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祝・初携帯(後編)(優子)

 両手で携帯電話を握り締め、太郎さんとジョニーさんの居る待合コーナーに行く私の服のすそを掴み、引きとめ、小声で真弓が提案してきました。


「待ってお姉ちゃん、この前太郎さん達に教えた自宅の電話番号、消してもらおうよ、パパやママ……ましてや神様やサタン様が電話に出ちゃったら大変なことになっちゃう!」


(そう言われるとそうね……少し考えたら分かる意外な盲点だったわ、我が妹ながらよく頭が回る……でも、おじ様にあたるにせよサタン様はないでしょ)

「そうね、でも私口べただから……真弓、お願いね」


 待合コーナーに着くとジョニーさんが真弓の側に歩いくるなり、携帯電話を取り出し開く

「どないな携帯こうたんや? ほなさっそく、アドレス交換やろか」


真弓はジョニーさんの携帯電話を閉じ、太郎さんを手招きし……彼が来ると

「太郎くんも来て……アドレス交換の前に、ちょっとお願いがあるの……この前教えたあたしの自宅の電話番号消して! あたしのパパママって、ちょっと難しいヒトだから……男の子からの電話なんてきたら……分かるでしょ? お願い」


太郎さんは快く了解してくれ……おまけにメガネ君先輩にも連絡してくれました。

「分かりました……ついでにメガネ君先輩にも、その電話番号削除の件……今メールします」


ジョニーさんは頬をかきながら

「面倒事はわいも好かんから……OK、忘れんうちに今消すわ!」


「有難うございます……ご迷惑かけてすみません」

私が御礼を言ってると……太郎さんの携帯がメ-ル受信のアラームを鳴らす


「いや、そない気にせえへんでええで」

「いえいえ……あっ……メガネ君先輩から返信メールですね……電話番号消去してくれたみたいです」


 ジョニーさんは笑顔で頷きながら携帯電話を閉じ

「これでひと段落や……ほな、アドレス交換しよか」


 初めての携帯電話にもかかわらず、慣れた手つきでスマートホンを操る真弓とは正反対に

彼女の側で、慣れない操作に戸惑い、何度も太郎さんジョニーさんに教えてもらいながら……十数分後……無事アドレス交換を済ませた私は、一緒に携帯ショップを出て少し商店街を散策していると……


ジョニーさんが

「いきなりですまんけど……わい、視たいアニメやなくて、ちと用事あるよて、ここでかえらせてもらうわ! ほなさいなら!」


 本音を漏らし、ばつの悪そうな顔で背中をむけ走り出すジョニーさんと、彼の言葉に反応し

「あっ、どろどろトライアングル一時間スペシャル、って……録ってるから大丈夫、録ってるから大丈夫」

小声で自分に言い聞かせる真弓


 そして、人ごみに混ざり小さくなってゆくジョニーさんの背中を見送り

「太郎さんも、今日は付き合ってくれてありがとうございました」

「初めての携帯なのにすぐ決めるなんて……事前に予習しているようで驚きました」

「へへ……」わざと照れ隠しする真弓

 と……私たちも、今日はもう解散ということにし

私と真弓は、お二人のお姿が見えなくなるまで手を振って見送りました。



 そして、私達は天界の我が家に帰るため……商店街のわき道に入り……最期のテナントもなくなり、今や、無人となってしまた雑居ビルの中へ……。


「ここ、潰されちゃうのかな」

つぶやいた真弓は『走りおさめ』とばかり、今日も階段を駆け上がる。

(このビルは立地が良いので……実は私も気に入っていた……潰されるとまた場所を探さなきゃいけない)ため息をつく。


「そうだ!」

ひらめいたのか大きな声とともに、真弓が駆け下りて……「わ!」驚きのけぞる私などお構いなしに口を開く。


「お姉ちゃん! この雑居ビル、もう人が居ないんだから……あたしの『アストラル・ワークス』でリフォームするから、ここに引っ越そうよ!」


相変わらず、真弓の突拍子の無い発言には驚かされます。

(良いこと言うわね)心で賛成しても……とにかくここはおちついた声で


「また貴方は、突然何てこと言いだすの? 引っ越すって各種手続き」


 私の説教タイムを予知したのか、真弓が『ドン』と地面を踏みつけ、ほほを軽く膨らせては、すねた口調で。


「ううもう! だって毎日天界との往復って、いろいろ(真弓の場合受付の対応が)疲れるんだもん……それに、学校の友達に住所聞かれて誤魔化すのもそろそろ限界

……時々天界の自宅にも時々は帰るから……ね? いいでしょ?」


私は少し悩みながら、彼女の意見に賛同する

「往復(それ)については、私も同感だけど……父さんが良いって、言ってくれるかしら?」



 私の賛同を得た……と思ったのだろう、真弓は笑みを浮かべ、腕を伸ばしブイサインをする。

「大丈夫、パパの事なら、あたしに任せて! 明日の夕方までに許可を得てみせるから!」


 自信満々な真弓を見て、私は感心し笑みを浮かべ

「相変わらず真弓って行動派よね……『アストラル・ワークス』でリフォームってイメージは出来てるの?」

(どうせいきあたりばったりばったりだろう)

と思っているのが顔に出てしまったのか、真弓がかみつく。


「お姉ちゃんバカにしないで! ちゃんと考えてるもん」

「じゃあ教えて。私も協力したいから」

「ありがとう……じゃあ」と彼女は階段の踊り場に立ち、踊る様な身振り手振りで

説明(力説)を始める。

すると真弓は照れくさそうに

「一階から四階まで吹き抜けの『特別練習場』! にして……あ、ここはあたしに任せて『体内アストラル』ほとんんど使い切ってつくりたいから……お姉ちゃんには五階をお風呂に、六階を三LDKの居住スペースに、屋上は天界への転移場所を、協力してほしいの」


 私は特別練習場という単語が気になり質問する

「特別練習場って、あなた何かスポーツでもするの?」


すると真弓はまるで私が質問したことを不思議がるような口調で

「そんなの、天界で時々お姉ちゃんとやってる模擬戦のために決まってるじゃん」


私は再び笑みを浮かべ

「だと思った……まったく仕方ない子ね……いいわ、時々なら模擬戦、付き合ってあげる」

「ありがとう!」


 こうして私達は地上界にも住居を構えることになりました……。

真弓には素っ気無くしてましたが……実は、私の方が

(太郎さん達と同じ地上界で暮らすことが出来る)と、楽しみでならないのです。


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