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side storyハルツィット・ルミエール

*今回はハルツィット王子のお話です*

────僕の名前はハルツィット・ルミエール。

ルミエール王国の第一王子だ。まばゆい光のようなさらさらな金髪にエメラルド色の瞳はこの国の王つまり父にとても似ているとみんなに言われている。

父は自分にも相手にも厳しい人だ。家族も例外ではない。僕は物心ついたときから父の考えた厳しい教育、訓練を受けている。それは、いずれこの国のトップに立つ僕のためを思っての父なりの優しさだと母は言っていた。

その通りだ。この国のトップに立ちたければこれぐらいの事は弱音を吐かずに当たり前に出来なければならない。そう自分に言い聞かせながら日々過ごしてきた。


────────


そうして迎えた12歳のバースデーパーティー。このパーティーは僕の誕生日をお祝いすると称した婚約者選びのためのパーティーだ。父からは未来の妃になるものは自分の目で見極めて自分で選べと言われている。……だがこの日の僕はそれどころではなかった。とにかく朝から体調が悪い。

訓練や勉強の定期的なテストの前もそうだが、緊張するとどうしても前日なかなか寝付けず体調が悪くなってしまう。将来この国を背負っていく者としては致命的な欠点だった。それでもこれまでいくつもの難関をなんとか突破してきたからこの日もなんとかなるだろうと思っていた。


けれどすぐに甘い考えだったと後悔することになる。


いつも通り来てくれた貴族の方々と挨拶を交わす。

皆、考えていることは同じなようで、私を婚約者にとぐいぐいアピールをしてきた。たぶん、父の事だからこのパーティーに招待されている令嬢はある程度高貴な身分で僕と釣り合いが取れる者のみであろう。正直誰を選んでも変わりはない。そう考えるとこれまでたくさん頑張ってきたのに父には信頼されてないように思えた。その考えに至った瞬間もともと悪かった体調がもっと悪くなってきた。立っているのもやっとなくらいだ。とりあえず皆にゆっくり楽しんでくれと声をかけその場を後にした。

誰も近づかないであろう庭の影で崩れ落ち、さらには招待されていた令嬢たちの香水が体調の悪い体にはきつかったのか吐き気が止まらず、そのままその場でもどしてしまった。

吐きながら、信頼されてなかった自分が悔しくて涙が出てきた。今まで、どんなにつらい勉強や訓練でも弱音を吐かずに頑張ってきたのに、これまでの努力がすべて無かった事になったみたいで悲しかった。


そんなとき彼女が現れた。こちらに駆け寄ってきて自分のハンカチを差し出しドレスが汚れるのも構わず僕をそっと抱き締めて背中をさすってくれた。なぜだか彼女が触れるたびにだんだんと落ち着き吐き気も無くなり体調も幾分かましになっていた。

彼女に申し訳ないことをしてしまったと非礼を詫びていたらなんと逆に怒られてしまった…でもなぜか父や先生のような怖い怒り方ではなく、なんと言うか力が抜けるような怒り方だった。思わず笑ってしまった。怒られたのに笑顔になれるのは初めてだ。ごめんなさいじゃなくてありがとうの方が嬉しいと彼女が言うので改めて感謝の言葉を伝えると彼女は僕の顔を見つめながら照れたのか少しだけ頬を赤くしていた。お互い見つめあっていると彼女のメイドと名乗るものが、あっという間に彼女を連れ去ってしまった。後からきた僕の側近に連れられ控え室で着替えを済ませた後会場へ戻りパーティーの終わりを告げた。

パーティーが終わってすぐ僕は彼女を婚約者にしたいと父に言いに行った。なぜか理由は聞かれなかったが、すぐに彼女の両親への許可と次の日彼女の家に挨拶に行く約束を取り付けてくれた。

次の日会いに行くと、彼女はテラスで太陽の光を浴びながらうとうとしていた。その姿がとても愛らしく思えた。彼女に挨拶しに行くと、彼女はとても驚いていた。たぶん両親から僕が来ることは聞いていなかったのだろう。そして僕が婚約者になって欲しいと告げるとさらに驚き仕舞いには誰かと間違ってないかと言われてしまった…。だから昨日差し出してくれた彼女の家紋入りのハンカチを返しながら間違ってないと伝えた。だが、困ったような表情で黙ってしまった。王家からの婚約は断れるはずがない、僕がずるいのも彼女が断れないのもわかっていたが、彼女の口から婚約を受けてくれると言う言葉が聞きたかった。素直にそう彼女に伝えると少しの間をおいて婚約を受ける言ってくれた。嬉しくて思わず、彼女を抱き締めてしまった。その後は父には報告に行くべく名残惜しいが、彼女の家をあとにした。

正直あの日彼女に助けられてなければ、心が折れて適当な令嬢を婚約者にしていただろう。


あの日彼女が僕を助けてくれてよかった。彼女が側にいると安心する。それと同時にドキドキもする。今日思わず抱き締めてしまったが、二人きりだったらたぶん彼女を抱き締めたまま離せなかっただろう。彼女、フリージアが好きだ。愛おしくてたまらない。

だからこれからは父に認められるだけでなくフリージアのためにも頑張ろうと思った。


────

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