四十八話
目を覚ますと、空は真っ暗だった。吐き気がしそうな倦怠感。夢であってほしかったけれど、やはり現実らしい。一真の言動一つ一つが映像を見ているように蘇る。
自責の念が胸を締め上げ、布団の中で唸ってしまう。
すでに母は帰宅しているらしい。台所から音がする。手伝う気力も湧かず、真樹はそのままベッドにくるまる。汗ばんだ服が気持ち悪い。
「姉ちゃん! 姉ちゃん!」
下から弟が叫んできたが、今日は返事する気力もわかなかった。そのまま黙殺する。
「姉ちゃん、大変だよ!」
うるさいっていってんだろ。柄にもなくいらっときた。
「何……修哉」
「一真先輩が、校舎で飛び降りたって!」
「え!」
部屋を飛び出し、ドタドタと階段を下り、リビングに入ると、ちょうど母が受話器を置いたところだった。顔色がとても悪かった。
「一真君、学校で飛び降りたって、さっき校長先生から」
「学校で?」
なぜだ? 彼は今日休んでいたはず……!
「一真のお母さんも混乱して手……よくわからないけど重症みたいよ」
母は一真のことを好意的に見ている。だからこそ真樹と同様取り乱している様子だった。
「なんで?」
「わからない。真樹、一真君が自殺する理由、何か思い当たる?」
「理由……」
そんなの、一つしか出てこない。自分の目が大きく見開かれ、瞳が動く。貧血のような症状とともに、視界がゆがむ。
呪い、なの?
午後に見た、追い詰められ、慄いていた一真の挙動がリフレイン。
気づけば外へ飛び出していた。両足だけが意思に反して走り続ける。弟がおい! と怒鳴っていた。




