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カラオケ de 歓迎会(後編)(太郎)

「バラードみたいな国歌でしんみりした空気を換えるあたしの歌! さあみんな! テンション上げていくよ~!」

拳をを振り上げる真弓に「イェ~イ!」ジョニーも声と拳を上げかえす


 激しいビートの重低音が部屋を揺らす。

振り付けつきで歌う真弓が、僕達のテンションを一気に上げていく!

(やはりカラオケはこうでなくちゃ)


 そしポーズをきめて歌い終えた真弓は、満足気な顔で軽く肩で息をしては、勝ち誇ったような表情でジョニーを挑発する。

「どう? あたしの歌は?」


 ジョニーは少し顔をゆがませ悔しげな声で

「なかなか上手いやんけ……でも、わいかてそんくらい!」

と強がってはみたが、通用するわけが無く

「どうかしらね?」

軽く鼻で笑い流した真弓は椅子に座った


(つくづく、真弓ちゃんとジョニーは犬猿の仲だ)


「次はお姉ちゃんの番だよ、頑張って!」


 リレー競争のバトンの様に、真弓からマイクを手渡された優子は

「ええ、でもあまり期待しないでね」

と立ち上がりモニターの横へ移動するなり一礼……マイクを両手持ちし、少し首をかしげたように歌い始める。


 優子の歌と声は、真弓とは対照的に、優しく包みこまれる感じがして、テンションが少し上がりすぎてる今の僕達にはぴったりだ。

演奏が終わり、歌い終え軽くお辞儀をする優子に……メガネ君先輩と真弓が拍手をし、つられて僕とジョニーも拍手をした。


そして椅子に座った彼女が、ジョニーにマイクを渡すそうと腕を伸ばした時……何かが光った!


(指輪だ……)

 実を言うと僕もジョニーも、以前から真弓さんが指輪をしていたのは知っていたけど……まさか優子さんまでとは……と、僕は少しかまをかけて話だす。


「その指輪に負けないくらい、すごくきれいな歌声ですね」

「ありがとうございます」

「いやあ指輪と言えば、真弓さんがしてたのは知ってたんですが、まさか優子さんもしていたなんて意外です……もしかしておそろいですか?」


「はい、使っている宝石意外は同じ指輪です」

「いいでしょ~あたしのママと、お姉ちゃんのママからのプレゼントで……いつも付けてるの」


 そう言って。真弓は自慢げに、右手にしている指輪を見せびらかせる……銀のリングにブラックダイヤ……一方優子さんのは、銀のリングにダイヤモンド


「たしかに、よう似合っとるけど……指輪して登校しとるやなんて、校則でアカンて書かれとるんとちゃうか?」

意地悪そうに言うジョニーに……生徒手帳の校則など、一度も読んだ事のない真弓の顔が曇る


「それなら心配ないよ……ほらこのとおり」

 とすかさずメガネ君先輩が生徒手帳を広げ指をさし、フォローに入る。

なになに要約すると……

『染髪・過剰な装飾をしての登校を原則禁止するが、似合っているなら良いんじゃね?』バイ校長……って軽!


「なるほどどうりで、わいの茶髪も大丈夫なわけや……て、これ地毛やけどな………とまあこれにて一件落着……よっしゃ、いよいよわいの番やな、最初から十八番でいくで~!」

気合十分にマイクを握り締め、勢いよく立ち上がるなりりさっそうとモニターの横へ……


すると聞き覚えのある前奏に『この曲は』僕はふと思い出した

(あれ?これって)

……あの時堤防でジョニーがしてた鼻歌だよな、上手いけど曲名や歌手が分からないや


妙な気配がし、横を見ると僕の横でメガネ君先輩が、鼻息荒くなんとものりのりで激しく体を動かしている

(ダンスしてるつもりなのかな? しかし部長のいげんまるつぶれだ)


