episode2
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一人になったところで状況を整理してみよう。
私、佐藤 優は事故に遭い、気づいたら乙女ゲーム「君恋」の悪役令嬢フリージア・ブランシュに転生していたのだ。
────って
「納得できるかぁぁっー!…まさか……これは夢とか?!試しに自分の頬を……痛っ!普通に痛いのだけど!って事はほんとに転生してるの?!…ってかなんでよりによって悪役令嬢なんだよ!そこはヒロインじゃないのー?!」
しかもこの悪役令嬢はただの悪役令嬢ではない。悪役令嬢という大役を任されながら、ヒロインの友人もゲームのサポート役も担う多忙な役なのだ。
「多忙な役をこなしたのに最終的にはどのルートでも殺されるってめっちゃブラックじゃん!」
流れ的にはこうだ。
ゲームの主な舞台である貴族が集まる学校「ベル・フルール学園」にヒロインが転校してくる→まぁ、いろいろあってヒロイン初の友人となる→攻略対象全員とフリージアは何らかの繋がりがあり、必然的にフリージアと友人になったヒロインも攻略対象と仲良くなり始める→ヒロインと攻略対象の仲を取り持つ為、フリージアはサポート役に徹する→しかし、途中でフリージアは攻略対象に恋しているということに気づく→ヒロインと攻略対象の応援ができなくなり、二人の仲を邪魔し始める→ヒロインはフリージアという壁を乗り越え攻略対象と結ばれる→ヒロインをいじめた罰として断罪される────
「ってそもそもなんでどの攻略対象を選んでもフリージアが悪役令嬢になるのっ?!恋多き女だなぁ……じゃなくて!絶対他の悪役考えるのめんどくさかったとかコストの問題とか大人の事情でこんな設定になってるでしょ!?」
────
「……まぁ、いろいろ文句言ってみたけど転生しちゃたものはしょうがないか………お父さん、お母さん、みんな、今までありがとう。そしてさよなら。私、頑張るよ。」
────誰にも届かないと分かっているけど、そっと笑顔で呟いた。
「さぁ!しんみりするのはこれで終わり!私がフリージアになったからにはバットエンドじゃなくて絶対ハッピーエンドにしてみせる!」
とベッドの上で仁王立ちし、拳を突き上げながら叫んでいるとコンコンとノック音が部屋に響いた。
「っ!は、はーい」
──ガチャ
「──失礼致します。お嬢様、軽食にサンドイッチをもって参りました。お元気なようですので、どうぞお召し上がり下さいませ。」
とサイドテーブルにサンドイッチと紅茶を持ってきてくれた。
(…やばっ!さっき色々叫んでたのばれた?!ばれてる…?………無表情だからわからん、どっちだ?!)
────グーキュルルル
取り敢えずお腹が空いたので、用意してくれたサンドイッチを頬張る。
「っ?!美味しい!──うん!ラムが淹れてくれた紅茶もとっても美味しい!こんなに美味しい紅茶飲んだの初めてかも!ありがとう、ラム!」
「──喜んで頂き光栄です。シェフにも伝えておきますね。」
とラムは無表情にそう言った。
美味しすぎて、ペロリとサンドイッチを食べ終えると、ふとひとつの疑問が頭をよぎった。
(私って今何歳なんだろう?)
まず、今ストーリーのどの地点なのかが分からなければ頑張りようがない。でも、どうやって確かめようかと唸っていると
「ところでお嬢様、もうすぐハルツィット王子のバースデーパーティーです。明日あたりにはドレスを決めてしまいたいのですが宜しいでしょうか?」
(へぇ、ハルツィット王子のバースデーパーティーかぁ……)
(──?!ハルツィット?!って攻略対象の一人、この国の第一王子ハルツィット・ルミエール!王道の王子様キャラでゲームキャラの中では人気ナンバーワン!フリージアとは同じ歳の……同じ歳?……これだ!!)
「……えーと、そうだね。明日にはドレスを決めちゃおうか!……ところで、ハルツィット王子って今年で何歳になるんだっけ?」
ハルツィット王子とフリージアは同じ歳なので、ハルツィット王子の年齢が分かれば、必然的にフリージアの今の歳も分かるのだ。
この方法なら怪しまれずに自然にフリージアの歳を聞き出せる!
「……?お嬢様と同じ、十二歳になるかと。」
(十二歳……ストーリーが始まるのは確かフリージアが二年になってから、つまり十七歳!って事はストーリーが始まるまで後五年か……)
「────さま?お嬢様?」
気づくと目の前にラムの顔があった。
「うわぁっ?!」
フリージアの歳が分かった事で完全に油断していた。
「……驚かせてしまったようで、申し訳ございません。いきなり黙りこんでしまったので、まだ気分が優れないのかと思いまして、声を掛けました。」
ラムは無表情にそう答えた。
「そ、そうだったんだ!私もボーッとしちゃってごめんね?!大丈夫!とっても元気だから!あはは……」
(一つの事に集中すると周りが見えなくなる癖、直さないと……)
「──明日は朝からドレスの打ち合わせがありますので、今日は早めにお休み下さいませ。では、また朝起こしに参りますね。」
ラムは食べ終わった食器をさっとひとまとめにし、部屋を出ていってしまった。
────再び部屋にはフリージア一人になった。
「……ゲーム開始まであと五年。まだまだ、ハッピーエンドに変えられるチャンスはあるって事だよね?!────よぉーし!これから頑張ろー!おぉー!」
またもやベッドに仁王立ちし、拳を突き上げながら、意気込みを叫んでみた。──今度は声を少し押さえて。




