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祝・初携帯(前編)(優子)

 太郎さん達と五人でカラオケを楽しんだ翌日、今日も空は快晴。

 まさに五月晴れ、暖かくもゆるやかに上がってゆく気温にべたつく肌が『そろそろ衣替えの時期だよ』と知らせてくれます。


 私の隣で『女子高生のおしゃれアイテムの携帯電話を買える』とはしゃぐ真弓にいたっては一足早く、半袖シャツを着ているほどです。

そんな妹に早朝からせかされたおかげか……予定の時間よりはやく、待ち合わせ場所の校門前に到着しました。


 校門にもたれかかった真弓は、空間から『携帯電話パンフレット』を実体化させ、ため息をつく。

「携帯買えるの嬉しいからって……どうしてあたし、明日って言っちゃうかな⁈ あと一日、日曜日にしてれば、もっとちゃんと選べたのに」


 悔しがる妹に思わず『くすり』と笑ってしまった。

「お姉ちゃん⁈」

「ごめんなさい……でも思いついたからって考えず口に出すの、治らないわね……真弓の悪い癖よ」


「分かってるんだけど……うう……それはそうと、お姉ちゃんはどんな、何色の携帯電話を買うの?」

気分を変えようと真弓は、目をかがやかせ話しかけてきました。


私は少し考え……空をゆっくり流れる雲を指差し

「あの雲のように白くて、シンプルなデザイン。なにより使いやすい携帯電話があれば、決めようと……真弓は?」


すると真弓は私の前に立ち楽しそうに

「あたしは断然、可愛いピンクがいい! それか鮮血のようなワインレッドも良いし……何色にも染まらない漆黒のブラックも捨てがたい……あとはやっぱりカメラとか、メールなんかで遊べる楽しい携帯がいい!」


「真弓らしい、かっこういい色ね」

「へへ。ありがとう」

 私は、照れくさそうに笑う真弓に微笑み返しながら……複雑な気持ちに、心でため息をついてます。

(赤なら、薔薇を例えに出すはず……鮮血の赤って……やはり魔族の血がそう言わせているの?)


 それからしばらく、一緒にパンフレットを見ながら話しをしていると……道の向かい側の曲がり角から、太郎さんとジョニーさんが何やら楽しげに会話しながら一緒に歩いて近づいてきました……と、それを見りなり真弓は


「やば!」とパンフレットを空間に消した。

「どうして隠すの?」

「お姉ちゃん分かるでしょ、あんな下線引いたり、しおりだらけのパンフ……ジョニーが見たらなんて言うか……絶対」

「よほど楽しみにし」「オタクだって笑われる」


「考えすぎよ」

「だと良いんだけど……だからお姉ちゃん、黙っててよ」


 そして私達を見つけるなり『お~い』大きく手を振り駆け足で来てくれた太郎さんとジョニーさんが息を切らせ申し訳なさそうに

「ごめん」

「すまん、少し遅れてもうた」


 私は彼に心配をかけないように笑顔で答える

「いえ、私達も今きたところです」


しかし真弓はジョニーさんにつかつかと歩み寄り

「ちょっとあんた! カラオケの時はあんなに早かったのに、あたしの買い物に付き合うのがそんなに不満⁈」


 指をさし叱りつける彼女のけんまくに圧倒されたジョニーさんは、両手を顔の高さに上げ、後ずさりしながら

「そんなことまだ言ってへんやろ! ……って、あ」


 真弓は、視線をそらすジョニーさんを睨み拳をつくり歩み寄る

「まだって事は、思ってたんだ!」


(だめ、このままだと又あの子、ジョニーさんに粗相を)

思わず目をつぶってそまう

「まあまあ、少し遅れてしまってごめんということで、お勧めの携帯ショップ紹介するから。ここは水に流して……とりあえず商店街に行きませんか」

と太郎さんが両手を軽く広げながら二人の間に立って、その場を取り持ってくれました。


「そうやな……今日は遅れてすまんかった……これでええか」

「そうね、過ぎた事ほり返しても、つまらないだけだしね」

 ため息交じりに頭を下げるジョニーさんの姿に苦笑する真弓……さらにその姿を見、けんかにならず良かったと私は胸をなでおろしました。


 そして、太郎さん、ジョニーさんから携帯電話の機能などを簡単に説明してもらいながら歩くこと約半時間。

……ここはゴールデンウェークセールに活気付いているマルアミ商店街入り口のアーケード。


『床屋の入り口で回るオブジェ』をほうふつさせるカラフルな柱と、部分的に電飾の壊れた年季入りの看板の向こうに続く道の両脇には、沢山のぼりが立ち、それに負けない程の人々で賑わい……みんな、とても楽しそう。


