二日間のテストバトル……そして(後編)
『なるようになる』
ジョニーの言葉に触発されてか、僕はテスト勉強(最後のあがき)もそこそこにベッドでよこになり……テスト二日目の朝をむかえ体調、気力体力ともに良好だ。
カーテンを開けると昨日の曇り空とは一転、雲一つ無い快晴
降り注ぐ朝日と『学科系テストが無い安心感』で高揚した僕は足取り軽く登校。
「二時間目の体育テストが楽しみだな」
とジョニーと、天気同様に元気になった真弓と雑談する。
つけくわえると最終日は、教師からテストを頑張り抜いた激励か、特別に三時間目でおわりという嬉しい仕様になっている。
だから僕はいつも以上に足取り軽く、年甲斐もなく飛び跳ねるように玄関を出た。
校門がちかづくにつれ生徒の姿が増えてくる、見渡すとこれまた僕と同じく昨日までと一転『テストの打ち上げどうする』など楽しげにに談笑したり、軽快に記憶帳をめくったりしながら歩いている。
すると、一際元気な女子の声が聞こえる。
(もしや)
目をやると案の定。身振り手振りで楽しげに話しながら登校する真弓と、それに頷く優子の姿。
僕は二人に駆け寄り明るく挨拶する。
「おはよう」
「おはよう」
「太郎さん、おはようございます」
二人が明るく挨拶を返してきた事に安心して、思わず笑みをもらす……と、いきなり笑顔になる僕を不思議と感じたのか、真弓が下から僕の顔を覗き込んでいる……と
「おはようさん」
突然現れたジョニーが挨拶と同時に、真弓の肩を叩き、彼女をよろめかせる
「ジョニーあんたね。いきなり何してくれてるの、怪我して体育のテスト受けられなかったらどうしてくれてるのよ!」
「どうするも、わいが優勝するだけや」
「あんたね!」
自分が勝つため手段を択ばない。
ひきょう! いや彼らしさに『やれやれ』とため息をもらす僕。
呆れショックのあまり絶句する優子、歯をむき出して睨む真弓。
『ひっくるめてそんなのお構いなし』とジョニーは鼻で嘲笑するように彼女を挑発する。
「そや、でもお前程度やったら、わざわざ怪我させんでも余裕勝ちやけどな。ははは」
「馬鹿だけど真面目な良いやつと思ってた私が馬鹿だった……最低のくずね、絶対に許さない」
今までにない怒りをあらわにジョニーを睨む真弓……さすがにこれはまずい。
「ちょっと真弓」
おびえたような声で震える手を真弓の肩にを伸ばす優子。
その姿が目に入ったのか
「ふんっ」
急に悔しげな表情で背を向けるなり、無言で一人早足に校舎へと姿を消していった。
この状況。流石のジョニーも気まずいのか、うつむき『どないせっちゅうねん』何度も浅いため息をもらす。
うつむき誰も口を開こうとしない。
(なんとも気まずい)空気が流れる数秒間
「……とにかく教室に行きましょう」
「おう」
「そうですね。真弓が待ってます」
気まずい空気を背負ったまま『おはよう』と教室のドアを開けた。
「「な!」」
予想外の光景に思わず立ち止まる僕達。
後方窓際、ひとあし早く体操服に着替えた真弓が窓辺のサンにもたれている。
だけなら(彼女らしい)と驚かないが、豪雨にでもあったように、ずぶ濡れの髪からは雫がたれ床に点線をえがいている。
タオルを出そうと急いで鞄を開ける優子。みうごきとれない男二人。
目が合うなり何事もなかったように、照れ笑いしながら真弓が近づいてくる。、そ
「どうしたの真弓その髪、濡れてるじゃない。はい、タオル」
「ありがとう……へへ、さっきはごめんね。ちょっと頭冷やしてたんだ」
「頭を冷やすって、真弓まさか」
「いや、ワイのほうこそすまん……半分は冗談のつもりやった……そんな、むきになるやなんて……すまんかった」
「あんたがずるいのは今に始まったことじゃないからもう怒ってないわよ……それに『水も滴るいい女』っていうでしょ、それをやりたかったの」
湿っぽい空気はいやな真弓は『はいこの話題終わり』とヘラヘラ笑いながら自分の席に座った。
そして本日のメインイベント『体育テスト』が始まり……時間短縮のためか、男女混合で行われる。
まずは四百メートルトラックを五周する二キロマラソン……これはウォーミングアップもかねたレクリエイションのようなもので、疲れたら歩いても良い、とにかく完走すれば合格となる。
にもかかわらず、ジョニーと真弓はまたしても「わいが一番や」「減らず口を」とスタートライン最前列で意地の張り合いをしては……周囲が距離をとる。
「位置についてよういスタート」
砂埃をあげる全力疾走する二人に
『あいつら、短距離走と勘違いしてないか』『若いっていいわね』などクラス全員からの迷惑と不満の視線を風とともにに受け流し走る二人……そして結果、真弓が両手を挙げ余裕のゴールをきめた。
つづけて短距離走では……先程の二人に感化されやのかか、みんな気合を入れて本気で走っている……
順番が巡り……御都合主義か偶然か、今回もジョニーと真弓が一緒に走ることに!
