○○の中間テスト……勉強会(後編)
男女対面で座り、軽く深呼吸、筆記用具を机に僕は『さあ始めるぞ!』と意気ごんだ。
までは良かったが……事を考えたが……さっきまで席をとる事で一杯だった頭に『早速中間テスト対策』なんてすぐ思いつくはずもなく、頭を抱え、腕を組みうなる僕たち三人をよそに、優子はすらすらと軽くメモを書くなり席を立ち、本の貸し出しカウンター脇にあるコピー機で『それ』を人数分コピーして、配り席に座ると
早速、それ(中間テスト予定表)を指差しながら対策法を説明し始める。
「中間テストまで、今日を入れてあと四日! 初日は学科系……数学と科学は公式を……英語と国語は文法を……歴史は年号を暗記……簡単でしょ」
頭が弱い事を自覚している僕とジョニーに、四日という短期間でそれのような難関を簡単だと言い放つ優子の言葉に呆れるあまり苦笑してしまう、中間テスト二日目の欄を見て質問する。
「優子さん二日目……最終日の家庭科テスト代わりの調理実習の後……体育の文字を塗りつぶしてるけど、中止になったんですか?」
すると優子は落ち込んだように下を向くのを見た真弓が、僕のすねをかるく蹴り、優子に聞こえなうように小声で愚痴交じりの注意をする。
「ちょっと太郎。言いたい気持ちは分かるけど、まったくちょっとは、察するって事出来ないかな……姉さん走るのとか陸上競技苦手なのよね、飛ぶのはあたしより上手いくせに」
「跳ぶ? 垂直跳びの事ですか?」
『垂直とびも確か陸上競技の一種では?』と口に出すより早く、真弓が慌てて答える。
「そうそう姉さん体重とても軽いのよ、だから高くジャンプできるのかな?」
万能超人だと思える優子さんにも、やはり苦手なの一つくらい有るんだな。
という妙な安心と親近感をおぼえ、思わず笑みがこぼれた。
僕に笑われたと勘違いしたのか、優子が平手で机を叩き、すねたような声で僕を指差し
「それでは皆さんの得意教科と、苦手教科を教えて下さい。私は皆さんご承知の通り体育以外全て大丈夫です! はい次、太郎さん!」
珍しくすねてる彼女。
感情の矛先は僕だと分かってるけど、その上目づかいに口をとがらせる表情に可愛さを感じ、軽く苦笑して答える。
「僕の得意教科は、科学と国語と一応英語も……苦手教科は数学と社会で……つづいて真弓さんどうぞ」
真弓は上を向き指で数えるしぐさに思い出すような口調でこたえた。
「うぅんと、あたしの得意な教科といえば英語と科学……わりと数学もかな? 苦手な教科は国語と社会(歴史……天界でと会っているから)……ジョニー、あんたの得意だと一人で思い込んでる教科ががあれば言ってみて」
真弓に鼻で笑われ、ジョニーは一瞬いやな顔で睨み返すが、すぐに頭をかきながら答える。
「思い込んどるやて、ちゃんとええ点とっとるわ! で、わいの好きな教科は英語と国語それと科学も……で、嫌いな教科は数学と社会やな」
そう予定を立てているうちに昼休み終了の予鈴が鳴った。
とそれを合図に図書室でうずまいてた生徒達の流れが一気に変わり、両開き式ガラス戸の出入り口になだれ込み混雑させている。
それを無意識に予測していたのか僕達は、慌てず今後のテスト対策を相談した。結果……早速『今日の放課後と明日、で共通苦手教科の社会を……テスト前日の日曜の午後は気晴らしも兼ね、優子のためにも川原の堤防でマラソンをする』事に決定した。
そして放課後、昼休みと打って変わり、生徒もまばらな(空席目立つ)図書室のなか……夕日が差し込み少しまぶしいというのに、僕達はなぜか昼休みと同じ窓際の机に男女対面に座っては、そのまぶしさに目を細めている。
