遠足・新世界編(中編)
通天閣にて(割込み投稿にする予定)
新今宮バスターミナルにつくなり、最前列に居た先生が回れ右しながら立ち上がり
「ええ。帰りは午後四時半から五時までにこのバス停に集合する。遅れないように……お、それと村上」
「はい」ふいに呼ばれぽかんとした顔。
「心のふるさとに里帰りしたからといって、はしゃぎすぎてひと様に迷惑をかけないように」
「ひどいで先生」「「はははは」」
「それでは解散!」
帰りのバスに遅れないように携帯のアラームをセット……これでよし!
僕達はすぐにバスを降り、大阪の街を見回した……とめどなく流れる車、横断歩道を埋め尽くすほどの人人人、妙に心地良い路面電車の音……と、僕の住んでいる町とは大違いだ。
そして、忘れてはいけないモノが屋根越しにそびえ立っている。そう『通天閣』だ!
(おお! 雑誌等で見たとおり、すごい街だ!)
とまあ一息ついたところで僕以外皆の服装チェックだ
優子……清潔感のある白系のワンピースで、なんとも涼やかだけど『たこ焼き』に『串カツ』ソースが付いたらえらい目にあうこと間違いなし。
真弓……相変わらず活発で派手な服……ミニ丈のデニムスカートに、プリントTシャツを合わせ、テーラードジャケットをはおった。雑誌の一ページを見ているよう『馬子にも衣装』とジョニー。
そんな笑うジョニーは、デニムのパンツに、チェックシャツ『昔懐かしのアメカジファッション』に刺しゅう入りのスカジャンを羽織っている
「ほな行こか、ついてきて」
上機嫌で歩き出すジョニーに引率され、だまって僕達は、彼についていき……どんどん大きくなっていく通天閣に期待がふくらむ。
新世界のアーケード入り口に立ち僕は足を止め、改めて通天閣を見上げ、思わずニヤリと笑う。
(まさしく雑誌に載っているあの風景だ)
「「すごい」」
声がはもった僕と真弓は目を輝かせながらアーケード街を歩く。
時計を見ると午前八時『通常なら八時半からだが、時と場合により今日は九時』と大半の店が閉まっていたおぁげで視線は正面をむき……そびえ立つ通天閣の大きさと存在感に圧倒され、興奮し一言も喋れずにいた……。
そしてエレベーター乗り口に伸びる行列が見える。
(予想より長い、少し時間がかかりそうだ)
行列に並びながら、新世界の奥を見ると……派手な装飾を施した店が多数
(いい意味で落ち着かない『元気が出る』『お祭り騒ぎ』)
居酒屋がこんな朝から開店してるのに驚く
ところどころに缶ビール片手に歩いてるおじさん(当然飲酒は二十になってから)
「すごい町ですね」
「かざらない人ってあたし好き」
しばらくすると行列が動き始め……エレベーターに乗り、天閣二階に到着。
ドアが開くなり、真弓は景色を見ようと駆けだし、優子も歩いて付いていったが、すぐに
「なにこれ!」
真弓が響かんばかりの声を上げる……悔しがるのも無理はない。
残念なことに……所々、板で目隠しされている。
僕はジョニーと彼女たちの側に行き、最上階に行くことを提案する
「ここを一周したら……有料だけど五階の展望台に行きませんか?」
「景色見たけりゃ金払えってこと……大阪人てせこいわね」
「て、なんでそこでわい見んねん」
「商人の知恵よ真弓……それに」
「はいそこにビリケン神社があります」
そして僕達は展望チケット(パンフレット)を買い、別のエレベーターに乗った……しかこいつは一味違う!
自動で流れる落ち着いた音楽とアナウンス、天井に映し出されるビリケン(星座風)に、エレベーター同様、僕のテンションも上がっていく!
(これは期待できそうだ)
そしてエレベーターのドアが開くなり『今度こそ』と飛び出す真弓に、負け自余ばかり僕も絶景を見に駆けだした!
