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三十四話

 「……! 西条さんのダチに眼鏡をかけた少年、いるか?」

 晴人と別れた日にぶつかってきた男子生徒の生徒手帳に、石見翠の名前があった。

 「うん。私も彼から岩見さんの話を聞いて」

 「そうか」

 あの焦っていた様子――あれから少年は大丈夫だっただろうか。疑問を浮かべた真樹に、数日前のことを簡潔に話した。

 「そうなんだ……塾の帰りだったんだ。電車に乗り遅れそうになったのかも」

 真樹が苦笑した。何だ、深掘りする必要なかったのか。

 「いずれにせよ福田先生は味方のはずだ。絶対に」

 「そう、なんですか」

 一応頷いているものの、浮かぶのは先生に対する不信感。素直なのも冷泉と似てる。いつの間にかそう考える自分にいら立った。彼女は、彼女だ。

 「それに、もう一つ謎があるんです」

 真樹は小さく唸り、瞼を伏せた。

 「ヨコセ」

 「ヨコセ?」

 真樹の言葉を反復する。

 「うん。あの夜、確かにそう言っていたの」

 ヨコセ……。隆幸には思い当たる節がなかった。


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