お引越し(その二)(太郎)
「こちらが呼んだにもかかわらず、お待たせさせていまい、すみません」
「いえいえ」
「ジョニー、あんた、がたい良さそうだから、期待してるわよ」
「お、おうまかせとき」
言葉を交わしてる中『じ~』と二人を見上げる花子の視線に気付いた真弓は、花子の前でしゃがむなり、彼女の目をじっと見ながら、頭を撫で回しながら質問する。
「可愛いね~お譲ちゃん、何てお名前?」
じっと見られ少しおびえていたが……乱れていく髪形に、不機嫌な表情になった花子は、真弓の手を両手で払のけ、髪形を整えながら答える。
「ううん……山田花子」
真弓は苦笑しながら謝り、自己紹介する。
「ごめんごめん。花子ちゃん可愛いから、ついやりすぎちゃった……あたしは上田真弓……で、このお姉ちゃんが」
向けられる二人の視線に優子もしゃがんで、優しく微笑みながら花子に握手を求める。
「はじめまして花子ちゃん、姉の上田優子です、よろしくね」
「わたしこそ、よろしく」
花子は、差し伸べられた手を掴むと、軽く振りながら優子と真弓を交互に見て、首をかしげ質問する。
「その……お兄ちゃんにハンカチ貸してくれたのは?」
彼女の質問に優子はしゃがんだまま、(握手と)反対の手を小さく挙げ答える。
「私です……優しいお兄さんね、うらやましいわ」
「ありがとう」
花子が照れくさそうに視線をそらして、なぜか「よかった」と息をもらす。
比較されたと思たのだろう真弓が不満そうな顔をするが……づぐ立ち上がり、数回手を叩き、気持ちを切り替えたようにはっきりした声で。
「太郎君ジョニー、それと花子ちゃん今日は来てくれてありがとうね、とりあえず自己紹介はこのくらいにして、あたし達の家に行くわよ!」
「「「はい」」」
言われるがまま僕達は、大人しく歩き出し……優子と真弓が来た商店街の人なみに入っていった。
不意に花子が服のすそを引っ張り
「真弓お姉ちゃんて、なんだか怖い……ハンカチ貸してくれたの優子お姉ちゃんで良かったね、優しくてきれい」
周りに聞こえないくらいの小声で話したが『ははは』と笑う真弓に目を丸くしてかたまる。
「ははは。花子ちゃんだっけ……べつに良いけど、いろいろ聞こえてるよ……ごめんね、お姉さん耳良くて」
「ごめんなさい」
後ろ髪越しに見える、真弓の赤い瞳に、条件反射のごとく肩をすくめ謝る花子……やはり誰だってあの目を見れば、こうなる。
「なんや、相変わらず地獄耳やのぅ」
場をなごまそうとしてるのか、のうてんきに笑うジョニー……
「うるさい、殴るわよ」
の頭に真弓のこぶしが!
「殴るやなく、殴ったの間違いやろ」
「なに、もう一発くらいたい?」
拳をつくってはなぜか満面の笑みを浮かべる真弓に、優子の『かつ』が入る
「真弓いい加減にしなさい!」
「は~い」
優子にしかられ少し落ち込む真弓のそでをつかむ花子
「ねえ、真弓お姉ちゃん、まだお家に連れて行ってくれないの」
「ごめんね……あれ。花子ちゃんて、あたしのこと怖がってなかった? お姉ちゃんに声かけると思ってた」
「だって」
答えづらそうにうつむく花子。どうやら彼女のこの場における力関係の頂点は、優子に変更されたようだ。
「じゃあみんな、あたしについてきて」
号令をかけるなり、歩き出す真弓に付いて商店街を進む。
そんなこんなで数分後……てっきり商店街をつっきるんだと思っていた僕は『こっち』と人気の無い路地に入っていく優子と真弓にいひょうをつかれ、一気に変わる雰囲気に戸惑いながらもついていく。
(なんとも予想以上に薄暗く冷たい空気で、なんだか物騒な所だな……女の子二人で大丈夫か)
軽く不安と戸惑いを感じ花子を見ると案の定、顔がこわばっている。
高いブロック塀の袋小路が近づいてきた。慌て周囲を見渡しても、こんな所に民家や、アパートなんて見当たらない。
「はい、ここがあたしとお姉ちゃんの家」
ひときわ明るい声で真弓が指さす先に目をやると『どうして気付かなかった』と思えるくらい、真新しい外壁の白いビル……いやビルの様な民家があった。
(一見ビルとしか思えないけど、確かに『上田』と表札とポストがかけられている)
「おお」「でかい、負けた」「すごい」
くちぐちにかんたんの声を上げ、三人そろって見上げていると……
「なにぼうっと突っ立ってんの」
ため息混じりの真弓の声に『はっ』と正面を見ると彼女が、黒く大きな玄関のドアを開けて、僕達の方を向き手招きする
「さぁさ、とりあえず入って……驚くのはこれから」
そう笑みを浮かべる真弓に、僕とジョニーの顔がしぶくなる。
「え⁈」(それって運ぶ荷物がいっぱいあるとか。いやだな)
引き受けたいじょう仕方ないと腹をくくって、数段ある階段を上がり、玄関に入り、視線を上げた僕達(三人)は再び驚いた!




