七十八話
晴人から連絡が来たのは、午前零時を回った頃だった。就寝しようとした時、スマホのバイブ音が室内に鳴り響いた。画面を見ると、晴人の名が表示されていた。
「どうしたんだ? 平野。こんな夜更けに」
「あ、タカちゃんか!」
緊迫感溢れる口調。それにバタバタと電話の奥がうるさい。
「お前ん所に楓が行っていないか?」
あいにく楓は来ていない。だけど、大分事情は呑み込めた。
「まさか、桜井が消えたのか?」
「ああ。八時ごろにご飯食べて、部屋に入って、突然コンビニに行くと言い出して、そこから」
「いつからいない?」
「もう三時間以上帰ってきてねーんだよ」
どこ行ったんだよ畜生と舌打ちする晴人は、見るからに焦燥に駆られ、電話の奥の挙動も荒々しい。
「警察には?」
「言ったけどまともに取り合ってくれねーんだよあの無能! 楓も電話にも出てくれねーし。今から探しに行くけど、タカちゃんも見つけたら即刻連絡くれ」
鍵を解錠する、重々しい音がした。おそらく外へ出たのだろう。
「分かった。俺もお前の家の方に行く。気をつけろよ」
「ああ」
ぷつ。電話が切断されるが早いか、隆幸も脱いだワイシャツのボタンを閉じる。
楓……。
あいつは生真面目な性格だし、遠出するならば晴人に告げるだろう。それに三時間もコンビニにかかるはずないし。
十中八九何かがあった。そう考察しても差し支えないだろう。問題はその何かが、呪いに関連しているかどうか。
「嫌な予感がする」
やはり三人で飲んだ日に、楓は何かに気付いていた。それが原因だとしたら……。




