二日間のテストバトル……そして(前編)
今日は、自分を試したい、もしくは頭のいい生徒しか待ちに待っていないであろう、中間テスト初日……。
僕は徹夜のうえ『最後のあがき』とばかりなれない早起きをして勉強……などと無理がたたり、つかれと眠気に目を擦りながら、まぶしい朝日で目を覚まそうと、一気にカーテンと窓を開けはなった……が、期待を裏切る一面曇り空。
(なんて天気だよ……ただでさえ連日慣れない徹夜勉強で疲れているというのに……この雲り空のおかげで心まで疲れてしまいそうだ)
空を見上げ、ため息混じりに苦笑いする。
『しかし落ち込んでいられない』
意を決した僕は、机の上で開いたままになっている教科書ノートの赤線に目を通して(かじりつき)、苦手な歴史の年号や、数学の公式を寝言のように何度も呪文の様に小声で呟きながら部屋を出……階段を下りて、リビングキッチンに入ると
「「おはよう」」
挨拶してくれる家族の前を夢遊病者のように無言で通過し、テーブルの前に立つなり上に並んでいる朝食を無意識的に呟き続ける口に運ぶ
「お兄ちゃん何行儀悪い事してるの」
突然耳に飛び込む花子の嘲笑に『はっ』と我にかえりテーブル中見散乱しているパンくずを目にし、慌てて口を開く
「今日、中間テストだから徹夜で勉強してたんだ……て、パンくずと一緒に単語がいくつかとんだ」
「だからって、お兄ちゃん、独り言いいながら食べちゃ駄目」
(おっしゃるとおり)
ふだんは(少し)甘えん坊のくせして、実のところ花子はこう見えて学年十位以内をキープなど頭が良いうえ、復習予習と勉強を欠かさない
「花子と違って僕は頭が悪いんだ」
悔しさに口が滑ったとはいえ『自ら馬鹿だと肯定してしまった』一瞬赤面して言葉を失いうつむくぼくの肩をやさしくたたき
「テスト、頑張ってね」
「ありがとう」(やさしいな)
励ましの声をくれる花子……しかしその顔には嘲笑が浮かんでいる。
僕の心は落ち込むばかりで言葉も無く、朝食を終え……いつにも増して重い足取りで家を出た。
(いっそのこと休んでしまおうか)
等と、みもふたもない現実逃避考えているうち……校門と言葉少なに歩く学生達の姿が見えてきた見えてきた。
「よし、やることはやった。覚悟を決めるか」
つぶやき、顔を上げ歩き出す僕の前に疲れた顔で今にも倒れそうに歩く真弓と、そんな彼女の手を取り心配そうにつきそう優子の姿が
一目で僕と同じ『徹夜でテスト勉強、一夜漬けしたんだろな』と共感できた(わかった)。
(普段元気な彼女(真弓)がこうもくらいと、みんなもくらくなってしまいそう)真弓を元気付けようと僕は、わざとらしいまでに明るく(ジョニーの真似をして)、二人に駆け寄り挨拶をした。
「おはいうお二人さん、まったく、テストの日に曇りなんて、いやだよね」
「はい……もしかしてジョニーさんの真似ですか?」
「うん(真弓に)元気出してもらおうと」
「ははっ、なにそれ。ありがと……ま、雨じゃないだけまし」
真弓は、少しくまの出来た目で頬をひくつかせ無理な笑みをうかべ
『あたしに話しかけるな』
といわんばかりに、ため息交じりの視線を返し、一人歩くペースを上げた。
(『テスト、曇り』今の彼女にこれは禁句だった)
言葉のチョイスを間違えた僕は、他に何か良い言葉を言って誤魔化そうとあせり悩みながら、彼女達を追いかける様に付き添い歩いていると……。
突然後ろから来た何者かに背中を強く叩かれバランスを崩しかけた
(いったい誰!)
