カラオケ de 歓迎会(前編)(太郎)
今日は待ちに待ったゴールデンウイーク初日!
青く晴れわたった空……僕は、ポチの散歩を終えるなり、花子の「どこ行くの?」無限ループ地獄につかまらないためにも……ポチを犬小屋につなぎ『口止め料』代わりに、多目にえさをやるなり、すぐさま『カラオケBOXドレミ』に向かって自転車をはしらせる。
『待ちに待った』と言ったけど、僕はそれほどカラオケが好きでも上手くもない、けど皆で集まり何かをするのは好きだ。
徐々に看板が見え……店が近づくにつれ、無性にテンションが上がり、腕時計を見ると
(午後一時半、よし予定より早く着いた、まだ誰も来ていないだろう)
『だが世の中そんなに甘くない、理想と現実は常に正反対』
「一番乗りだ~!」
などと上機嫌で歓喜の声を上げながら駐車場へ飛び込んだと同時に、そのテンションは空回りし、僕は赤面した。
お察しどおり、とっくに全員集合して、不覚にもさっきの声を聞かれたらしく皆、目を丸くして僕を見ている。
「はははごめん。でも皆早いね、いつ頃から来てたのかな」
苦笑いしながら投げかけた質問に
優子と真弓は「一時ごろには付いてました……で」
ジョニーにいたっては……開店前から待っていたそうで自販機横のベンチで横になって寝ている。
(どうりでさっき彼の家に迎えに行っても居なかったわけだ)
ちなみにメガネ君先輩は姉妹と同じく一時ごろ着いたそうだ。
「時間どおり、皆そろいましたね」
「じゃあ、行こうか!」
メガネ君先輩の号令で、ジョニーが上体を起こし目をこすりながら欠伸をする。
「「「はい」」」 「ふぁ~い」
僕達は、自動ドアをくぐり店に入ると、自動で流れるチャイムに、のれんの向こうから来た店員が正面受付カウンターに立つ。
「いらっしゃいませ、五名様でよろしいですか?」
「はい」
「ではこちらに代表者様のサインと連絡先の御記入をお願いします」
メガネ君先輩が、店員から差し出された小さなプリントに記入をしている間、
僕達は彼の後ろで『なに歌う?』など軽く談笑をしていると……
「え、何で⁈」
ふいに、真弓が驚いたように声をあげて横を向いた事に、つられて僕達ももその視線の先を見ると……二階に上がる階段の前、重そうな荷物を両手に持ってる
長く白いひげをはやしたお爺さんが一人。
「もしかして知り合い?」
「はい、まあ、近所のお爺さんなんですが」
彼と目をあわさないよう視線をそらしながら答える優子さんも妙(挙動不審)だけど
このカラオケBOXにも、他店同様マイクは在るというのに、そのお爺さんはなぜマイクを持参してるんだろう? しかもマイクスタンドまで。
ちょっと変わったお爺さん……だけど重そうな荷物に困っている……目に入った限り僕は見てみぬ振りが出来ず、お爺さんに近づき尋ねる。
「すいませんお爺さん、もし良ければその荷物、僕が持ちしましょうか?」
するとお爺さんは
「これはこれは、わざわざ、すまんの~」
と頭を下げながら僕に荷物を預け、ゆっくりした足取りで階段を上ろうとした時だ
突然ジョニーがお爺さんの後ろに立ち
「太郎だけにええかっこはさせへんで! ほな、わいは爺さん運んだる!」
そう言うなり、うむも言わさず彼はお爺さんをお姫様抱っこして階段を上がりはじめた。
(おいおいジョニー、さすがにそれにはお爺さんもびっくりして目を丸くしてるだろ?)
