七十七話
時折背後を確認しながら漁っていると、ぐちゃぐちゃに丸められた紙があった。右の端は手で破ったようにぎざぎざになっている。桐葉らしくないしまい方だった。
紙を取り出す。中身は丸められているため読むことができない。端を引っ張って広げようとする。
「あれぇ? 西条さんじゃないですかぁ」
体が縮みあがる思いとはまさにこのことだろう。肩がビクリと痙攣した。とっさにポケットに紙を突っ込み、真樹は振り返る。
ハンカチで手を拭き、まっすぐ真樹を見つめる桐葉がいた。見られたか? 犯罪現場を見られたような感覚。へたくそな愛想笑いが引きつった。
「……保高さん」
とっさの言い訳が出てこず、真樹は押し黙ってしまうと。
「残念ですけど、資料は全部閲覧させてもらいました。昔の事件や岩見さんの住所とか、そういうものしか出てきませんでしたよぉ」
地面の資料をけり上げて強引に道を作る桐葉は、真樹を素通りし、バッグを手に取った。
「じゃ~ね~。よい休日を」
バッグのファスナーを閉め、片付けもせず颯爽と飛び出す桐葉。……気づいていない?
確かにありえる。桐葉を遮るように真樹の体はあった。バッグに手を突っ込んでいるのは見えていなかったはずだ。
桐葉が立ち去った後、真樹は一人資料室に取り残される。桐葉は気づいて引き返してくることはなかった。
無意識に張っていた肩の力が抜けた。深呼吸が震える。自分の運の良さに心底感謝し、真樹も足早に資料室を出た。




