二十八話
「気をつけて帰れよ?」
「うん。いつもありがとね、一真」
「別に。本来なら家まで送ってあげたいけれど……」
そこまで迷惑はかけたくないと真樹が断固拒否したため、一真はひたすら不安がっていたが、結局受け入れてくれた。
最近、真樹は悪夢を何度も見るようになっていた。それは、決まって一年四組に立っていて、扉は開かない。開けようと必死になっていると、背後に気配を覚え――。
その後は記憶にない。起きると決まって寝着は汗でぬれ、心臓は早鐘を打っているのだ。そのせいで真樹の睡眠時間は削られ、慢性的な寝不足に陥っていた。
「どうすればいいんだろ……私」
最初は何とかなると思ってた。だけど、雲行きは怪しくなる一方。
憂鬱な気持ちのまま、真樹は工事現場の横を通る。近所の家が取り壊され、新しい建物が建つそうだ。鉄骨が運ばれ、クレーン車の駆動音が響く。鉄骨の家ができていた。
「この前は鉄材が置かれてるだけだったのに……」
立ちかけの家の前に立ち止まり、そうつぶやいた時。
突然地面に影がかかった。
ん? 真樹は見上げ――絶句する。
数本の鉄骨が風を切る音ともに、まっすぐ真樹めがけて落ちてきていた。大きく拡大される灰色の鉄骨が、視界からクレーン車を遮った。
糸が切れたのだ。立った一秒にも満たない間に、真樹はそう理解した。
同時に、このままだと自分が圧死することも。




