再開(太郎)
翌週の四月十六日月曜。窓の外は雲一つ無い快晴。
ここは『県立メリヤス高校』二号館三階の一年三組……僕達の教室だ。
僕とジョニーは、今日も朝のホームルームまでの僅かな時間を利用し、教室の後ろに並ぶロッカーにもたれるなどして、他愛もない話で笑いあう。
どうやらジョニーは、いまだ真弓に一発ノックアウトされた事が忘れられないらしく、悔しげに顔をゆがませ話しかけてきたので、とりあえず、耳をかたむける
「くぅ~、しっかしあの真弓っつうアマ、今度おうたら絶対リベンジかまして『キャン』言わしたる」
その台詞、これで何度目だろう……いいかげん飽きて来た。
それに、大半の原因はジョニー(本人)にあると思うけど……まあ、ここで言うとややこしくなりそうだから、控えておこう……でも言いたい。
「女の子に仕返しなんて……男らしくないと思うけどな?」
「そうか? う~ん。言われてみると確かにそうかもな……せやったら」
「せやったら?」
「わいを殴った詫び代わりに。あの乳揉んで、あんあん」
「おい!」
「なんや……って揉めるほどあらへんかったなくそ~! やったらもう。メイド服着せて、わい専属のメイドにしたる~」
「はは……」
「自分専属メイド……これこそ男の浪漫や!」
「いや……それはたぶん違うと思う」
時々出てくる『オスの本能』丸出しのジョニーには、かける言葉も無いよ。
でも真弓ちゃんのメイド服姿か、それはそれで、ちょっと見てみたいかも……。
その熱弁『オスの欲望』につられ……つい、イメージを膨らませていると……ジョニーが、僕の頬をつついては、席後方に並ぶ、空席二つを指差しながら、質問してきた。
「こないな席、昨日帰る時には無かったよな?」
「うん……たぶん転校生じゃないか?」
僕は思いつきで適当に答えると、ジョニーはにやけながら
「まだ四月やってのに。珍しいな……でも、可愛い女子やったらええな~」
相変わらずの彼の言葉に苦笑する。
「うん、でもあまり期待しない方が良いと思うよ……もし男子だったら」
「う、言うな(ほんまに男子になってまうやろ)……ま男子やったら、友達になる」
そして数分後……チャイムと共に担任教師(林森先生)が入ってきた。
「さあ始めるぞ。席につけ」
閉まるドアの音と、声に『もう来たのかよ~』と言わんばかりのざわめきと、表情を、きょうだいに立つ教師に向けながらを、おもむろに席に座る。
「では出席を取る前に、今日は転校生を二人紹介する……さあ入ってきたまえ」
「はい」
「はーい!」
ドアの向こうから聞こえた女の子の声。
いっせいに尻が浮くほど身をのりだし、視線をドアに注ぐ男子達……とは対照的に、女子達は、そんな本能丸出しの男子に、ため息を漏らしている。
悲喜こもごもの中、ドアが音を立て開き……男子お待ちかね、二人の女子生徒が姿を現した。
予想以上の可愛さに「「おお……」」とかんたんの声が聞こえ。
自他共に認める、クラス一番のすけべであるジョニーが急に立ち上がった!
……が、少し様子がおかしい……入り口を指差し、目を白黒させ驚いた顔で硬直している。
(何故だろう)と彼の指し示す先を見、驚きと共に、先週夕方の川沿い堤防での出来事が、そうまとうのごとく脳内を駆け巡る。
そう、ドアを開け入ってきた二人の女子生徒とは、優子と真弓だった!