「どっちが勝つと思う」
「短距離だ。そりゃ男子の村上だろ、女子なんて目じゃないよ」(男子、短距離得意)
「何ですって男子! いつも村上を殴り(蹴り)飛ばしてる真弓ちゃんの力を知らないの」
「何はともあれ、好カードだ」
盛り上がる生徒達をよそに
「短距離走もあたしがもらうわよ!」
息を整え、かるい柔軟運動をしながら笑みを浮かべ挑発する真弓に『にやり』と笑い返すジョニー。
「それはどうかな」
「え」
「この為にさっき、わざと負けたって事くらい、分からへんのか」
「こざかしい!」
「それに見てみい。あのゴールテープ……運動会みたいで気合入るやろ」
「子供ね」
「一着だけが切ることができるんや……気持ちええやろうな」
「そうね……負けないわよ!」
真剣な目で指さす真弓に、またも『にやり』と笑い返すジョニー。
二人いがみあいながらはスタート地点に並び……スタートの瞬間を待つ……。
「用意……ドン!」
同時に砂埃が上がる。見事なスタートダッシュをきめや真弓は、一気にジョニーを引き離す!
……しかしジョニーは、どうしたことかマイペースで走り……五秒以上の差を開けゴールする。
当然、真弓は怒りしんとう!
ジョニーにつめよるなり、今にも殴り掛かりそうな大きな声で文句を言う。
「あんたね! 『あたしに勝つ』とか言っといて! 何なのあの走り! やる気あんの⁈」
視線と罵声を浴びてるにもかかわらず。なぜかジョニーは、笑顔で謝る
「すまんな~ちと足つってしもてな……勝負はまた今度や」
二人の側で僕は首をかしげる
ジョニーはなぜ笑ってる? なにやら裏がありそうだ……
「男なら根性で何とかしろ」だの文句を出し尽くした真弓は、一度深呼吸をし……少しあきれてた顔で
「まあいいわ! ……結果的にあたしの勝ちだから、今回だけは、許してたげる」
おいおい、それで良いのか?
そして三日つづいたテストの最終科目『体育テスト』も終わり……『解放感』心地良い空気ただよう教室。
「終わった~。お姉ちゃん、この後ってたしか、いつもの(・・・・)ホームルームで終わりだよね」
「ええ。でも今日は……」
笑顔で言葉をつけ足そうとする優子の前に、ジョニーが声をあげさえぎる。
「わあ! 優子ちゃん、テスト終わってゆっくりしたいんや。余計なことは無しでいかへんか」
「へえ気がきくじゃない、で」
「おう。いつもの(・・・・)ホームルームで終わりや。いつもの(・・・・)な。そやから大人しい眠っとき」
「ええ……おやすみ」
連日深夜までの慣れないスト勉強にくわえ(極めつけは)さきの全力疾走だ。
真弓は、体力切れと、テスト終了の開放感に、満足げな表情で髪を軽くなびかせ、気持ち良さそうに寝息を立てている……と『電池が切れたように眠っている』
数分後、ャイムが鳴り担任が入ってきた。




