四十九話
昼とは違う、不気味な顔を覗かせる登校道を走り抜ける。息が切れ、足ががくがくする。肺も痛くなってくる。それでも走り続ける。走らなければならなかった。
体を切るような風が冷たい。鼻の奥が冷えて痛んだ。
一真。一真。一真一真一真かずまかずまかずまかずまかずま!
私のせいだ。私が巻き込んだ!
涙が出た。後悔か、恐怖か。いずれにせよ振り切って神経を両足だけに集中させる。
通行人が不審げな眼差しを向けるのも気にせず、部屋着のまま道を急ぐ。校舎が見える。人だかりができていた。心拍数が一層跳ね上がる。
いつもは閉まっているはずの校門が開いていて、何人かの警官が野次馬を監視していた。救急車はなかった。校門には『keep out』と書かれたビニルが巻かれ封鎖されている。
周囲の野次馬を強引に押しのける。真樹はビニルを通り抜け、校庭に侵入すると、五メートルも進まないうちに、若い警官が話しかけてきた。
「君! 関係者が立ち入ったらダメでしょう」
「一真は……一真は無事なんですか!」
単刀直入に真樹は詰め寄っていた。警官は困った表情をしつつも、やや間をおいて頷いた。やっぱり飛び降りたのは一真だったんだ。その頷きこそ、認めたくない肯定だった。
四階建ての校舎を見上げる。四階の中央に一つ、窓が割れている教室があった。無残に割られた窓ガラスは、漫画のギザギザな吹き出しのような形状になっている。
一真が割ったんだ。そう確信した。窓ガラスを割り、身を乗り出す一真の姿が脳裏をよぎる。
危うく声を上げそうになった。割れた窓ガラスがある教室。記憶が正しければ、そこは一年四組の教室だったから。あの夜に見た霊の姿がちかちかとちらつく。




