞を止め……さらに、優子とジョニーの間に割込み、ポルノポスターに向かう姉の視線をさえぎっては『ね!』とジョニーをにらみ、彼のポスターをさす指をポップコーン屋台へ方向転換させた!
「そうね」
優子がポルノ映画館から五十メートルほど先にある屋台に目を向けていると………真弓が僕の肩を軽く叩き、爆弾を指差し『フォローしてあげる』とウインクし『余計なまねはするな』とジョニーを睨み、口止めさせる。
『ありがとう』僕は笑顔を返し、ジョニーの腕をつかんだ。
歩き出し……ポルノ映画館を無事通過した僕達を『カモ発見』とばかり、屋台のおじさんが扇風機をこちらに向け、漂う匂いが、真弓の食欲を刺激し誘導する。
「食べたいの? だったら僕がおごるよ」
「え、いいの⁈」
「もちろんさ……な、ジョニー」
「て、割りかんかい……しゃあないな。で、優子ちゃんもポップコーンどうや?」
ジョニーの言葉で、値段表を見たのだろう。優子が少し遅れて答える。
「……あ、いえ、私はけっこうです」
「そんなに遠慮せんでもええで」
「だったらお姉ちゃん、大きいの注文するから一緒に食べよう」
「え、ええ」
「ほな、行こか」
そしてポップコーン屋台に近づくにつれ甘いにおいがする。
「へいらっしゃい!」
(らっしゃいって、おじさん。寿司屋じゃないんだからって、ここは大阪『つっこんだら負ける気がする』)
返事を考える間のなく、おじさんがつづけて口を開く。
「で、なんにするんでい?」
「この一番大きいポップコーンください」
迷うことなく、小さいバケツほどの容器を指さす真弓
「いいチョイスやお嬢ちゃん。で、トッピングは何にする?」
とんとん拍子でつづいた会話も、あまりの種類の多さに止まってしまった。
優柔不断。メニュー票の上で指を往復させる真弓に
「まどろっこしいのう。金はワイらがはろたるし、こないバケツみたいないれもんや……おっちゃん『全部のせ』って出来るか⁈」
「もちろん出来るけど……(代金)いくらになるか分からへんから……出来てからのお楽しみになるけど……かまえんか?」
「おう、男に二言無しや」
「かっこええな兄ちゃん……安くまけたるわ」
『まけたる』その言葉に『すくわれた』と空気が抜けるほど息を吐き顔を緩ませるジョニー。
軽く笑うなりおじさんは……山盛りのポップコーンに……チョコレートだの、イチゴパウダーだの……とにかくいろいろ『これでもか』とトッピングしていく……
(ああ、トッピングして『いく』たびに……僕とジョニーのふところも涼しくなって『いく』んだろうな)
そして……
七色のポップコーンが出来上がった! さあいくらだ!
「名付けて『レインボーポップコーン』や。はい二千円……といいたいとこを特別価格。半額、千円でどうや」
その言葉に僕とジョニーそろってガッツポーズをするなり……おじさんの気持ちが変わらぬうちに、ワンコイン(五百円)づつ、屋台の台に置き、今度はジョニーがおじさんに質問
「ほんまに千円でええんか」
「もちろんや……『まいどあり』って、ほら、お嬢ちゃん、落とさんよう気い付けて食べや」
ポップコーン。あぜんと言葉を失うほどの量が、今にも崩れこぼれ落ちそで落ちない絶妙なバランスに……僕は『おっとっと』と思わず口ずさみ。優子は(助けたいけど、触れるだけで崩れそう)頃また微妙なポーズで固まり。ジョニーは『ほら崩せ』といわんばかりにやついている。
そんな面々をよそに真弓は見事くるりと振り返り
「それじゃ天道寺動物園に、レッツゴー」
「太郎さん、有難うございました」
軽く頭を下げ礼を言う優子の側で、ポップコーンをほうばっていた真弓も
「太郎君、ポップコーンおごってくれて有難うね」と笑顔でお礼の言葉を並べ……
その言葉にすかさず「いやいや、僕の方こそ助かったよ」と笑顔でと返す僕
(たぶん第三者からみたら意味不明……少々おかしな会話だろう)
案の定……優子が少し首をかしげながら不思議そうな顔でこちらを見ている。
僕たちは新世界の区画を出て……上に高速道路が通ってるのだろう、陰で涼しい歩道を歩いてると……右側の歩道に沿って立つさくの向こうから、
ときおり動物の鳴き声が聞こえ、僕達の歩くスピードと真弓の食べるスピードを加速させる。
といってる間にも僕達は、天道寺動物園の前の道に到着した。
読んでいただき、ありがとうございます。
『山田太郎たちの恋物語・Boys Meets Girls?』
第十五部『こんな所に『爆弾』が!』
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by.メガネ君(作者)




