九十四話
十二月八日。
桐葉の言うゲームまで、約三十分後。
真樹はこっそりと学校に侵入していた。理科室の窓が開いていたため――おそらく桐葉が開けたのだろう――そこから音もなく忍ぶ。独特の薬品臭がする。脇に立てかけられた人体模型は、今にも動き出しそうで視線から離せない。
空には禍々しいブラッドムーンが、真樹を照らし出している。校舎は月光の効果か赤みを帯びており、どこか薄気味悪い。こんな校舎、見たことなかった。
「まだ誰もいないのかな」
多分福田先生ももう少しで来るだろう。
電気はつけない。桐葉はとっくに準備をしているだろう。だからこそ居場所を教えるようなことはしたくなかった。
「何だこれ」
理科室の机には、赤いペンか何かで星印が示されていた。一真が自殺した日にはなかったはず。
「それより、どうしよう。来たのはいいけれど、どうすればいいか考えてなかった」
福田先生を助けるため、衝動的に侵入したのはいいけれど……。
「とりあえず保高さんからばれないようにマークした方がいいよね」
ゲームの企画者である桐葉を監視すれば臨機応変に対処できるはず。少なくとも先生と接触する前に手を打てるかもしれない。映画のような臨場感に、おのずとゲームの主人公のような気分になる。
理科室を出た瞬間、背後に気配を感じた。振り返る。
二人の影があった。




