表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/165

六十五話

 午後二時。

 地獄のカーレースが終わった。

 結局あれからずっと運転の仕方は変わらなかった。方向間違ったと言って車をスピンさせるのは勘弁して欲しい。

 真樹は気分が悪そうで、駐車場の電柱に手を当ててうずくまっていた。寝入っていた晴人はだから言ったっしょ、と真樹の反応を楽しんでる。

 「大丈夫? なんか死にそうだけど」

 「楓~言っただろーが、お前運転荒過ぎなんだよ」

 「私の運転に耐えられないのが悪い~。やっぱり風を感じなきゃ」

 「お前、長生きできねーよ」

 隆幸は新鮮な空気を吸い込む。清涼感あふれる風だ。

 見れば、都会よりも車が通る頻度が少ない。それに町並みもどこか寂れている雰囲気があり、汚れたレンガ造りの家が多かった。

 通行人もお年寄りの方が大多数だ。過疎化が進んでいるのだろう。

 「見ろよあれ! 富士山じゃねーか! 静岡じゃねーのに見えるってすごくね!」

興奮気味に肩に手をかけてくる晴人に促され、指された方向を見る。

しばし、言葉を失った。

遠くには霧に囲まれ、それでも圧倒的な存在感を放つ富士山が見えた。ここからだとかなり小さいものの、頂上には雪が積もっているのが確認できる。その幻想的な光景に、隆幸はしばし言葉を失った。

 「きれいな水色。まるで消えてしまいそう」

 車のキーをポケットに入れた楓も、それに魅入られていた。いつの間にか顔色が良くなった真樹もすぐそばに立ち、きれいと漏らす。映画のワンシーンのような風景は、摩耗しきった隆幸の心を洗ってくれるようで。深呼吸がとてもおいしかった。

 「また来てーな。呪いとか忘れて、純粋にまたここにきて景色眺めてー」

 背伸びをする晴人に、これ以上ないほど同感する。

 冷泉にも、見せてやりたい。隆幸は切実にそう願った。

 「そうね。西条さんも好きな人ときたら? いい思い出になるよ、きっと」

 「うん。……て、何言わせてるんですか!」

 真樹が楓に突っ込みを入れ、しばらく場がなごむ。

 「さて、そろそろ時間だし、ここからは俺が案内するよ」

 晴人が身軽にステップを踏み、隆幸らの前に立つ。気分は壮快とは言い難い。だけど、ほんの少しだけだけれど、なんとかなる気がしてきた。確信はないけれど。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