そして、ジョニーもポーズをきめて歌い終わり、仕返しとばかり真弓をみおろし鼻で笑って見せた


「どうや、わいの歌は! しびれたやろ!」


その言葉に真弓は苦笑交じりに答え、最後に質問をつけたした

「あんな程度じゃ、しびれて下さいってお願いされても無理ね……でも、そこそこ上手いじゃない……ところで今の、なんて歌で、どこで知ったの?」

「まあ、お褒めの言葉おうきにな……この歌はな! わいの好きなアニメ『どろどろトライアングル』の歌や」


「うそ、そんな歌あたし聞いたこと無い!」

苦笑交じりに答えるジョニーに、真弓が声を上げかみつく


「そりゃそうや、限定版CDにしか入ってないスペシャルソングやからな……ってもしかして視とる?」

少し驚いたようにたどたどしい口調できき返すジョニーに、我にかえった真弓は

「そ、そんな夕方してる子供っぽい番組、視てるわけないだしょ、そう、近所の近所の女の子が視ていつも話してくれる、ただそれだけ、それより」


 顔を赤くし早口で答え、微妙な空気と話題を流そうと「はい!」強引にマイクを突き出す……受け取った僕は、ジョニーとおなじてつをふまないように、空気をよみ、考えカラオケランキングから今流行りの無難な邦楽を選曲し、歌い始めた。


(あれ?)

 盛り上がるであろうサビの部分を歌っているのに、雰囲気は少しも好転しない。それどころか、真弓ちゃんとメガネ君先輩が不満気な顔をしている……。

(おかしい……こんなはずじゃ)

そして微妙な雰囲気のまま歌い終えると……


 うかない表情で腕組をしている真弓が僕を見てため息をつき、はっきりとした口調で

「ごめん、ちょっときついこと言うけど、これがあたしの率直な感想だから……空気をよむのは大切、だけど……なに今の歌! 空気のよみすぎで、ただ歌ってますってだけの空っぽな歌声で、つまらない……期待してたぶん正直がっかりだわ」


 そこにメガネ君先輩が、少しフォローを入れつつ……提案を着け足してきた。

「ははっ……真弓ちゃん、言い方きつすぎ……けど今のは、僕も同意見かな……そこで提案する……僕が歌った後、真弓ちゃんとジョニー君、優子ちゃんと太郎君のデュエット対決、というのはどうだろう?」


『対決』という言葉にジョニーが勢いよく立ち上がり、まだ少し冴えない表情の真弓を指差し

「デュエットなら同じ土俵や……今度こそ、わいの方が上ってとこみせたる!」


 みえみえの挑発が再び真弓の勝負魂に火をつけ……彼女の表情をいきいきとさせる。

「ふっ……その言葉、のし付けて返してあげる!」


 僕も『汚名挽回』とばかり気合を入れなおし、優子にお願いする。

「優子さん、歌う曲……僕が選んで良いかな?」

優子は微笑み頷いて答える

「はいもちろん……ですが、私も歌えるものでお願いします」



 そして『なにを歌うか』相談しながら互いに曲番号を入力して……まずは真弓&ジョニーからスタート。


 右手で頭をかくジョニーに、天井を見上げ息を整える真弓と二人共、目を合わせることなくモニターの側に並び、マイクを構える……曲名が表示されメロディーが流れはじめる。


 大人の雰囲気漂う情熱的なダンスポップだ……。

ジョニーが渋く『着いてこれるか』とばかり力強い歌声で攻める! それをあえて正面で受けとめながら『余裕、あんたこそ着いてこれるかしら』と前進し、自己主張するとても艶のある真弓の歌声!

気づくと二人は向き合って、ぶつかりあいながらも互いを高めあいいつしか二つの『魂の歌声』となり聞く者にシーソーゲームの様な大人の恋の駆け引きを連想させる。

 そして歌い終わった頃には、半分夢の世界で、拍手をするのを忘れるほど聴き入っていた。


「ほい次、太郎と優子ちゃんの番やで」

ジョニーからマイクを渡され我にかえることが出来た僕は「ありがとう」と慌てて立ち上がり画面の側に……僕と優子の歌が始まる。


 この歌は有名な海外アニメ映画の日本語訳された主題歌で、一度聞いただけで大好きになり……何度も口ずさんでるうち、今では僕の十八番の一つとなっている。

僕は胸を張り女性をエスコートするように自信たっぷりに歌い始めたが! エスコートを受け優雅に歩み出る姫君の如く比べ物にならない程の、優子の歌唱力!

たちまち僕は弱気になりかけたた時……優子の歌声が変化し、僕を優しく包み込み勇気付けてくれ……最期までしっかりと歌うことが出来た!


