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九十五話

 「――ヒ!」

 思わず叫びだしそうになるが、月光に照らされた人影は、とても近しい人物だと証明する。

 「静かに!」

 七三分けと、オールバックの男が、二人揃って口元に人差し指を立てていた。かろうじて悲鳴を呑み込む。

 隆幸と晴人の二人だ。先生を追ってきたのだろう。

 「……あっぶねーな。いくらタカちゃんが変質者っぽくてもさぁ」

 「てめぇいったん表でろ」

 げらげらといつも通りのテンションの晴人に、隆幸は舌打ちした。

 「だけどまさか西条がいるとはな。少々驚いた」

 「御堂さんたちはどこから入ってきたんですか?」

 「玄関口。ロックされてなかったところからすると、用務員室もあの女――保高の管理下にあるのかもな」

 彼も事情を知っている様子であり、後ほど真樹は隆幸から色々な話を聞いた。

 桐葉のゲームに誘われたこと。

 楓が誘拐されこと。

 全ての首謀者が桐葉で、福田先生もおそらく狙われていること。

 「まさか先生が二十八年前の教室の担任だったなんてな」

 一階の自習室。かなり広いフロアなので、桐葉に追われても逃げられる。四つの横十メートルほどある椅子に、主人無き椅子が並んでいる。


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