五十二話
レストランは混んでいた。会社員や家族連れ、学生など昼とは違い、様々な人が見受けられた。
「今からする話を考えりゃ、結構いい場所だよな。ほんと」
晴人は楽しそうな雰囲気を作っている。福田先生は目じりに皺を作り、そうだな、と言った。
ウエイトレスに席を案内され、隆幸ら三人は端側の席に腰を下ろした。真上にある花柄の照明器具が煌びやかな光を発し、客を照らし出している。アットホームだ。とても怪談話とは無縁な感じだ。
先生は何本かの生ビールを注文していた。気を大きくしたいのだろうか。晴人もいつもの数倍ほど声を張り上げて楽しそうに振舞っているが、隆幸は全く盛り上がれなかった。
「で、何が聞きたいんだ? お前ら」
三杯目のビールを飲んだのを皮切りに、先生は重々しく口を開いた。目もどこか焦点があっていない。パッチテストで先生がアルコール分解酵素を持っていない結果が出たのを思い出したのは、それから間もなくだ。
「二年一組――一年四組だな、そこの呪いについての話だと晴人君から窺っているが」
「はい。そうです。……実は」
隆幸は端的に隆幸と楓の二人が悪夢に悩まされていることを語った。
「まさかな。冷泉が消えたあれが、また始まったなんてな」
先生は深いため息をついた。
「……で、うちの生徒――西条に会ったんだね」
「ええ。鉄骨が落ちてきたところを助けたんです」
同時に、後ろに影のような女が立っていたことも伝えた。すると先生はう~んと曖昧な唸り声をあげた。
「それは……異常だね。冷泉が消えた時はそんなことはなかったはず。あれ一回だった」
「だけど、以前に石見翠と言う生徒も怪異にあっていますよね。結局彼女は学校で飛び降り自殺をした」
「よく調べた物だ」
福田先生は唸り、運ばれてきたビールに口を付けた。




