表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/165

五十七話

 簡単に朝食をとり、シャワーを浴びた。昨日の汗を流したが、これからのことを考えるとリフレッシュできる気分ではなかった。シャワーのお湯は不安や憂鬱は振り払ってくれない。

 ドライヤーで髪を乾かし、制服を身につけ、真樹は家を出た。


 昨日見たときには気づかなかったが、とても清潔感あふれる病院だった。汚れない白い壁に、板チョコのように並んだ窓。立派な三階建ての病院だった。『風見総合病院』。

 なにしろこんな大きい病院に来たのは初めてのため、緊張しながら入口に入る。保健室のような消毒液の匂いがした。マスクを付けている人が多く、看護師さんたちは忙しそうに走り回っている。ホラゲーのようなおどろおどろしい雰囲気は微塵もなく、とてもアットホームだった。


 看護師さんのおかげで、呆気なく病室にたどりついた。二階の廊下の真ん中ほどの場所にある、四人用の病室。案内してくれた看護師が去ってからも、真樹はずっと病室の前で立ち尽くしていた。扉の前には四人の名前のプレートがあった。そのひとつには一真の名前がある。

 いざ入ろうとしても、真樹はそこから一歩も動けずにいた。覚悟なんてなかった。

 もし拒絶されたら。

 もし嫌われたら。

 もし嫌悪されたら。

 もしもは実体をもち、真樹の行動を鈍らせる。一真を訪ねた日のことがリフレインして、両足に力が入らないのだ。もし嫌われたら、真樹は自分を保っていられない気がした。

 「ほんと、ダメだな、私」

 自嘲しかこぼれない。もともと自分がまいた種だというのに。引き返す? いや、引き返したら一生逃げてしまいそうな気がする。逃げてはいけない。一真からは、絶対に。向き合わなきゃ。

 コクリと唾をのみ、大きく深呼吸する。いつの間にか掌は汗ばんでいて、ぬるぬるした。

 ガチャリ。

 ドアノブに触れた途端、扉が開いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