……と余談だが、まぶしさにこらえきれず視線をうつすと、図書室隅の机で教科書を睨み考え込んでいるメガネ君先輩の姿があった。
(話しかけると、面倒になるだろうから、放置して)話題を元に戻そう。
僕達は予定通り、社会世界史の教科書ノートを広げ勉強を始め……一時間後
唐突に優子がジョニーへ問題を出す。
「ジョニーさん突然ですが問題です、千九百四十二年にアメリカを発見したかたのお名前は?」
「ほんまいきなりやな、でもそんなん常識や! 答えは卵のおっさん!」
「ふふ……大目に見て正解ですが失礼です、正しくはコロンブスです……真面目に答えてくださいね」
「ばれたか、すまんな卵の、いや天国のコロンブスはん」
改心したジョニーに気分を良くしたのか、優子は笑みを浮かべるが、間髪いれず今度は真弓に問題を出す。
「真弓に質問です……西暦元年は誰の誕生日でしょうか?」
「そんなの、三丁目のひげのおじさんのに決まってるじゃん」
「ふふ……とても、とてもユニークな回答ですが違います!」
意味不明な答えをかえされたからか、一瞬むっと表情をかえ、何かさとす様に強い口調の優子に僕達は驚くと、それに対抗するよう強い口調で真弓がかえす。
「え? うそ!」
「正解はキリスト様の誕生日です……しかし近年、研究などにより実際に御生まれたのは西暦四年前後だと噂されています……ね」
(へ~、はつみみ)と感心する僕とジョニーの顔を見、深く息をした優子は、僕にも問題を出す。
「千九百六十九年に人類初の月面着陸に成功したアポロ十一号のニールアームストロング船長が月面に着地し発した名言は?」
「バニーガールは居なかった」
一瞬にして冷たく静まる空間に慌ててていせいする。
「ごめんなさい『一人の人間にとっては小さな一歩だが人類にとっては大きな飛躍だ』です」
「ふふ、正解! ちなみに英語では」
言葉の途中、見せ場とばかりジョニーが、身を乗り出し口を挟む。
「『ザッツ、ワンスモールステップ、フォー、ア、マン』やろ?」
「正解です、流石はハーフのジョニーさん」
優子にほめられ、鼻をならし得意げな顔を向けるジョニーに、不機嫌な顔の真弓は、彼のむこうずね(弁慶の泣き所)を『えい』とばかり一蹴りする。
「なにすんねや」
「え。もしかして当たっちゃった? ごめんなさい。ハーフのくせして短足なあんたと違って、あたし足が長くて……ほんとごめんなさいね」
手の甲で口をおさえるなど、挑発的態度で嘲笑する真弓へ、反論出来ず複雑な表情で彼女をにらむジョニー。
この後も、優子の質問が五周したところで今日は終わり……そして展開早く、翌日。
テストが近づくにつれ、目の下にクマができる学生が増えるのは世の常であり……それは僕達も例外ではない。
おかげで、なれない徹夜が原因で……昼休みは居眠り交じりの勉強会になってしまい……その日の放課後も社会のテスト勉強をする予定が、それぞれ眠気と不安から……自然とそれぞれ違う苦手教科の勉強をすることにした。
そして土曜……僕達は各自……自宅学習を、して……して……しZZZ……不覚にも寝てしまった僕は、よだれでノートにしみをつくってしまった。
「太郎! 夕飯出来たから下りて来なさい!」
母さんの声と夕飯という言葉に反応する腹の虫で……目が覚めた!
(やば! もうこんな時間! 今回、あきらめようかな?)
僕はため息交じりに立ち上がり……少し重い足取りで一階の台所に向かいながら……ひらきなおった!
「まあ、やることはやった……」
……明日はランニングして心機一転、そして中間テストに挑むしかない!
これにて僕のテスト勉強は、たぶんいろんな意味でおわった……はてさて……どうなりますことやら?




