彼等の事情(その三)(太郎)
気付けば太陽は、もう少しで完全に沈もうとしている。
いつの間に体調が回復したのか、ジョニーは僕の側で立って、うらめしそうな顔でペットボトルを見下ろし、一呼吸、口を開いた。
「その、ペットボトルやけど、なんやっら、わいが処分しといたるわ」
(そんなこんたんみえみえの簡単な手に、誰がのるものか)
僕は、ひざに手を押しあて、軽くジョニーを睨むように立ち上がりながら
「こんたん丸見えだぞ! これは僕が処分する」
返事も待たず、強引にペットボトルを鞄へと押し込む僕に、ジョニーは眉を寄せ不服そうな表情をしたが、すぐににやけ顔になって言い返してきた。
「そんな事言うて、家に帰って誰も居らん所で、ペロペロチューチュー、するつもりやろ~。わあいやらしい」
「いい加減、しつこいぞ」
僕からの最後通告を納得してくれたのか、ジョニーは、短く苦笑いをしてペットボトルから視線を外した。
そして……おもいのほか周囲が暗くなったことに、僕は急いで腕時計を見ると
『十八時四十分』妹こと山田花子、小学三年生との約束を思い出し、慌て、優子さんのハンカチをぐしゃぐやのまま適当にポケットへねじ込むと、ジョニーに向かい早口で
「花子とポチの散歩当番、約束してたから、ごめん! 先帰る」
と言い放ち……堤防にジョニーを残したまま、全力疾走で帰宅する
「おう、ほなまた明日」
そして、ここは僕の自宅の前
(やばい大遅刻だ、花子、怒ってるだろうな)
不安感に反省しながら、両手をひざに前かがみで息をしている僕の後ろの方から
「わん! わん!」とポチの泣き声が聞こえ……。
気まずさにひきっつった顔で振り返ると……そこには案の定、ふくれっ面の花子と、文句を言いたげにほえ続けるポチが居た!
「ひどいよ、お兄ちゃん。わたしとの約束、忘れるなんて! おかげで『どろどろトライアングル』見れなかったじゃん!」
「わんわんわんわん」
『花子とポチの大合唱』
僕は、うなり睨み続ける妹より先に、近所迷惑なまでにほえ続けるポチをなだめようと、しゃがみその頭に手を伸ばした。
しかしポチは姿勢を低くし僕の手の平を避け、すかさず僕の背後に回り込むと、ブレザーの腰ポケットからはみ出ている、何かを咥えて引っ張り出した!
(やば、それ! 優子さんのハンカチ!)
花子は、血相を変え焦りだす僕を見るなり、不適に、勝ち誇ったような笑みを浮かべ、手を叩きポチを呼ぶ。
「何かお兄ちゃんが焦ってる! ポチ、よくやった。おいでおいで」
こうなったら、ポチを地面に押し付けてでも、捕まえてやろうと慌てて手を伸ばすが、これも又、見事にかわされ……ポチは、何度も僕の方を振り返りながら花子の足元へ擦り寄る。
花子はポチからハンカチを受け取るなり、目の前で広げ、匂いをかぐと……僕を見ながら、なんともわざとらしい口調で
「あれ? 女の子のハンカチだ、わたしのじゃないし、ママのでもない。いったい誰のだろうね、お兄ちゃん、知らない? ……うん、考えてたら何だかお腹が空いてきちゃった……甘いものが食べたいな」
僕は財布を見て、二千円以下という厳しい自己財政にしぶい顔でため息をもらしながら
「分かった、コンビニのアイスでいいよな……」
「へへ毎度あり……」
満面の笑みをうかべる花子だが、すぐに、ばつが悪そうな顔になり何度も周囲と僕を見
「早く立ってよ」
という言葉に、ばつが悪そうな顔をする妹と、周囲からの視線がいたい理由を瞬間で理解した……そう第三者から見ると、地元の制服を着た高校生が、小学校低学年の女の子(妹)に悔しげな顔で土下座しようとしている……様に見える!
僕はバランスを崩しかけるほど急いでたちあがった、とたん花子が腕に抱きついてきて一言
「いつかハンカチの女の人にあわせてね」
彼女の表情としぐさに、周囲の空気も、もとにもどったように感じ、一安心した僕は、正直な理由をつけて断る。
「それは約束できない……知らない女の人だったからな」
「ちぇ」
不満げな顔をする花子の側で、僕は肩を落としている
(不覚……こんなところで花子に弱みを握られるとは……)
今日も、読んでくれておおきに、ありがとさん!
『山田太郎たちの恋物語・Boys Meets Girls?』
第四部『彼等の事情(太郎)』
どうやった? おもろいと思ってくてたら、下んところの
ブックマーク ・ ☆一つでもええから、評価してくれたら
めっちゃ嬉しゅうて、元気出るよて。
よろしゅう頼むで!
ほなまたな
by.村上ジョニー




