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三十三話

 隆幸は驚いていた。というのも、その少女は学校に行った際挨拶をしてきた少女だったから。あんな明快活発な少女が呪いに触れていたなんて。

 それに、真樹という名前。偶然なのはわかっているはずなのに、どうしても意識してしまう自分がいた。

 先ほどとっさに体が動いていたとはいえ、助けに入ったのは正解だった。

 彼女に気づかれないように眉をひそめる。

 あの時。クレーン車から鉄骨が降る直前。真樹がぼんやりと工事現場を見ている背後に。

 黒い何かがいた。真冬に冷水を当てられたような感覚。真樹は一切気づいていなかった。

 そいつがにぃ、と笑った――見えなかったけれど、確かに笑った気がした――時、クレーン車の糸がブチリと切断された。

 気づいた時には真樹を救うために走り、結果助けられた。身につけた制服と言い、あの呪いに関連しているのではないかと踏んで、隆幸は真樹に接近した。

 それは見事にビンゴとなり、隆幸は真樹が調べた話を聞いている。

 「十五年前行方不明になった人というのは、冷泉さんという人だったんですね」

 「ああ。まさかあいつが怪異を引き起こしてるという話になってるとはな……」

 なぜ噂が変化したのかは分からないが、それは撤回してほしい。あいつがそんなことするはずがない。

 「御堂さんの時の噂はどんな感じだったんですか?」

 「別に。夜に二年一組に訪れると幽霊が出るとか、そんなやつ」

 冷泉真樹も確かそう言っていた。

 「その時俺らを受け持ってくれたのが福田先生だったんだ。だから先生には感謝してる」

 「だけど、先生には何かがある気がするんです。資料室や噂に関わってると噂されている所や、あの保高さんが未だに勘ぐってる所とか」

 保高桐葉。気になったのは真樹の友人のことだ。聞く限り、桐葉も何らかの目的を持って行動してる。おまけに下校時刻を過ぎても調べているまでの執着。

 「保高さんはどんな奴なんだ」

 「クラスの学級委員ということしか分からない」

 真樹は小さく肩をすくめた。

 「それと、岩見翠という女子生徒が飛び降り自殺を図ってる。現在は他県で療養中のことです」

 石見翠? ……どこかで見た名前だ。


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