しかし昔から『噂をすれば影』とはよく言ったものだが、今回はさらに上『噂をすればご当人』だ。
そろって目を白黒させている僕達を、見て見ぬふりかおかまいなしに、先生はすらすらと黒板に二人の名前を書き、彼女達を紹介し始めた。
「え~、上田優子さんと、上田真弓さんだ」
名前を呼ばれると優子は軽く会釈をし、真弓は微笑み皆に手を振った。
「皆、仲良くするように」
先生の呼びかけに
「「は~い」」
と男子中心の野太い返事が返されている中、一人の男子生徒が手を挙げて立ち上がり
「二人は姉妹なんですか? どちらがお姉さんなんですか?」
その生徒の質問に、すぐ優子が一歩前に出て
「はい、おっしゃるとおり私達は姉妹で、私が姉の優子です」
手のひらで指し示し丁寧に答え終え下がると……先生が回りを見渡しながら
「他に質問したい者は居るか?」
質問を募集する。
すると次は、女子生徒がすぐに手を挙げ、先生の返事も待たず机に手をつき立ち上がり、首をかしげながら質問をなげかける
「姉妹なのに、どうしてそんなに見た目が違うの?」
(お、見た目の違いにいついては僕も気になってた……いい質問だ)
再び優子が前に出て答えはじめるが、すぐに言葉をつまらせた
「その、私達姉妹は、母さんが違う、いわば腹違いの姉妹で……その」
困り、うつむいている優子を察して、真弓がすかさず、姉を下がらせるなり、前に出て話し始めた。
「あたし達のパパったら、お姉ちゃんのママが妊娠したのが嬉しくなって『祝いだ~』ってお酒飲んで、泥酔して……その勢いで大人のお店にいた外国人美女も妊娠させちゃって……で、あたしが生まれたってわけ……まったく、困ったパパでしょ? でもこれ以上詳しく聞くのはナシね!」
『なんとも複雑な家庭事情』という、なかなか重いテーマを笑い話風に答えたつもりだろうが……大失敗。
予想を越える真弓の答えにクラス中が静まり返ってしまった。
苦笑いする真弓に僕を含め、きっと皆((彼女達のパパさんっていったい……))と思っているに違いない。
沈黙する教室……と先生が、出席簿の辺で机を叩いて、優子達に向かい、僕とジョニーの後ろに並ぶ、空席二つを指差し
「とりあえず君達の席は、窓際の一番後ろ……あの、空いてる席に座りなっさい」
「「はい」」
そして優子達が指定された席に移動し、座ろうとした時。
「あかん、このままやとケツ蹴りまくられる」
背後から突き刺さる、真弓の視線に危機感を感じたジョニは、小声で呟くなり、指を唇に当てると……何か閃いたらしく……不適にほくそ笑むなり
「はいはい」とてを挙げ、わざとらしいまでの明るい声を上げる。
「お、村上なんだ? 女子がそばにいると集中出来ないか?」
「ははは、うまいこと言うな先生。わいって背え高いやろ……上田さん。とくに真弓さんが、黒板見やすいように席変わったげたいんやけど……まぁ『レディーファースト』ちゅうやつですわ」
と言うなり、先生の返答も待たず、席を持ち上げ
「ふん、これで逆に『まいった』っちゅうまで……」
小声でほくそえむジョニー……だが。
「調子の良いこと言って、騙されないぞ……お前の場合、単に授業中の居眠り目的だろう……却下だ!」
あっさり、彼の提案は、先生の一言で却下された。
「そんな~」
肩を落としうなだれているジョニーに、優子が歩み寄り
「真弓に対してのお気持ちを無駄にしない為にも、よろしければ私にその席を譲っていただけませんか?」
この提案は、逆にあっさり受理され……ジョニーが優子に礼を言う
「おうきにやで優子さん……これで、ケツ蹴りまわされへんですむわ」
「ケツ?」
笑顔を向けるジョニーの言葉に『はてな』と首をかしげる優子。
結果……窓際最後尾の真弓から見て……。右にジョニー・前に優子・右斜め前に僕、という配置になった。
とりあえず望みどおり。最後尾の席に座ることの出来たジョニーは気持ちを切り替えようと、思い切り背もたれにもたれ伸びをする。
「のんびり伸びできるよて……やっぱ最後尾の席が一番やで」
「あたしなんて、さらに窓際よ。良いでしょ~」
ジョニーは合いの手を言ってくれた相手を……
「ほ~、そりゃよろしいな~」
見ては再び、一瞬で金縛りに!
「えっ? なんでこうなんの?」
皆さんもお分かりと思う……そう『ぽかん』と口を開くジョニーの視線の先には……ひきつった笑顔を返す真弓が居るのだ。
「あら? あたしじゃ、ご不満かしら?」
そのいっけん、脅しともとれる質問に……思考停止同然のジョニーは
「ええっと……うん」
(まったく……正直者というか、おやくそくというか)
「ふざけるな~!」
真弓は手提げカバンでジョニーの後頭部を叩き、彼の顔を机にしずめた……
そんなこんなで、あわただしいホームルームが終わった。
あたしの目の前に居る読者さん。今日も読んでくれて有りがとう。
『山田太郎たちの恋物語・Boys Meets Girls?』
第五部『再会(太郎)』
どう? 面白かった?
もし気に入っていくれたら、嬉しいな……そうだ
ブックマーク ・ ☆一つでも、評価するの、忘れないでね
あたしもお姉ちゃんも、みんなが元気に頑張れるから、
よろしくお願いしま~す!
by.上田真弓




