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七十六話

 物陰に隠れながら、真樹は思考をめぐらす。

 福田先生が二十八年前に学校に在籍していたのは知っている。自殺を止めることもできたかもしれないが、いささか責め方が度を過ぎている。福田先生以外にも保護者とか担任とか責任者がいるはずなのに。

 ……それより、ゲームとは一体何だろうか。十二月八日と桐葉は指定した。どういう意図なのかは、真樹に分かるはずもなかった。


 いずれにせよ、桐葉はおかしい。


 コツ。コツ。コツ。

 桐葉の足音がし、真樹は再び息をひそめる。

 資料室を出た桐葉が、トイレに行くのが見えた。

 彼女が立ち去ったのを見、真樹は隠れるのをやめる。

 本能的に、彼女とは接触したくなかった。話を聞く? そんなこと、できるわけがない。彼女が去った今こそ桐葉に悟られることなく帰宅できる絶好のチャンスだ。

 「帰ろう」

 そう思い真樹が足早に玄関へ向かって資料室を通過しようとした時。

 室内にカバンが置かれていることに気付いた。小さな手提げかばんだ。そこから、何枚かの紙が覗いている。

 見れば、資料室の棚の紙はほとんどなかった。地面には白と印刷された文字の山が築かれている。

 あの数の資料を、桐葉は全て調べ上げたのか。下手したら一万も超す資料を、たった一人で……。蛇のような執念深さに、真樹は思わず身震いした。

 桐葉が戻ってきていないのを確認し、真樹はすぐさま桐葉のバックを物色し始めた。

 きっと桐葉は有益な資料を入れているだろう。桐葉には悪いが、数枚の資料を抜き出してさっさと退散するつもりだった。顔は会わせたくなかったから。

 几帳面に納められた資料の束を取り出し、文面を流し読みする。書かれていることは翠のことや十五年前のこと、それに二十八年前のいじめの自殺についても書かれていた。すでに知っている情報ばかりだ。

 初めて資料室に入った時に見つけた、過去転生と言う呪術が記された紙があった。……なんでこんなものを持っているのだろう?

 翠の住所もあった。桐葉はこれを発見し、彼女の家へ向かったのだろう。


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