『お客さん、施設内では走らないで下さい』と係員の声も聞かず。
「これよ!」明るい声が響く
(ははははっ……おおすげえ想像以上だ! まさに大パノラマ)
僕は心のなか同様、興奮気味な口調で真弓に話しかける。
「すごい景色ですね真弓さん! まさに大パノラマ」
しかし僕の言葉に、彼女はどこか申し訳なさげな表情を返す。
興ざめし我に帰った僕は、覗き込むように真弓に問いかける
「真弓さんどうしたんですか? 元気ありませんね」
「うん……期待してたよりちょっと低いかな……あ、でも良い景色だよね」
真弓は少しため息をつき、遠くを見ながら答える。
僕は真弓の素っ気無い反応に首をかしげながら、ジョニーと優子を探し歩きだす
(窓際にはいない……優子さんの目的からしてきっとビリケン神社の近くだろう……たぶん、ジョニーもそこにいるはず)
すると案の定、ビリケン像がまつられている神社の前にいる二人を発見した。居優子は目を閉じ手を合わせ真面目に参拝している
しかしジョニーは……彼女が目を閉じているのをいいことにいろんな角度からながめて……僕をというより、真弓と目が合うやいなや、白々しく視線をそらした。
(いくら遠足でうかれていても、ここはひとつ注意しないと)
歩き出す僕を押しのけ、真弓がジョニーにつめより。
「ねえ今の何。お姉ちゃんに何しようとしてたの⁈」
腕組をして睨み上げる真弓に、ジョニーは見上げんばかりに目をそらしとぼける。
「え、今のってなんのこと?」
「お姉ちゃんをいやらしいめで見てた」
「おいおい」
とぼけ続けるジョニーに、腹を立てすぎた彼女は
「あんたも、見てたわよね」
僕にではなく、ビリケン像に同意を求めている
「真弓ちゃんこそ何ボケとんねん。ビリケンさん困って顔ひきつっとるやんけ」
苦笑いするジョニーの言葉で我にかえった真弓は
「んん。まあしいわ」
恥ずかしそうに言葉をにごしては、僕とそろってため息をもらす。
「そないなことより、あれ見てみい」
『もう話題を替えよう』と回れ右して窓際に立ったジョニーがさびしげな口調で、遠くに見える大阪城を指差した。
(今度はどんな事言ってごまかす気だ?)
心の中でかるく一笑し……大阪城に『懐かしいな(小学校の修学旅行以来)』と目をやる僕に、言葉をつづけるジョニー。
「いや昔はごっつう立派だった大阪城も……今じゃノッポなビルに囲まれてちっこくなとる……時代の流れとはいえちと可哀想やな……」
「え? そうだな……」
僕はジョニーの言葉に同意しながら(顔に似合わず、かっこいいこと言うじゃないか)……と内心驚いていた。
そんなしんみりとした空気を漂わせている僕達に……真弓が駆け足で近づいて来て少しすねたような口調で
「太郎君、おいてくなんてひどい」
「ごめんごめん……またジョニーが優子さんにヘンなことしないか気になって」
僕はジョニーをダシに真弓を誤魔化した……当然、彼女はジョニーに歩み寄り、彼を睨んだ!
「ほんまなんもしてへんて! 堪忍して~や」
『勘弁してくれ』とばかり両手をあげるジョニーに『してやったり』と不適な笑みを浮かべ、追求する真弓
「あれ? なにもしてないのに、どうして謝ってるのかな⁈ もしかして、これから何かしようと」
「そんな睨まれとったから、反射的に謝ってまうやろ」
少し考え、ため息をついた真弓は、一方的に和解案を提示してきた
「まあいいわ許してあげる……その代わり、あんたは今日一日あたしの荷物運びだから、分かった⁈」
「これ以上もめたあないから、分かった荷物もちやな」
ジョニーは、いやいや承諾し……二人が和解したのを確認した優子が、真弓の肩を叩き
「さあ真弓……一緒にビリケン様に挨拶しましょう」
「は~い」
するとジョニーも僕の肩を叩き誘いにきた
「せっかくや、わいらもビリケンさんに挨拶しよか?」
「うん」




