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遠足・新世界編(後編)

 そして、ビリケン神社の前で並ぶなりジョニーが一歩前に出てはビリケン像の台座に五円玉を置き、自慢げな表情で振り返り

「賽銭や、ゴエンがありますようにってな……はは!」


当然『カチン』ときた真弓は負けじとばかり台座に五十円玉を置き

「五円なんてケチね……ほら、あたしなんて十円玉よ」

「負けへんで、五十円玉や」

「はい、百円」

「これでどや、五百円!」


 なんとも可愛らしい(ようちな)勝負だろう。

(なるほど『ワンコイン』という条件で競ってるのか……でも)

庶民な僕からしてはもったいなさの極みでしかない。


真弓は勝ちたいばかりにやけになり『条件破壊(おくのて)』を出した!

「こうなったら千円札! あたしの勝ちね」


(勝負あり、今日は意外にあっさりと終わったな)

一息つく僕の横で、まだ諦めていないジョニーは財布に手を突っ込み……。まだ諦めてはいなかった。


「まだや。まだ負けてへん……有ったで」

にやりと笑い紙幣を取り出すジョニー

(おいおいまさか五千札⁈ 学生の簿記たちには大金だ)

「どや、二千円札や!」


(二千円札だと! まだそんな紙幣が流通してたとは盲点だった……でも記念に欲しいかも)



 予想外の伏兵(二千円札)の出現に真弓は混乱し……目を丸くし、息を荒立て、かっとうしている。

(気持ちは分かるけど見ちゃいられない)


……そして、財布に手を入れたまま固まっている真弓の前を……二人の前に割って入った優子がちゅうちょなく、五千円札を置いた!



勝負あり……さすがに賽銭に一万円は高校生には、否、一般庶民には到底不可能!



すると優子は、ジョニーと真弓を交互に見て、少し強い口調で

「二人ともいい加減にしなさい! お金はおもちゃじゃないのよ! それに神様の前よ!」


「お姉ちゃん、ビリケン様……ごめんなさい」

「すまん、はしゃぎすぎた……」

 そして僕達は、改めてビリケン神社にお参りをした……当然、台座の上にある八千六百六十五円は……賽銭は『授業料』として謹んで奉納した。


(これでひと段落)

 戻ろうとする僕とジョニーへ

「私達もう少しここに居たいので、下の方で待っていてください……すいません」

と申し訳なさげに頭を下げる優子


「だったら一緒に」

「そやな」

するといっぺん、半ば迷惑そうに

「いえ、そうなると余計に長くなりそうなので……どうぞお二人は気にせず下へ行ってください」「うん。ごめんね」


背中を押して実力行使……僕達は顔を見合わせうなづく。


「そこまで言うのでしたら」

「……しゃあないな」

「すみません」「またね」


 僕達は『なぜ?』と疑問に首を傾げあいながら言われるまま展望台を後に……

男二人『ご来場ありがとうございました』とロマンチックなエレベーターに乗った。


……ここは三階。

 昔の新世界のジオラマや写真等を適当に見て(こんな昔から)と感心している僕の肩をたたき

「あそこで休んでいこうや」

と併設されている喫茶店を指差すジョニーにうなずくと、彼は『待ってました』とばかりソフトクリームを注文しに行った。同時にで一休みしている……


 数分後(まだ戻ってこない)僕は、一人幸せそうにソフトクリームをほうばっているジョニーに

「この後のオタロード……てほんとに彼女達も連れて行くのか?」

「おう。当たり前やろ」


 あまりに呆気無く答えるジョニーに、僕は呆れたような表情と口調で

「今度こそ真弓さんに殺されるぞ……」

「ははは。大丈夫、大丈夫……まあ、なんとかなるやろ」

とジョニーは心配する僕を笑い飛ばし、半ば強引に話題を締めくくる。



 数分後、彼女達が戻ってきたが、かみつく真弓をなだめる優子……僕を見つけ頭を下げる

「お待たせしてすみません」

「いえ……」

「真弓ちゃん不機嫌そうやけど、何かあったん?」

ひそひそ声が気に入らないのか、彼女の矛先がジョニーに代わる


「は、関係ないでしょ⁈ それに言ったところであんた程度じゃ理解できないわよ」

「なんや人が心配してやっとんのにその態度」

「じゃあ言ったげる。あたしビリケンに笑われたの!」

「いや。ビリケンさんはいっつも笑っとるやろ」

「ほら分かってくれない!」


「真弓機嫌なおして……そうだ。行きたい場所があるんですが……良いでしょうか?」

「もちろん……で、どこですか?」

と僕が快く返事をすると、彼女の隣の真弓が目を輝かせ窓の外を指差しながら

「さっき展望台から……あっちの方に動物園を見付けたの、だから」


「それ、天道寺動物園やな、時間は……十時十分か、もう開園しとるし、こっからやったら五分とかからへんな、行ってみよか?」

「賛成……動物園か、何年ぶりかな」

「やった! ありがとう」「ありがとうございます」



 頭を下げ感謝する彼女に僕は『そこまでかしこまらなくても』と両手でジェスチャーし

「それじゃ、早速行きましょうか」


 回れ右をし歩き出した僕達は、通天閣を下りようと一階行きのエレベーターの前に来た……。

するとジョニーが、壁に貼っている注意書きを指差し冗談半分に

「この階段、百段以上あるんやて……数えてみよか」


また小学生みたいなことを……こうくると、もちろん真弓さんは……!


しかし僕の予想とは裏腹に、彼女は笑顔で

「おすきにどうぞ……あたし達はエレベーターで下りるから……じゃあね~~」

すると、タイミング良く来たエレベーターに真弓は、僕と優子の背中を押して乗り込むなり『じゃあね』と笑顔で手を振り扉を閉めて一階に下り……当然先についた。

数秒後……息を切らしジョニーが下りてきた。


 目の前で、うつむき息を整えるジョニーに真弓は、ニヤリと笑いながら、お構いなしに質問する

「で……結局、何段あったの?」

「百六段ありました……って開口一番がそれかい! その、ねぎらいの言葉の一つもないんかい」


「ご苦労様、これでいいでしょ? それじゃ早速、天道寺動物園へ、レッツゴー!」

嬉しそうに弾む声で拳を突き上げ僕達に号令をかけ、先頭を歩く真弓……僕はそんな彼女の背中を見て笑み浮かべている……しかし!





動物園へと向かう楽しい道の途中に、まさか、あのような難関が在るとは……新世界を知らない今の僕には知るよしもなかった………。


読んでいただき、ありがとうございます。

『山田太郎たちの恋物語・Boys Meets Girls?』

第十四部『遠足・新世界編』

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by.メガネ君(作者)

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