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九十六話

 隆幸は純粋に驚いていた。晴人も絶句している始末だ。

 「先生……なんで黙ってたんですか」

 晴人が鈍く歯ぎしりする。楓の誘拐も伴い、彼はそこまで心に余裕が無いようだ。

 「なるほどな、実際ゲームを持ちかけられて簡単に承諾するなんておかしかった」

 呪いに関連しているなら話は別だ。責任感が強い先生は、ゲームを参加せざるを得ない。

 「だけど誰なんだろうな、今岡仁という男子生徒は。保高が隠したがったってことは彼女の知り合いだったってことだろうし」

 晴人は首をひねっている。

 「福田先生も今岡さんのことについては教えてくれなかったよな」

 「レストランで話した時だろ? 妙だとは思ってたんだよな。なんでかは知らねーけど」

 今回を含む四件の事件の中の、唯一の死者だ。

 「……! おい、誰か来たみたいだ!」

 ボリュームを絞る晴人の言葉で、一旦話は保留となる。聞けば、玄関口が開く音がかすかにした。スマホの時計を見ると、すでに八時になろうとしている。

 「福田先生だろう」

 「そうですよね。……一体何が始まるんだろう」

 ひしひしと不安が募っていく中、晴人が身を乗り出して玄関口に向かおうと、自習室の扉をそっと開く。窓から差し込む赤い光が自習室に漏れてきた。

 「ここじゃ誰だか見えねーな。タカちゃん、お前は西条と一緒にいてて」

 自習室を出、玄関口に行くようだ。確かにひょろっとした隆幸や真樹より、ガタイがよい彼が言ったほうが安全だろう。

 自習室の机の物陰に身をひそめながら、隆幸は頷いた。


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