驚き目を丸くして振り向く僕達の背後には、先日とうって変わって明るくへらへらと笑うジョニーが居た。
もしかして彼特有の一風変わった
『逆転の発想や!』とやらで
『努力しても悪い点なら、勉強するだけ無駄やから無駄な事はせんほうがええ……だからワイは、テスト勉強なんてしない、そうだ男は黙って一発勝負!』
まるで無理な言い訳だ。
『心境の変化が理解できない』といった表情で向き合う優子と真弓
その横で、勝手な推測で一人笑っている僕に、ジョニーは右手を突き出し親指を立て宣言する様にはっきりと大きな声でい放った
「やることはやったんや! 今更くよくよしてもしゃあないやろ!」
呆れる程のなんというポジティブシンキング(単純発想)……だが一理ある、見習いたいものである。
深呼吸で気持ちをおちつかせた僕は、かるく鼻で笑い言葉を返す
「うん。確かにそのとおり、有難う、なんだか元気が出てきたよ」
「そや! 当たって砕けろや」
真弓も大きく深呼吸し、苦笑して少し上目遣いでジョニーを見
「ははっ。砕けちゃダメでしょ……でもまさかこのあたしが、あんたに励まされるだなんて思わなかったわ」
「そうです。皆さん頑張りましょう!」
はきはきとした声で拳を突き上げ歩き出す優子さん。
(優子さんこそ、真弓さんの真似をしているのでは?)
心の中で笑いながらも、その背中から漂って来る、妙な安堵感にふっと肩の荷を降ろしてもらった僕達は、気合を入れなおし、テストを受けるべく教室へと向かった。
(赤点、追試)の覚悟を決めたもの以外、静かな教室、学校は思いのほか復習に集中でき……時間が経つのも早く感じ……そうして、中間テスト初日が終わり……って、展開早や!
放課後。
ヤマが当たり満面の笑みを浮かべる者、その側で何かに打ちひしがれ言葉を失う者、はたまた、いつもどおり淡々と帰宅準備をする者『悲喜こもごも』といった様相をみせる教室の中、僕は席に座ったまま思い切り伸びをして、気になるいつもの面々の様子を見る。
優子は、自己採点をしているのか、ノートや教科書を指でなぞりながら小さく頷いている(いい点なのか、笑顔だ)
真弓は……
「はは……明日は体育のテスト、そう明日がある明日がある明日があるさ」
燃え尽き白くなった某ボクサーようにうなだれ、壊れたレコーダーの様に同じ言葉を繰り返し呟いている。
(テストの結果は……想像するまでもないだろう)
さてジョニーは……今朝の明るい態度と一転、現実に打ちひしがれてるだろう(ざまあみろ)とほくそ笑み横を向いた僕は唖然とした。
『大阪ウォーク』なる情報誌を楽しげに読んでいる。
(明日もテストがあるというのに、教科書ではなく情報誌をひらいて笑っている……余裕があるのか? 言っちゃなんだけどジョニーの頭は僕と同じか少し下くらいだ)
なんて予想を反するジョニーの奇行に、思考が追いつかず固まっていると……不意に目が合ったジョニーは目を丸くし『まずいものを見られた』とばかり、いそいそと情報誌をかばんに押し込み、立ち上がるなり
「皆すまん。わいちと用事あるから、先帰らせてもらうわ、ほなな」
と僕達の返事なんてお構いなしに、早口、早足で教室を出て行った。
呆気にとられ開いたままのドアを眺めていた僕は、我にかえり時計を見ると(もうこんな時間)家でのんびりしようと鞄を持って立ち上がり、二人に頭を下げながら
「ごめんなさい優子さん、真弓さん。流石に僕も今日は疲れてるし明日もテストだから、ごめん、先に返らせてもらって良いかな?」
質問に優子は、横目で真弓の様子をうかがい、かるくため息をついた
「はい構いません。このとおり真弓の心が回復には時間がかかりそうなので、えんりょせずお帰りください……それと、テストご苦労さまです」
「有難う、おつからさま。また明日」
そして帰り道の堤防でふと
(今日はポチの散歩当番だった!)
思い出し、走り出す僕の耳へ入ってきた『ワンワン』聞き覚えのある鳴き声に顔を向けると……
案の定、全力で走るポチに引かれて花子が近づいてくる。
「遅いよお兄ちゃん……花子が代わりに散歩しておいたから」
「うん、ありがとう。いつか埋め合わせするよ……て、僕の記憶が確かなら花子もテストがあるんじゃ?」
「うんあるよ。でも花子は賢いし、ちゃんと予習復習してるから大丈夫」
「そういや明日は学科系テスト無かったな」
読んでいただき、ありがとうございます。
『山田太郎たちの恋物語・Boys Meets Girls?』
第十三部『二日間のテストバトル……そして』
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by.メガネ君(作者)