そして僕とジョニーは階段を上がり、お爺さんの入るカラオケルームの前で彼を降ろし、預かってた荷物を返し別れた
別れ際にお爺さんに「ありがとう……君達に幸あれ」と手を握られ、ちょっと鼻先がむずがゆく照れくさかった。
僕とジョニーが受付カウンターに戻ろうと階段を降りていると、
無事手続きを終えマイクが二本入ったバスケットを手にしたメガネ君先輩、優子、真弓の三人が、僕とジョニーを見ている。
その視線に一層照れくさくなった僕は思わず苦笑いしてしまう。
「わが後輩ながら、いや~感心感心」
腕組をしたメガネ君先輩が、まるで我が事の様に、満足気な顔を縦に振っている。
「お二人共お優しいですね」
優子が近づいてきて、僕とジョニーの顔を見て褒めてくれた。
(こうなると真弓さんの反応が気になる)
視線をうつすと……案の定。真弓は少し悔しげにジョニーを見ていやみを言う。
「あんた、ひ弱と思ってたけど意外と力あんのね?」
「なんや、なんならここでお前もお姫様抱っこしたろか?」
「冗談やめて! 考えただけで寒気がするわ!」
顔をこわばらせ後ずさりする真弓。
(はは……いくら本心だとしても。そこまで嫌がらなくても)
お調子者のジョニーもこれにはこたえたのか、黙り込んでしまう。
と……まあ、いろいろあって僕達は店の一階、奥のカラオケルーム『五番』に入る。
窓の無い薄暗い部屋の中、L字型のソファーが有り、優子さんの隣に座りたかったが言い出せない。
そして、思春期男女間における暗黙の了解からか……自然と僕達は。メガネ君先輩を中心に、男女に分かれて座っていた。
「飲み物注文するよ……この店は、ソフトドリンク無料で飲み放題がから……みんな何飲む? ちなみに僕はダイエットコーラ炭酸ぬき」
と言いながらメガネ君先輩が壁の受話器を取る。
「お、メガネ君先輩。カラオケで炭酸ぬき選ぶなんて、歌う気満々やね……ならわいは炭酸入り野菜ジュースや!」
「何その飲み物⁈」
真弓が驚くのも無理はない、この店出だされる飲み物。その大半は
カクテル好きな店長が作り上げたオリジナルが多数……ということで
「はは、落ち着いて真弓さん………そこにメニュー表有るから」
「ありがとう、てすご……『デビルエール』って、あたしこれにする……はいお姉ちゃん」
(ライチ味の赤いジンジャーエールだ)
「ありがとう、私はアイスコーヒーをお願いします」
「僕も同じくアイスコーヒーを」
「ゼロコーラ炭酸抜き」
「OK」と数分後……飲み物が運ばれてきた。
(次の問題は……どんな方法で歌う順番を決めるか、これは僕以外の誰かが言い出さないと始まらない、さあ)
他力本願に見回していると、メガネ君先輩がマイクを持って立ち上がった。
「では歌う順番だけど、手っ取り早く『部長権限』ということで最初はこの会の発起人で部長でもある僕が、次にレディーファーストで~どっちから?」
メガネ君先輩はマイクと首を傾け、優子と真弓に質問すると、すぐに真弓が身をのり出す様に手を上げ
「はい! あたしから歌う」
メガネ君先輩は頷いて、言葉をつづける
「了解……では、真弓さん、優子さん……続いて男子は開店前から待ってた気合十分なジョニー君、そして太郎君……この順番で回していくよ!」
彼の決定に全員が『異議なし』と頷き……思いのほかスムーズに歌う順番が決定すると、早速メガネ君先輩は選曲機を操作曲目コードの入力し
「送信と」
(カラオケのトップバッターは、その場の流れの元となる大事な役! さあメガネ君先輩は何を歌う?)
全員の視線が画面に注がれ……曲名が表示された瞬間、僕、ジョニー、真弓はこけかけた。
(なぜ日本国歌? アニソンなどで笑いを取りに来るものと思っていた)
僕達四人。いまひとつ場ののりについていけず、気まずい雰囲気と思いきや、優子だけが小さく上体を揺らしながら、小声で国歌を合唱している。
(たぶん……二人はこの歓迎会を大切な行事だと思い、国歌を最初に選曲し歌ってるんだろうな?)
と勝手な想像で納得してる内に、歌が終わり……
「いや。少しはもろ上がると思ったんだけどな」
まばらな拍手の中、メガネ君先輩が苦笑いをしながら、真弓にマイクをさしだし……受け取るなり彼女は、モニターの横に移動し、振り返り、一喝。
「バラードみたいな国歌でしんみりした空気を換えるあたしの歌! さあみんな! テンション上げていくよ~!」
拳をを振り上げる真弓に「イェ~イ!」ジョニーも声と拳を上げかえす
読んでくれて、ありがとうございます。
『山田太郎たちの恋物語・Boys Meets Girls?』
第八部『カラオケde歓迎会』
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だから、よろしくお願いします……ってお兄ちゃん、居ない(カラオケ熱唱中)
by.花子(太郎の妹)