気付けば……僕も、ジョニーも、優子も、真弓も、とても良い表情で笑っていて、それを見て満足げに頷いてるメガネ君先輩がいる。


 それから僕達は……喉がかれるまで歌いつづけたため、最期に合唱しようと予定していたのを諦め

最後、メガネ君先輩が音頭をとり「では文芸部の活動と発展を祈願して……」と、三本締めをして終わり……カラオケルームを出た。


「今日は楽しかったね」

「ありがとう」

「又やろな」

「今度は採点勝負よ」

「なに~」

 など軽く談笑しながら店の駐車場に出た僕達に、メガネ君先輩がなにかを思い出したかのように

「あ……そういえば今日、君達に渡したい物が有るんだった……手をだしたまえ」


 僕達は顔を見合わせ、言われるがまま手をだすと、メガネ君先輩は一人に一つずつ鍵を渡していく


優子が鍵を見ながらメガネ君先輩に質問する

「これって図書……部室の鍵ですよね? 部員の皆さん全員が持っているのですか?」


メガネ君先輩が首を横に振り答える

「いや、確かにそれは部室の鍵だが、部員として持ってるのは僕達五人だけだ……この前の図書室で読書する姿が気に入ったから、顧問にお願いして特別に作ってもらった……」


優子、真弓、ジョニー、僕がそれぞれ礼の言葉を言う

「ありがとうございます、大切に使わせてもらいますね」

「特別製か……ありがとね」

「サンキューやで先輩」

「先輩ありがとうございます」


 メガネ君先輩『アキバ系』というか、少し代わってる雰囲気がして、いまだに慣れない人だけど……ここまで気に入られてるとは、なんとなく嬉しい。


 カラオケの余韻と、特別に鍵を作ってくれた感謝の気持ちに浸っている僕達をよそに、何か急ぎの用があるのか、メガネ君先輩はさっそうと自転車にまたがるなり、軽く手を振り

「これにて新入部員歓迎会を閉幕とする、では皆また部室で……おつかれ~!」

立ちこぎで駐車場を出て、見る間に遠ざかり姿を消していく。


 そして完全にメガネ君先輩の姿が消えたのを確認した僕は、とりあえず帰ろうとジョニーのほうを向き口を開こうとした時、後ろから真弓が肩を叩いてきた

「ちょっと、あんた達、明日って暇?」

予定は無いが暇人と思われたくない、僕はわざと少し考える様なポーズをとってから答える

「とくに予定は無いけど……なに?」


 真弓は少し照れくさそうに上目遣いと、甘えた声で

「あたしとお姉ちゃんの携帯を買うのに付き合ってくれないかな?」

僕は、以前一人で携帯を買った時のことを思い出しながら説明する

「それくらい僕達が行かなくても大丈夫なんじゃ……まあ、学生書と、印鑑と、貯金通帳があれば大丈夫だと思うけど」


すると真弓は俯き、自信なさげに

「そうなんだろうけど……」

それを見て、彼女の横にいた優子が頭を下げる

「私達、こんな契約なんて事初めてで、少し不安なんです……お願いします」


さすがに頭を下げられると僕は断り辛くなり……しかし女の子と町を歩くのは少し照れくさく……

「そこまで言うんなら……分かった、付き合うよ……ジョニーも来るよな?」

僕はジョニーの肩を叩くと

「女の子に頭下げられとんねから男として簡単に断れるかい! まかしとき」

ジョニーは自信満々に胸を叩いてみせた


これで一安心、僕は一息つくなり、早速集合場所と時間を提案して確認を取る

「それじゃ集合時間と場所だけど、明日午後一時に校門の前で待ち合わせ、という事でいい?」

「オッケーや」

親指を立てるジョニー

「了解!」

「よろしくお願いします」

頷く真弓の側で軽くお辞儀をする優子

「すぐに決まってよかった、こちらかおそよろしく」


と……不意に五時を知らせるチャイムが鳴り響く

「五時かじゃあ、そろそろ帰ろうか……また明日」

「もうか……ほな明日!」

と手を振って自転車にまたがるジョニーと僕に

「じゃ、明日よろしくね~~」

「今日はありがとう……では明日、よろしくお願いします」

優子はお辞儀をして手を振っている真弓と一緒に歩いて帰りだし、互いに帰路へつく



こうしてめでたく僕とジョニーは明日優子と真弓の、初めての携帯電話の買い物に付き合うこととなった。

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