八十五話
「やっぱ呪いに関係あるのかな」
晴人も覚えているようだった。真樹が消えた日付を。
「だろうな」
空はどんよりとした曇り空。晴人達がよく使う電化製品店に入る。
『え~ということでしょうか、柳沼さん』
『はい。十二月八日は満月で、素晴らしいブラッドムーンを見ることができるでしょう』
『なるほど。明日は快晴ですので、期待で胸が膨れる一方です』
流されるニュース番組に、隆幸はつい見いる。そうか、忘れていた。明日は月食だ。
「月食か。誰かが言ってたな」
さすがに走りつかれたのだろう。次の目的地に行く途中はずっと徒歩だった。
「言ってたって、何が?」
「ブラッドムーンが登る夜は、そう言う者の霊力が強まるって」
「……鮮血の月だからってこと?」
偶然が重なりすぎている。楓の失踪にブラッドムーン。真樹との連絡手段の切断。……何が起ころうとしている。
ブルブルブルブル……。
不意に、電話が鳴った。
晴人が慌ただしくポケットからスマホを取り出した。
「……! 楓からだ!」
「本当か?」
彼は楓の名が表示されたディスプレイを見せる。バイブ音が響き、催促するように震えている。
「ああ!」
晴人が通話をオンにする。
「おい、楓か? 心配したんだぞ、どこにいるんだ?」
安心したような口調の晴人。よほど心配していたのだろう。口元には笑みすら浮かんでいる。……大事にしているのだろうなと思えるほどの、優しい声。
しかし次の一言で、晴人は凍りついた。