 アーケードをくぐってしばらく歩いていると、不意に太郎さんが先頭に出て立ち止まり、お店の看板を指をさし


「ほらそこ、携帯電話買うなら僕とジョニーも一台目からずっと世話になってる、お勧めの店だよ」

「せやな、品揃えもええし、店員さんも親切やし」

ジョニーさんも太鼓判を押すように頷きながら賛成するので


「では、その店にします」

「小さい店ね……他にないの?」

「あるやろけど。わいらこの店以外、行った事無いからな」

「つかえないわね……でもまあ、皆同じ店なら、何か困った時とかめんどくさくなくって良いわね」


 意見が一致したので、さっそく自動ドアの店内に……

と、品揃えの多さに驚き目を丸くし入り口で立ち止まっていると私達に店の奥にいた店員さんが、歩み寄り話しかけてきました。


「いらっしゃいませ、今回はどのようなご用件でしょうか?」

 太郎さんが私と真弓を見ながら

「はい、今日初めて携帯電話を買う彼女達にあうものをお願いします」


 店員さんは軽くお辞儀をすると、取り出したパンフを指さしながら

「かしこまりました……ではまず、どの『キャリア』と契約なさいますか?」


『キャリア』耳慣れない何やら専門的な言葉に戸惑ってる私に、太郎さんがそっとアドバイスをくれます。

「携帯電話の『キャリア』とは……携帯電話の通信サービスを提供している会社のことで、大小いくつかありますが、僕とジョニーはBOKOMO(ボコモ)。メガネ君先輩はOU(オーユー)、と契約しています」

「ありがとうございます、では私達も太郎さん、ジョニーさんと同じBOKOMO(ボコモ)にします」


 私は小さな声で太郎さんにお礼を言い、店員さんに向き直って、さきの質問に答えました。

「BOKOMO(ボコモ)の携帯でお願いします」


 再び店員さんは軽くお辞儀をすと、一呼吸後つづけて質問してきました。

「BOKOMO(ボコモ)ですね、かしこまりました……お好きな色や、ほしい機能がお有りでしたら、おっしゃって下さい」


これならすぐに答えられると、私と真弓は身振り手振りで順番に答え

「はい、色は白で……私のような初心者でも使いやすい携帯電話があれば、お願いします」

「あたしは可愛いピンクで……カメラとかメールで遊べる楽しい携帯がいい!」


「かしこまりました。少々お待ちください」

 そう言うと、店員さんは店の奥に行き陳列棚から幾つか携帯電話のサンプルをトレーに乗せています……と、太郎さんが私の肩を叩いて


「ごめん、ちょっと長くなりそうだから僕達、あそこの待合コーナーで待ってるので、何かあったら呼んで……」

申し訳なさそうに小声で待合コーナーを指差すので「はい、かまいませんよ」頷き返事をすると太郎さん達は待合コーナーに向かって行きました。


 そして戻ってきた店員さんは、テーブルの上にパンフレットとトレーにのせたサンプルを置き、照らし合わせながら、一つずつゆっくりと説明し始めまいた。

「こちらの白い携帯電話は『ガラパゴス式の簡単携帯』といい、液晶やボタンの文字も大きく、機能も必要最小限で、お年寄りから初めて携帯電話をもたれるお客様まではばひろく、入門機として人気が高い商品でございます……特にお勧めの機能は画面下に有る三つのボタンで、一つずつ電話番号が記憶でき、緊急時等には、本体下のボタン一つで相手の電話を呼び出すことが出来とても便利です」


 なんともたたみかけてる店員さんに圧倒されましたが……『簡単、初めて』という言葉に、私は迷わず、その携帯電話の購入を決めました。

「ガラパゴス式というのがまだ分かりませんが、いいですね……決めました、その携帯電話にします」


「ありがとうございます。ガラパゴス式とは、このように液晶と操作ボタンが二つ折り構造となり、コンパクトな携帯電話の総称となっております……お分かりになられましたか」

「はい、ありがとうございます」


 店員さんは軽くお辞儀をして、今度は真弓に向かって説明を再開しました。

「では説明を続けさせていただきます……こちらの画面の大きく薄い商品はスマートフォンという最新機種、そのなかでも次世代携帯と噂され……口では説明しきれないほど無数の機能が有り無料更新により可能性は、まさに無限大! 音声入力メール機能もその中の一つで、カメラ機能は、有効画素数一億画素を超え、今後カメラのために買い替える必要なぞございません! いかがでしょう!」


声高らかに近寄り身振り手振りで説明する定員さんの熱弁に、さすがの真弓も、すこしひき気味に一瞬顔をこわばらせましたがすぐに購入を決めました。

「……すごい携帯みたいね……それに決めたわ、色は?」


待ってました、おいうちとばかり店員さんは笑みを浮かべ

「二十四色ございますが、当店だけの特別サービスでオーダーメイドにて色や模様もその場でお作りいたします」


「じゃあショッキングピンクで、画面が傷つかないようなコーティングもお願い」

真弓は笑顔で即答します。


 そして私と真弓は、コースプランの説明と決定、契約規約書へサイン、電話番号やメールアドレスの決定、基本的な操作の説明の後、代金の精算を済ませるなどもろもろの手続きを淡々と済ませ……携帯電話を受け取り


(『アストラルワークス(魔法)』と同様、契約の後に手にするという事(もの)は、やはりこうも重いものなのでしょうか……)


 すごく軽いと噂される携帯電話もこの時だけは、手にずしりと重たく、心に渇を入れられた感じがしました。

リーディング、していただき……サンキューベリー マッチョ!

『山田太郎たちの恋物語・Boys Meets Girls?』

第九部『祝・初携帯』

いかがでしたか? 気に入っていたたけたら是非

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ベリーうれしく、筋トレの励みとなります。

よろしくプリーズ、お願いします。


by.火口(太郎達の英語教師)

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